原発の安全性の必要条件と十分条件/アベノポリシーの危うさ(12)
九州電力は、再稼働した川内原発1、2号機(鹿児島県)で事故時の前線基地となる「緊急時対策所」について、安全審査の際に約束していた免震構造での新設計画を撤回した。
九電は、既存の耐震施設などで対応することを決め、原子力規制委員会に昨年末、変更を申請した。
九電は、免震構造の原子力施設を国の許認可を経て建設した経験がない。規制委には「実績が豊富な耐震構造の施設なら、早期の運用開始が可能で、安全性向上につながる」と説明している。しかし、いつ運用開始できるかなどは示していない。
規制委は変更に不快感を示した上で、「主張は根拠に欠ける」として九電に申請の再提出を求めている。
川内原発1号機は昨年8月、新規制基準に合格した原発として初めて再稼働した。2号機も同10月に再稼働している。九電は規制委の安全審査で、今年度中をめどに免震構造の免震重要棟を建て、その中に緊急時対策所(面積約620平方メートル)を設置すると約束した。完成までは耐震の代替対策所(同約170平方メートル)を暫定的に使うこととしていた。
原発の免震棟 九電の姿勢は信義違反
機制委の審査に合格することは、再稼働の必要条件ではあるが、十分条件ではない。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は、かねてより審査について「稼働に必要な条件を満たしているかどうかを審査したのであって、イコール事故ゼロではない」と述べている。
⇒2014年12月18日 (木):原発は審査基準に適合すればOKか?/原発事故の真相(122)
⇒2015年8月14日 (金):原発再稼働とメディアの姿勢/原発事故の真相(133)
ところが、川内原発に倣って各社が免震棟の機能縮小を考えているという。
コスト増を抑えるためである。
当初計画通りに整備が終わったのは、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)や中国電力島根原発(島根県)だけ。北陸電力志賀(しか)原発(石川県)では、免震棟は造ったが、指揮所の放射線防護性能が足りないため、耐震構造の指揮所を免震棟に新たに併設するという。免震棟は、余震が続いても、揺れを数分の一に緩和できるかわりに、設計が複雑でコストがかかり、工期も長くなる。
川内原発の審査で、規制委は免震棟完成までの代替施設として、免震機能のない小規模な施設でも新基準に適合するとの判断をした。これを受け、電力各社はコストを抑え、早く審査をパスする状況をつくりたいと、計画変更に動いた。本紙の取材に、複数の電力会社が川内事例を参考にしたと認めている。
川内原発の免震棟撤回問題をめぐっては、規制委が今月三日、九電の瓜生道明社長に「納得できない」と再検討を求めている。
申請の11原発、免震機能省く 事故対策拠点 川内審査受け縮小
原発再稼働には、審査基準のみならず廃棄物処理問題もある。
最低限の必要条件も無視するならば、電力会社や安倍政権は論理のイロハも理解していないことになる。
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