清水昶『開花宣言』/私撰アンソロジー(42)
気象庁は3月21日、東京・靖国神社にある桜標本木を観察し、東京都心のソメイヨシノの開花を宣言した。
平年より5日早く、昨年より2日早い観測という。
関東で最初に開花である。
清水昶の<デジタル版 日本人名大辞典+Plus>の解説は以下にようである。
1940-2011 昭和後期-平成時代の詩人。
昭和15年11月3日生まれ。清水哲男の弟。同志社大在学中「現代詩手帖」に投稿,昭和39年「暗視の中を疾走する朝」を発表,40年正津勉(しょうづ-べん)と詩誌「首」を創刊。41年現代詩手帖賞。「長いのど」「少年」などに時代の意識をうたう。「詩の根拠」などの評論集でも知られた。平成23年5月30日死去。70歳。東京出身。
私より少し早い生まれだが、ほぼ同時期の空気を吸っていた人である。
村上一郎は、吉本隆明、谷川雁とともに雑誌『試行』の創刊メンバーであった。
私は学生時代、学校の近くの古書店で二束三文で購入した春秋社の「現代の発見」シリーズの第3巻に収載されていた『日本軍隊論序説』でこの人の名前を知った。
日本浪漫派に通ずるパセティックな文章だった記憶がある。
村上一郎が、武蔵野市の自宅で日本刀により頸動脈を切り自刃したのは、1975年3月29日であった。
つまりこの年の開花宣言は、平年よりやや遅かった。
全共闘運動の活動家だったという清水昶は、村上一郎の感情過多のような生き方(死に方)にシンパシーを抱いていたと思われる。
絢爛と咲き誇って、すぐに散ってしまうというはかなさが大和魂と共通すると思われてきた歴史がある。
敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花
そして、それが死のイメージを呼び起こす。
死者が埋められた場所の桜は成長が早いともいう。
21日の日の夕方、房総へのバスツアーの一員として、暗くなる頃、アクアラインを通って東京駅に帰着した。
開花宣言を記念して、東京タワーがピンク一色のダイヤモンドヴェールのイルミネーションで彩られるのに遭遇した。
一夜限りというイベントであるところが桜らしいと言えようか。
一夜限定!東京タワーがピンクダイヤモンドに染まる
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