実質賃金はどうなっているのか?/アベノポリシーの危うさ(25)
日本のGDPの約6割は民間消費である。
したがって、景気は個人の消費動向に左右される。
政府はアベノミクスでデフレ脱出しつつあると説明しているが、その実感はない。
安倍晋三首相は昨年9月24日の記者会見、「新3本の矢」を発表した。
⇒2015年10月20日 (火):「新3本の矢」の意図するもの/アベノミクスの危うさ(56)
消費動向にとって、家計を支える実質賃金は重要なファクターである。
厚生労働省が2月8日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、物価の影響を考慮した2015年の実質賃金は、前年比0.9%減であった。
4年連続のマイナスということになる。
働く人1人当たりの現金給与総額(名目賃金)は月平均31万3856円で0.1%増であったが、物価の上昇が先行して、賃金増が追いついていない。
正規を中心とした労働者の現金給与総額が四十万八千四百十六円だったのに対し、パート労働者は九万七千八百十八円にとどまり、賃金格差は大きい。しかも労働者全体に占めるパート労働者の比率は年々上昇しており、一五年は前年比0・64ポイント増の30・46%と過去最高に達した。企業側が人件費の高い正社員の雇用を敬遠し、低賃金のパートを含む非正規社員を増やした結果、賃金全体の伸び率が春闘の結果より大幅に少なくなった。
またボーナスを中心とする「特別に支払われた給与」も五万四千五百五十八円と前年比で0・8%減と三年ぶりに減少に転じ、現金給与総額が伸び悩む原因となった。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「海外からの配当増加や原油安によって企業収益は大幅に改善した。それでも賃上げが限定的で、企業が内部留保としてため込んでいるのは、好況が続くか企業側が慎重な見方をしているからだろう」と指摘する。
実質賃金4年連続で減 物価上昇に追いつかず 非正規増も原因
安倍首相は、妻がパートに働きに出れば平均賃金は下がると説明した。
その説明は形式論としては正しいが、実態を知らないようである。
私の給料が50万円、妻の給料が25万円とすれば、妻が働いたことによって平均値は下がると説明したのだ。
パートで働きに出た妻の給料が25万円??
さすがに、説明のための数値だとか言って取り繕っていたが、パートで25万円稼いでくれれば多くの人は文句を言わないだろう。
妻のパート労働の多くは、生活を支えるためであることは、私の周辺を見れば明らかである。
既に総務省が昨年11月17日に発表した10月の家計調査で、2人以上世帯の実質消費は対前年比-2.4%であり、10月の勤労者世帯の実収入は、1世帯当たり48万5330円で、実質前年比-0.9%であった。
当時、甘利明経済財政再生相は、閣議後の記者会見で、「ここが正念場になっているのだと思う」と話し、失業率などの指標が改善している中での減少に「良い状況が整いながら、いまひとつ将来に対する消費者の自信が持てないところ」との見方を示した。
「ここが正念場」などというカン違いの根性論をぶち、安倍首相が経営者に、「今が投資のチャンスだ」と説いても、そう簡単にはマインドは変わらない。
いま、安倍首相の口車に乗って投資などしなくて良かったと思っている経営者もいることだろう。
安倍首相は、口先では「消費者に安心感を」などと言っているが、実際にやっていることは、労働者派遣法改正、外国人労働者受け入れ拡大等、雇用を不安定化させ、生産者の実質賃金を引き下げる政策ばかりである。
実質消費を高めるには、実質賃金を拡大する必要がある。
「安心感」や「自信」などといった抽象的なことではなく、唯物的な問題なのである。
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