三角縁神獣鏡論争の新展開/やまとの謎(112)
1月30日付の日本経済新聞文化面に、『「卑弥呼の鏡」深化する論争』という記事が載っていた。
同鏡については、「国産か中国産か」ということで論争が続いている。
中国産であれば、「魏志倭人伝」の「魏帝が卑弥呼に鏡100枚を下賜した」という記述の信憑性が高くなる。
しかし、日本では既に多数(500枚以上といわれるが、正確な総数は不明)が出土しているにもかかわらず、肝心の中国からは1枚も出土していないと言われていた。
私は、「卑弥呼の鏡ではない」という立場を支持していた。
ところが昨年の3月に、「中国河南省の洛陽市で見つかったとする論文が、地元の研究誌に掲載された」というニュースが朝日新聞に掲載された。
論文を書いたのは河南省在住のコレクターで研究者でもある王趁意さん。王さんは鏡について「2009年ごろ、当時、洛陽最大の骨董(こっとう)市で、市郊外の白馬寺付近の農民から譲り受けた」と説明する。正確な出土地点はわからないという。
鏡は直径18・3センチ。厚さ0・5センチ。三角縁神獣鏡としてはやや小ぶりで、内側に西王母(せいおうぼ)と東王父(とうおうふ)という神仙や霊獣、外側にノコギリの刃のような鋸歯文(きょしもん)と二重の波状の模様を巡らせる。
邪馬台国論争に新材料 卑弥呼の鏡?「中国で発見」論文
骨董市で譲渡された出土地が明らかでないものでは史料的価値には疑問があると言わざるを得ない。
ところが大阪府教育委員会副主査の西川寿勝氏が加工痕をもとに「日本のものと同じ工人集団が作ったもの」と結論づけた。
経緯は西川氏の発表資料に以下のようにまとめられている。
日本書紀研究会12月例会報告/洛陽で発見された三角縁神獣鏡
西川氏の言うように、加工痕が日本のものと差がないとすれば、中国で新発見の鏡も日本製であるか、日本で出土している鏡も中国産か、という両様の可能性が出てくる。
常識的に考えれば、日本で出土した鏡が、何らかの経路で中国の骨董市で売り出されたと考えるべきだろうが。
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