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2016年1月

2016年1月31日 (日)

GPIFの損失はいくらになるのか?/アベノポリシーの危うさ(7)

甘利明大臣の辞職は当然であろうが、辞職で幕が下りたわけではない。
テレビの記者会見では、「私の美学に反する」などと大見得を切っていたが、茶番である。
「三河屋、おぬしも悪よのう」
「甘利様こそ…」

そんな閣僚が担当しているのでは、景気も上向かない。

経済産業省が29日発表した2015年12月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整値)速報値は前月比1.4%低下の96.5。中国・台湾向けスマートフォン(スマホ)部品の製造装置や電子部品の生産が落ち込んだ。12月の実質消費支出も前年同月比4.4%減った。
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景気足踏み長期化 12月鉱工業生産、1.4%低下/消費支出も4.4%減

巨額の公共的資金が投入されている株式市場は、日銀がマイナス金利というトリッキーな手法を発表したこともあって、29日は激しく乱高下した。
まさに賭場と化しつつある。
29日の日経平均の動きは以下のようであった。
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後場の半日だけで800円位(約5%)も変動した。
年金の原資であるGPIFのポートフォリオは大まかに国債35%、国内株25%、外債15%、海外株25%で構成されている。

 埼玉学園大教授の相沢幸悦氏(金融政策)はこう言う。
「約7.9兆円のマイナスを出した昨年7~9月期よりも損失は大きくなっていると試算しています。昨年末の大納会からの下げ幅が2000円に広がった時点で含み損は10兆円に達した可能性が高い。円高は3月期決算の企業にとっては痛手ですし、この先、株価の上昇要因は見当たりません。下値不安が取り除かれなければ、3月に向けて1万4000円割れも現実味を帯びてきます。そうなればGPIFは30兆、40兆円の損失を抱え込むことになる。今週末と3月中旬に日銀は金融政策決定会合を行いますが、マーケットが期待する“黒田バズーカ3”が放たれたところで、効果は限定的でしょう」
 このままでは最後まで市場に残っているのはGPIFと日銀、それに物好きの個人投資家だけなんてことになりかねない。
含み損10兆円突破か GPIF「年金消失40兆円」の現実味

ハゲタカの餌食にならないことを祈るだけである。

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2016年1月30日 (土)

日銀のマイナス金利政策/アベノポリシーの危うさ(6)

日銀がマイナス金利に踏み切った。
マイナス金利は金融機関が日銀に預ける当座預金に付く金利を現行の0.1%から引き下げてマイナスにするというもので、2月16日以降の新規預け入れ分に適用する。

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 日銀の発表直後、日経平均株価は前日終値比で600円近く急騰。相場押し上げ効果を疑問視する見方から300円近く下落する場面もあったが、終値は前日比476円85銭高の1万7518円30銭だった。外国為替市場の円相場は、発表直後に1ドル=121円台と約1カ月ぶりの円安・ドル高水準をつけ、債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時0.090%と、初めて0.1%を割り込んだ。
 また、日銀はこの日まとめた「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、16年度の物価上昇率の見通しを昨年10月時点の1.4%から0.8%に下方修正。物価上昇率2%の目標の達成時期の見通しを「16年度後半ごろ」から「17年度前半ごろ」に先送りした。
「黒田総裁」金融政策、新局面に マイナス金利導入

まあ、日銀の本気度を示したということであろうが、いかにもトリッキーなように思える。
株価と円安には寄与するであろうが、国民経済の厚生に向上に貢献するかどうか疑問である。
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日銀、苦肉の「奇策」 マイナス金利導入

決定会合では賛成5人、反対4人と意見が割れた。
正副総裁を除けば反対が賛成の倍である。
アベノミクスの効果が思ったように出ていないということであろうが、効果のほどが不明な政策を実施するのであり、予期し得ない副作用もあろう。
臨床試験の済んでいない新薬を投下するようなものではないか。

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2016年1月29日 (金)

天皇陛下のお言葉と集団的自衛権/アベノポリシーの危うさ(5)

天皇・皇后両陛下が友好と慰霊のためフィリピンを訪問されている。
天皇陛下は、日本軍将兵の慰霊が目的だったのか?
そう解釈したがる向きもあるようだが、そうではあるまい。

天皇陛下は出発前や公式晩餐会の席上で、「日米が戦った市街戦で、膨大な数の無辜のフィリピン市民が犠牲になったことを、日本人は忘れてはならない」というお言葉を繰り返された。
よその国同士の戦争で犠牲になるのは不条理というしかない。

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 天皇陛下が出発前のお言葉でマニラ市街戦に言及されたことについて、京都大東南アジア研究所の清水展(ひろむ)教授(文化人類学・フィリピン研究)は「マニラ市街戦はフィリピン人に多くの犠牲を出した加害の象徴だが、日本国内ではあまり知られていない事実だ。加害の過去を知ってほしいという日本人に向けたメッセージではないか」と受け止める。
 「フィリピンでは戦争被害を『許すが忘れない』がキーワード」と話す清水教授は、二十七日に開く大統領主催の晩さん会で陛下のお言葉に注目したいという。「フィリピンへのメッセージになり、マニラ市街戦を含む全ての戦没者への哀悼のお気持ちを示されたなら、過去にわだかまりを持つ現地の人の気持ちも和らぐだろう」と期待した。
「犠牲者、心に」慰霊の旅 フィリピン両陛下訪問

昨年、安倍政権は、積極的平和主義を標榜して、集団的自衛権の行使を軸とする安保法を成立させた。
集団的自衛権とは、同盟的関係にある他国を防衛することであるから、戦場は他国となる可能性が高い。
私は他国を戦場とすることに反対する。

安倍政権の姿勢は、天皇陛下のお言葉と真っ向から対立するものである。
ウヨク諸兄は、それを是とするのであろうか?

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2016年1月28日 (木)

分ける思考(2)類人猿分類/知的生産の方法(142)

組織活性化の方法論として「類人猿分類」というものがある。
広島県福山市に本社を置く「食」の総合プロデュース企業グループのエブリイグループで大きな成果を上げている方法論である。
類人猿分類公式マニュアル2.0』夜間飛行(2015年9月)という著書に纏められている。
著者のTeam GATHER Projectは、大型類人猿をヒントに発案した類人猿分類(GATHER)を推奨するグループで、GATHERとは、Grate Apes Teach Human Eternal Relationships(類人猿が人間関係を教えてくれる)の頭文字を取ったものである。

詳しい方法の説明は同書に譲るが、人間を「感情を、表に出すか、出さないか」「人生において大切にしていることは、追求・達成か、保守・安定か」という2つの軸によって区分する。
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このA、B、C、Dのラベルとして、類人猿を割り当てる。
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実際の類人猿がこういう性格かどうか分からないが、類人猿のラベルを貼ることにより、記憶として定着しやすい。
この手法のキモは、いくらでも細分できる対象を2軸によって4つの象限に分けることである。
事業戦略の必須ツールといわれるSWOT分析と同じである。

今年が申年であるためであろうが、2015年12月27日の東京新聞に、ニホンザルの特集があった。
分類は動いているが、現時点での生物学的位置づけは下図のようになっている。
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2016年1月27日 (水)

甘利明と野々村竜太郎/「同じ」と「違う」(92)

号泣記者会見で時の人となった野々村竜太郎元県議の初公判が開かれた。
野々村氏は2014年、宣伝会議が発行する広報専門誌「広報会議」のネットユーザーが選ぶ今年の「印象に残った不祥事ランキング」(調査対象は20~80代の男女500人)で2位にランクされた。
⇒2014年12月31日 (水):今年を振り返る/日本の針路(93)

私も号泣する姿をテレビで視聴して、「何でこんな人が県議に?」と不審に思った記憶がある。

元々2015年11月24日に初公判が予定されていましたが、野々村竜太郎被告が「精神的に出廷できる状況にない」「マスコミと鉢合わせしてパニックになった」などという理由で裁判を欠席し延期。
これに対して神戸地裁は、強制的に裁判所へ出廷させる「勾引手続き」に踏み切り、本日1月26日午前、無事初公判が開かれました。
野々村竜太郎被告はスキンヘッドになっており、公判では「政活費の交付は受けたが、虚偽の記載はしていない」と号泣することなく冷静に否認したということです。
野々村竜太郎被告が公の場で発言するのは世界中が注目した号泣会見から約1年半ぶりということもあり、現場の神戸地裁には報道陣が殺到。
裁判が開かれる直前の午前9時前後にかけて、現場は野々村竜太郎被告の姿を写そうとする報道陣らで一時騒然としました。
野々村竜太郎被告、神戸地裁で初公判-スキンヘッドで小太り 号泣県議

野々村氏が問われているのは、詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の罪である。
このお粗末な地方議会議員と現職の重要閣僚を対比するのは失礼だとは思うが、野々村氏の初公判のニュースで、甘利大臣のことを連想した。
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東京新聞1月23日

甘利氏は、疑惑が報じられているだけで、起訴されているわけではない。
しかし報じられている内容からして、「あっせん利得処罰法」が適用されるのか否かという事案である。

「あっせん利得処罰法」は、国会議員等の政治家が、行政機関等に「口利き」をして金品を受け取る行為を処罰する法律だ。政治家が「口利き」をし、その見返りとして「報酬」を受け取るという行為は、政治家と行政との腐敗の象徴としてかねてから批判されてきたが、2000年に中尾元建設大臣が、公共工事発注の口利きの見返りに建設会社から賄賂を受領して受託収賄事件で逮捕されたのを契機に、改めて国民から批判が高まったことを受け、2002年に法律が制定された。その後も、「政治とカネ」をめぐる問題が表面化する度に、国民の政治不信が高まり、政治家のモラルが問われ、政治資金の透明化のため政治資金規正法の強化・改正も行われてきた。このような流れの中、2003年に施行された「あっせん利得処罰法」が実際に適用されて摘発された事例としては、市町村議会議員が公共工事の発注に関して「口利き」をして利益供与を受けた事件が数件ある程度で、国会議員や秘書が関わる事件が摘発された例はない。
甘利大臣、「絵に描いたようなあっせん利得」をどう説明するのか

自民党の高村副総裁は、「罠に掛けられた」と弁護しているようである。
⇒2016年1月26日 (火):甘利大臣は罠に掛かったのか?/アベノポリシーの危うさ(4)
しかし、「罠に掛けられた」かどうかというような問題か?
情報をもたらした人物については分からないが、甘利氏とは親密な関係であったことは間違いないようである。
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週刊文春1月28日号

国会の審議が停滞したとすれば、甘利氏を追及する野党の責任ではない。
自民党総裁選で安倍首相の選対本部長を務めた盟友中の盟友である。
安倍首相も他人事で済ますわけにはいかない。

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2016年1月26日 (火)

甘利大臣は罠に掛かったのか?/アベノポリシーの危うさ(4)

甘利明経済再生担当相の金銭授受疑惑についてさまざまな観測が飛び交っている。
⇒2016年1月22日 (金):甘利明大臣に重大疑惑/アベノポリシーの危うさ(2)

テレビで甘利氏の発言を視聴していると何とも歯切れが悪い。
「週刊文春」の記事が不当なものであれば、激怒するのが普通であろうから、心証としては「やっぱり」ということにならざるを得ない。

自民党の高村正彦副総裁は、甘利氏が「わなにはめられた」として、あたかも被害者であるかのように言っている。

 政権サイドは、業者側が甘利氏との会話を無断で録音して「証拠」と主張していることに着目。政府関係者は「相手は相当悪質だ」と批判した。高村氏は23日の民放番組で、「まさにわなにはめられた。攻撃側が用意周到にストーリーをつくっている」との見方を示した。
 甘利氏も25日夜の記者会見で、業者側について「最初から隠し録音をし、写真を撮ることを目的とした人たちだから、こちらは慎重にやっている」と述べ、不信感をあらわにした。
「はめられた」与党に同情論=野党は攻勢強める-甘利氏疑惑

ワナに嵌められた?
甘利氏とい言えば、TPPやマイナンバーカードの担当大臣である。
TPPでは、コメなどの農産物の関税に関して「アメリカ側を何度も怒鳴りつけた」と、自らタフ・ネゴシエーターぶりをPRしていたのではなかったか?
地方の土建業者のワナに掛かるようでは、どんな交渉だったのか、心配になってくる。

TPPに関しては、政府の発表の信憑性が問われている。
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日刊ゲンダイ1月26日号

この際、速やかに事実関係をオープンにすべきだろう。

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2016年1月25日 (月)

SMAP解散騒動/ブランド・企業論(48)

私は芸能ニュースには疎いが、ここのところのSMAPをめぐる騒動は自然と目に入ってくる。
日経新聞のコラム「春秋」でも取り上げていた。
SMAPは今年デビュー25周年を迎えるという。
騒動の始まりは、1月13日付のスポーツ紙の報道だった。
SMAP育ての親と言われる飯島三智氏がジャニーズ事務所を退社するのに伴い、木村拓哉以外の4人が飯島氏と行動を共にするということだった。
つまり分裂である。

ジャニーズ事務所には、飯島氏と嵐、TOKIO、関ジャニなどを担当する藤島ジュリー景子氏の間に角逐があったらしい。
藤島ジュリー景子氏は、ジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川氏の姪で、母はジャニーズ事務所副社長のメリー喜多川氏、父は作家の藤島泰輔氏だという。
まあ、どこの組織にも派閥はあるだろうが、飯島氏と経営陣の対立の板挟みになった5人が、独立か残留かを選ばざるを得なくなった。
それで木村VS4人で意見が分かれたらしい。

結果的には、18日放送のフジテレビ系「SMAP×SMAP」 でグループ存続を宣言するという形で幕引きとなった。
この放映も論議を呼んでいるらしい。
4人が謝罪するという形だったのだが、公開のパワハラではないか、という見方がある。
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事情は知らないが、次のツイッターの見方が真相を突いているように思える。

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25年経っても足抜けはできないということだろう。
「自律・分散・協調」には遠い世界であるようだ。
維持できたのはSMAPなのかジャニーズ事務所の威信なのか?
それはともかくとして、芸能ネタでテレビが大騒ぎしているのは、何か国民に知られたくないことを隠す目的があるのではないか、という見方もあるようだ。

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2016年1月24日 (日)

琴奨菊の優勝で国技は復興するか?

大相撲初場所で東大関琴奨菊が初優勝した。
日本出身力士として2006年初場所の栃東(現玉ノ井親方)以来、10年ぶりの優勝である。
10年間、外国人出身の力士が優勝してきたわけで、国技というのが憚れると言えよう。
グローバル化と言えばそれまでであるが、やはり日本人力士が優勝から遠ざかっているのは寂しい。

 この10年間はモンゴル出身の朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜やブルガリア出身の琴欧洲ら外国勢が優勝を占めてきた。日本国籍を取得したモンゴルの旭天鵬が12年夏場所で優勝しているが、日本出身の力士がようやく壁を打ち破った。
 大関在位26場所目となる今場所は前に出る相撲で白星を重ね、10日目から鶴竜、白鵬、日馬富士の3横綱を破った。
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相撲、琴奨菊が初優勝

正直に言って、多くの人にとって、想定外の事態であろう。
しかし3横綱を連破しての優勝であるから、文句はない。
得意のがぶり寄りが迫力があった。

大関に在位していたのだから、地力はあったはずである。
大関昇進は、2011年11月場所だから長い。
先代の親方琴櫻傑將は、横綱昇進時の年齢(32歳2ヶ月)が「2場所連続優勝を原則とする」の規定が定められた年6場所制における最高齢で、「遅咲きの桜、ようやく満開」「姥桜の狂い咲き」などと呼ばれた。
師匠に倣い、琴奨菊のこれからの活躍に期待したい。
今場所の1敗は、子供時代からのライバルという豊ノ島相手だった。
これを機会に、日本人出身力士が覚醒して活躍するようになれば、大相撲人気も確かなものになるだろう。

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2016年1月23日 (土)

立憲政治に立ち返れ/アベノポリシーの危うさ(3)

昨年の痛恨時は、集団的自衛権の行使を軸とする安保法の成立であった。
その過程で、立憲主義の政治がないがしろにされてしまった。
立憲主義の崩壊という状態になると、権力の暴走になるのは必然である。
権力を縛るものが憲法だからだ、

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「自民党改正草案」の中味は、戦前の「大日本帝国憲法」(明治憲法)に似ていますが、「権力者」を規制する「立憲主義」の意味では「大日本帝国憲法」よりさらに劣る内容になっています。
中世の絶対権力制を彷彿とさせる「自民党改正草案」が知れ渡れば「世界中からの笑いもの」になることは必死です。
青空の社会学

昨年の安倍首相の「70年談話」は当初、「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「おわび」の四点セットが入った村山談話を上書き更新することを狙いとしていたという。
しかし各方面から「予めの批判」もあり、発表された談話には、冒頭付近に、西洋の植民地政策に危機感を覚えた日本が、「アジアで最初に立憲政治を打ち立て」という文言がある。
立憲政治すなわち立憲主義に基づく政治を高く評価しているかのように思える。

ところが安倍首相の周辺には、立憲主義否定の空気がたちこめていた。
⇒2015年8月 7日 (金):立憲主義を否定する武藤貴也を国会に喚問せよ/日本の針路(208)
首相を応援する勉強会「文化芸術懇話会」では、「沖縄の新聞は潰した方がいい」などの言論の自由を無視する発言が相次いだ。
⇒2015年7月12日 (日):「文化芸術懇話会」におけるリベラルアーツの欠落/日本の針路(195)

「多弱」の野党がカウンターパワーとなり得るためには、大同で団結する必要がある。
オール沖縄が1つのモデルである。
しかし野党はいっこうにまとまる気配がない。
そこで民間から動きが出てきた。
「立憲政治を取り戻す国民運動委員会」という団体の立ち上げである。

代表世話人は憲法学者の樋口陽一東大名誉教授、弁護士の宇都宮健児氏、俳優の宝田明氏、音楽家の三枝成彰氏、音楽評論家の湯川れい子氏。事務局幹事が憲法学者の小林節慶大名誉教授だ。委員会には200人ほどが参加し、シールズの奥田愛基氏のほかママの会のメンバー、ジャーナリストなど老若男女が幅広く加わった。
 声明文では「選挙によって成立した政権が立憲主義を否定した暴走は、有権者が選挙で倒して立憲主義を回復すべき」と訴える。立憲主義の回復とは、分かりやすく言えば「安倍政権の打倒」だ。
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安倍政権打倒へ識者200人決起 進まぬ野党共闘に苦言続々

経歴も思考もバラバラではあるが、強い危機感を持った人たちである。
私も微力ながら連帯したい。

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2016年1月22日 (金)

甘利明大臣に重大疑惑/アベノポリシーの危うさ(2)

甘利明経済再生担当相に重大疑惑が持ち上がっている。
週刊文春誌の1月28日号(発売中)が報じているものだ。
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甘利氏と言えば、安倍内閣の主要閣僚である。
1次、2次の安倍政権を通じ大臣職にあったのは甘利氏だけだと言われる。
特に、TPPやマイナンバーの顔であったといえよう。

TPPは、結局どういうことになるのか、未だに良く分からない。
関税の問題ではなく、医療が狙いだという人もいるようだが、あえて明快な説明をしていないような気もする。

甘利氏は22日午前の記者会見で、自身や秘書が千葉県の建設会社から口利きの依頼を受けて現金を受け取ったとする週刊文春の報道に関し、「少なくとも私のことは、1週間以内に記憶を確認して話ができると思う」と述べた。
秘書に関しては、3年間地元を留守にしていて全く知らず、報道と本人の話が違っているので、第三者も含めて本格的に検証しないといけないとした。

事案の内容は概略以下のようである。

甘利大臣の公設第一秘書が、URの道路用地買収をめぐるトラブルに関して、UR側に補償金を要求していた業者から依頼を受け、UR側との交渉に介入し、URに2億2000万円の補償金を支払わせ、2013年8月に、その謝礼として500万円を受け取った。
それに加え、甘利大臣自身も、業者と直接会って、URと業者との産業廃棄物処理に関するトラブルについて説明を受けて補償交渉に関する対応を依頼され、同年11月に大臣室、2014年2月には神奈川県内の事務所で、現金50万円ずつ計100万円を直接受け取った。
その後、別の秘書(現・政策秘書)が環境省の課長と面談し、URの担当者と面談するなどして、産廃処理をめぐるトラブルに介入。その秘書は業者から多額の接待を受け、URの監督官庁である国交省の局長への「口利き」の経費などと称して合計6百万円以上を受領するなどしていた。
公設第一秘書が受け取った500万円のうち400万円については甘利氏が代表となっている「自民党神奈川県第13選挙区支部」の領収書を渡されたが、同支部の政治資金収支報告書には、寄付100万円の記載しかない。また、甘利大臣が受け取った100万円のうち、最初の50万円は、政治資金収支報告書に記載がないという。
「甘利大臣に賄賂1200万円」報道ーー郷原弁護士「絵に描いたようなあっせん利得」

甘利氏は、参議院決算委で、「会社の社長一行が大臣室を表敬訪問されたことは事実だ。一行が来られて正確に何をされたのか、記憶があいまいなところがある。きちんと整理をして説明したい」と答弁したが、50万円位の現金の授受は日常的なものだということなのか?
この問題で大臣のクビを取れないようなら、野党はおしまいである。

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2016年1月21日 (木)

分ける思考(1)MECE/知的生産の方法(141)

モノ・コトを分類するのは、知的活動の第一歩といえよう。
グチャグチャとこんがらがった状態では、問題の所在さえ分からないであろう。
そもそも「分かる」と「分ける」は同源だと言われる。
坂本賢三『「分ける」こと「わかる」こと 』講談社学術文庫(2006年9月)もある。
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鈴木進介『問題解決のためのセパレート思考 』フォレスト出版(2015年7月)

分類といえば、ロジカル・シンキングの定番がMECEだろう。

MECE(ミーシーもしくはミッシー、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略)とは、「相互に排他的な項目」による「完全な全体集合」を意味する言葉である。 要するに「重複なく・漏れなく」という意味である。経営学、経営コンサルティングなどの領域でよく使われる言葉である。ロジカルシンキングの一手法として日本では喧伝された、運営コンサルティング社で使われているグルーピング(grouping)の原理。
MECE

私がMECEという言葉を知ったのは、おそらく齊藤嘉則『問題解決プロフェッショナル「思考と技術」 』ダイヤモンド社(1997年1月)だったと思う。
もちろん、「重複なく・漏れなく」ということは意識していたが、それをMECEということは知らなかった。
同署では、以下のような図で説明している。
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<そp>アンケート等の選択肢で、MECEではないような場合がある。
最近の事例である。
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選択肢が、「現在ある」と「今までに1度もない」では、「今までにあったけど現在はない」がモレている。

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2016年1月20日 (水)

緊急事態条項はアリの一穴になる/アベノポリシーの危うさ(1)

安倍晋三首相は19日午前の参院予算委員会で、夏の参院選の争点に掲げた憲法改正の具体的中身について、「緊急事態条項」の説明を行った。
「東日本大震災の時に地方選挙を延期するという措置がなされ、自民党内で、国会議員もそういう対応ができないか議論になった」と述べた。

これについては、災害の当事者である河北新報紙が明確に批判している。

 東日本大震災の初動体制の反省を理由に必要性が語られ、衆院憲法審査会でも議論されてきたが、災害対策が改憲の本当の目的なのだろうか。
 日本では災害緊急事態布告の規定もある災害対策基本法や災害救助法、大規模地震対策特別措置法など「法レベルの緊急事態条項」が整っており、災害時の応急対応は外国の憲法が定める緊急事態条項以上に精緻といわれる。
 であれば、東日本大震災を踏まえて見直すべきは、憲法の「不備」ではなく既存の災害法制を十分活用できなかった運用面ではないのか。
 現憲法では、国政選挙を実施できないほどの大災害が起きても国会議員の任期を延長できず、政治空白的な状況が生まれる懸念がないわけではない。だがそれも参院の緊急集会による立法を認めた憲法規定やその準用で対応は可能との解釈もある。
 何より、災害時の対応に向けて必要な法律を作っておくなど、緊急時を想定した備えを怠らないことこそ重要だ。
 自民党が2012年に公表した憲法改正草案からも読み取れるように、緊急事態が宣言されると国が強大な権限を掌握し、国民は人権や私権の制約を強いられる。政権が緊急事態を名目に独裁政治への道を歩んだ苦い過去がある。教訓を忘れてはならない。
 東日本大震災で被災者支援に当たった各地の弁護士会は「震災対策に名を借りた改憲だ」と、強権政治への危うさを指摘し、一斉に反対声明を出している。災害対策としての実効性と国民が払う代償を冷静に見極めねばならない。
社説(1/19):憲法改正論議/震災便乗のお試し許されぬ

被災地だけでなく若手の弁護士を中心に反対の動きが活発化している。
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東京新聞1月18日

自民党の改憲の本丸は、戦争放棄を規定した9条の改正にあるのは間違いあるまい。
それにしても、いつから自民党はタカだけの集団になってしまったのだろうか。
災害やテロ対策で改憲の地ならしをしようとするなら、お門違いも甚だしい。

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2016年1月19日 (火)

「朝まで生テレビ」のヤラセ疑惑/ブランド・企業論(47)

あちこちで話題になってはいるが、「朝まで生テレビ」に一般人のフリをして発言していた自民党の区議がいた。
大森昭彦という自民党に所属する現役の大田区議員である。

大森さんは冒頭で「ゼネコンは別として、町工場レベルではアベノミクスで利益が増えたという実態はない」と4分ほど話す。そして、その後、田原総一朗氏に「じゃあ民主党も自民党も変わりはない?」と尋ねられると、笑いながら少し下を向き、「あの、民主党政権のときよりはよくなったかなと、そういう印象はあります。なぜかというと物流としてモノが流れるようになって取引が生まれたので」と話した。この言葉にかぶせるように「やや良くなったと」という声が飛ぶ。
要するに放送は、民主党から自民党に変わってから景気がよくなった、改善したと現状を褒める内容だった。議論が巻き荒れる中で自民党の功績を認めたのだ。
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番組に出た小林よしのり氏の言うように、「アベノミクスの延命」が意図されていたのだろうか?
⇒2016年1月17日 (日):いかさま経済政策の破綻(続)/アベノミクスの危うさ(68)

それにしても、自民党の区議にアベノミクスの擁護をさせるなんて、分かりやすい構図である。
上記の引用は、長谷川豊というフジテレビ出身のフリーアナウンサーのブログからである。
長谷川氏は「当然、BPOの案件になるでしょう。フォローできません。自民党、安倍政権支持を表明している私ですら。」と言っている。

私は長谷川氏とは立場が違うが、こんなヤラセをやっているようでは、テレビ朝日もフジテレビも無差別ということであろう。
フジに安倍首相の甥が在籍していることは周知の事実であり、安倍政権と親しいのは当然であるが、「朝まで生テレビ」は真剣な討論を売りにしていたのではなかったか。
テレ朝が嵌められたんじゃないのかという説もあるようだが、シナリオライターは誰なのか?
いずれにせよ、余り愉快な話ではない。


 

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2016年1月18日 (月)

いかさま経済政策の破綻(3)/アベノミクスの危うさ(69)

日本市場の株価の低落が止まらない。
今日の日経平均は、終値で17,000円を割った。
アベノミクスと称するものの実態が明らかになりつつある。

貧富の格差拡大は、現代社会の重要問題であろう。
⇒2015年2月19日 (木):ピケティVS アベノミクス/アベノミクスの危うさ(48)
ピケティが言うように格差を解消する方向に尽力すべきなのに、安倍政権は格差拡大を積極的に図っていると言える。

貧困問題に取り組む非政府組織(NGO)のオックスファム・インターナショナルの報告では、世界の富裕層の上位62人が保有する資産は、世界の人口全体の下位半数が持つ合計と同じ額だという。

オックスファムは今週スイスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に向け、米経済誌フォーブスの長者番付やスイスの金融大手クレディ・スイスの資産動向データに基づく2015年版の年次報告書を発表した。
それによると、上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、どちらも計1兆7600億ドル(約206兆円)だった。
富裕層の資産は近年、急激に膨れ上がっており、上位グループの資産はこの5年間で計約5000億ドル増えた。一方、下位半数の資産は計1兆ドル減少した。10年の時点では、上位388人の資産の合計が下位半数の合計に等しいという結果が出ていた。
また、上位1%の富裕層が握る資産額は、残り99%の資産額を上回る水準にあるという。
貧富の格差増大、上位62人と下位36億人の資産が同額

日本についてみれば、派遣などの非正規労働者が主な稼ぎ手の世帯のうち、約2割が生活苦のため食事の回数を減らしているという。
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東京新聞1月18日

こんな状態を是とはできないのが普通の人間的感覚というものだろう。
しかしながら、アベノミクスの旗を振りつつ、トリクルダウンなど起きるはずがないと言った竹中平蔵氏は、派遣労働の問題について、次のように発言している。

番組中盤になると、出演者は「改正派遣法の是非」を議題として、現状の派遣労働者や非正規雇用の地位についてそれぞれの意見を述べた。
その中で竹中氏は、労働省が実施した派遣に対する調査を例に上げ、正社員に変わりたい人と非正規のままでいいという人では、非正規のままでいいという人の方が多い、という調査結果を紹介した。
また竹中氏は、派遣雇用が増加した原因について「日本の正規労働ってのが世界の中で見て異常に保護されているからなんです」と述べ、整理解雇の4要件について触れた。
さらに竹中氏は、同一労働同一賃金について「(実現を目指すなら)正社員をなくしましょうって、やっぱね言わなきゃいけない」「全員を正社員にしようとしたから大変なことになったんですよ」と、日本の問題点を指摘した。
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竹中平蔵 朝まで生テレビで「正社員をなくしましょう」 これが安倍政権が目指す新自由主義経済だ

正規雇用と不正規雇用の格差や、女性労働者の低待遇をなくそうとする「同一労働同一賃金の原則」を、歪んだ解釈で、正規雇用の正社員を非正規労働者と同じく解雇しやすくしようというのが、派遣法改悪といわれるゆえんである。
ちなみに竹中氏は、人材派遣会社パソナの会長である。
公私混同というか、私益のために公権力を利用していると言って良いであろう。Ws000000
竹中平蔵 朝まで生テレビで「正社員をなくしましょう」 これが安倍政権が目指す新自由主義経済だ

富裕層と大企業を優遇する経済政策を進めるときは、便宜上トリクルダウンを全面に立ててきたが、そんなことを信じる方がバカだ、ということであろう。
こんないかさまの経済政策は終わりにしよう。

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2016年1月17日 (日)

いかさま経済政策の破綻(続)/アベノミクスの危うさ(68)

元旦の朝放映された「朝まで生テレビ」を久しぶりに視聴した。
昔はそれなりに真剣な討論が交わされていたように記憶する。
残念ながら、司会の田原総一朗氏も加齢のためか、ボケているようである。
やたらに大声を張り上げて自論を主張する姿は、耄碌を感じさせるものであった。

「激論!戦後70年日本はどんな国を目指すのか!」と題されていたが、いくつかの点で「やっぱり」という気がした。
番組全体については、小林よしのり氏の発言がある。

「朝ナマ」に出たが、議論はアベノミクスばかりで韓国の慰安婦合意に関しては全く無視された。
どうも奇妙である。
アベノミクス延命が目的だったかのようだ。
わしを含め、アベノミクス疑念派の論客が草食系過ぎて全然弱い。
浜矩子くらい呼んでこないと太刀打ちできないだろう。
「朝ナマ」が終わって

私がびっくりしたのは、竹中平蔵氏が「トリクルダウンなど起きるはずがない」という趣旨の発言をしたことである。
もちろん、これは正しい見方なのだろうが、トリクルダウンはアベノミクスの柱の1つではなかったのか。
⇒2015年11月 2日 (月):異次元緩和の効果と限界/アベノミクスの危うさ(58)
⇒2015年2月19日 (木):ピケティVS アベノミクス/アベノミクスの危うさ(48)

竹中平蔵氏は、アベノミクス肯定派のはずである。
田原氏との共著『ちょっと待って!  竹中先生、アベノミクスは本当に間違ってませんね?ワニブックス(2013年12月)という本まである。
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この書で竹中氏は「企業が収益を上げ、日本の経済が上向きになったら、必ず、庶民にも恩恵が来ますよ」と言ているのだ。

 番組では、アベノミクスの「元祖3本の矢」や「新3本の矢」について是非を評価。冒頭、「アベノミクスは理論的には百%正しい」と太鼓判を押した竹中平蔵氏。アベノミクスの“キモ”であるトリクルダウンの効果が出ていない状況に対して、「滴り落ちてくるなんてないですよ。あり得ないですよ」と平然と言い放ったのである。
「トリクルダウンあり得ない」竹中氏が手のひら返しのア然

アベノミクスのいかさま性を見事に表している。

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2016年1月16日 (土)

河津桜と土肥桜/「同じ」と「違う」(91)

早咲きの桜といえば河津桜が有名である。
シーズンになると、伊豆半島の主要道路は全体として渋滞をきたす。
例年1月末から2月に咲くが、年により変わるのは桜の宿命だろう。
⇒2012年3月15日 (木):河津桜異変

河津桜の他に、土肥桜という早咲きの品種がある。
土肥は現在は伊豆市に編入されており、河津とは反対側である。
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土肥地区の万福寺の境内にある土肥桜が既に満開である。
いくら早咲きといっても、例年より20日以上も早いらしい。
地球温暖化の影響であろうか?

万福寺の土肥桜は濃いピンクの紅種であるが、薄い紅色がかった白の白種がある。
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万福寺は通りから少し入った目立たない寺だ。Photo

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ついでに河津桜の様子も見てみたが、まだ各木に一輪程度であった。
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河津桜もソメイヨシノに比べると色が濃いが、土肥桜よりは淡いようだ。
Kawazu

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2016年1月15日 (金)

いかさま経済政策の破綻/アベノミクスの危うさ(67)

日本株が続落している。
今年に入って、9営業日中1勝8敗で、チャートに見るように1年前に戻った。
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年金資金まで投入しての株価連動内閣であるが、犠牲になるのは一般国民である。
⇒2015年12月 1日 (火):究極の公私混同と言うべきGPIFの資金運用/アベノミクスの危うさ(61)

「底値がいつ来るのか分からない。混乱している」。東京都内の運用会社で働くファンドマネジャーは、「6連敗」の相場に困惑しきりだった。
 11日は米国のダウ工業株平均が上昇し、12日は中国・上海総合株価指数が反発。日本時間の同日夕に始まった欧州市場も全面高で推移し、年明け2週目に入っても下げ止まらない日本株の「一人負け」が鮮明になった。
 その理由は、中国経済の減速懸念がくすぶっていることだ。日本にとって中国は最大の貿易相手国。同じアジア市場に位置し、流動性の高い日本株が真っ先に売られた格好だ。12日は中国関連銘柄の売りが膨らみ、新日鉄住金が前週末終値より3・95%安、コマツも同3・57%安で取引を終えた。
 中国への懸念を背景に、外国為替市場では、リスクを避けたい投資家が安全資産とされる円を買う動きを強めている。日本銀行の12月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の想定為替レートは2015年度下期で1ドル=118円だが、最近はこの水準を突破。11日には一時1ドル=116円台半ばをつけ、輸出関連株などの売りを招いている。
 さらに円高が進めば、自動車や電機といった主力株の業績下振れにもつながる。対ドルで1円の円高は、トヨタ自動車の営業利益を約400億円押し下げる。資源安で総合商社の一部や鉄鋼業界の業績は厳しさを増しており、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏は「来期(17年3月期)の企業業績は、2ケタに満たない増益幅に減速するかもしれない」と話す。
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中国減速・円高・原油安…続く重圧、日本株安止まらず

しかし海外要因だけではないだろう。
実体経済に無関係にむりに株価を上げてきたツケが来ていると考えるべきであろう。
バフェット指数が示している。
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もきち♪のきもち 株とコンピュータ編

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2016年1月14日 (木)

『母と暮らせば』と複素的な世界観/戦後史断章(24)

山田洋次監督の『母と暮らせば』は、山田監督の「70年談話」に相当するものと考えられよう。
「戦後70年」だった昨年は、さまざまな議論が交わされた。
中でも、安倍首相は入念な準備の上に談話を発表した。
⇒2015年8月15日 (土):安倍首相の「70年談話」を読む/日本の針路(213)
その評価は人によってさまざまであろうが、「戦後レジーム」の否定は彼の一貫した主張である。
「戦後」とひと言で言うけれど、もちろん戦争があっての「戦後」である。
多くの戦死者、戦傷者、あるいは難民となた人々の上に戦後はある。

『母と暮らせば』は、井上ひさしさんに捧げたオマージュである。
井上ひさしさんの、『父と暮らせば』は、広島の原爆で死んだ父と生き残った娘との物語である。
『母と暮らせば』は、舞台を長崎に移し、死んだ息子・浩二(二宮和也)と生き残った母・伸子(吉永小百合)に変えた。
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http://hahatokuraseba.jp/

長崎医大の学生だった浩二は、8月9日に大学の講義を受講中に、原爆で一瞬のうちにこの世から消えてしまう。
原爆の爆風で浩二の使っていたインク瓶が変形して溶けていく映像が印象的だ。
物語は、亡霊の浩二と母の会話を軸として進む。

実の世界と虚の世界があるという考え方がある。
実軸と虚軸で構成される複素平面的世界観とでも言えよう。
虚軸は不可視ではあるが、深層の世界で作用している。
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【色即是空】の意味

浩二は亡霊であるから、浩二との会話は虚の世界である。
母の心の中の出来事とも考えられる。
もちろん虚の世界だけでなく、実の世界も描かれている。

実の世界の登場人物には、浩二の恋人だった町子(黒木華)や「上海のおじさん」(加藤健一)、町子と結婚することになる黒田(浅野忠信)などである。
町子は親身になって伸子の世話をしているが、伸子の「浩二のことはもう忘れて、いい人がいたら結婚しなさい」という説得を受け入れて、復員した同じ学校の教師の黒田と結婚する。
黒田は戦争で負傷した障害者で、戦争の犠牲者の一人である。

町子と黒田を結びつけるのは、浩二が遺したメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲のレコードである。
甘く切ないメロディが効果を上げている。
「上海のおじさん」は闇市で逞しく商売するフーテンの寅さんのような人物である。
井上ひさしさんは、一時期浅草で渥美清と一緒に仕事をしていたことがあり、山田洋次監督の両者への思い入れの一端が窺われる。

昨年は1年を通してテロの印象が強かった。
理不尽なテロに屈してはならないだろうが、テロに対する戦いとしての空爆が解決の手段になるのだろうか?  
現在も、空爆によって多数の無辜の市民が犠牲になっている。
広島・長崎への原爆投下は、その極限的なものである。
また、ヨーロッパに逃れた大量の難民は、新たな問題の火種になっている。
負の連鎖である。

今年も年初から、サウジアラビアとイランの国交断絶や北朝鮮の水爆(?)実験など、世界は不穏な雰囲気に包まれている。
安倍晋三政権は、積極的平和主義を標榜して、集団的自衛権を軸とする安保法を成立させた。
他国の戦争に介入することが積極的平和とは、普通の感覚では理解しかねる。
常識的な平和主義に戻る年でありたい。

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2016年1月13日 (水)

沼津自由大学というトライアル/戦後史断章(23)

敗戦の翌年の昭和21(1946)年、沼津中学(現沼津東高)の昭和8年卒業生の同窓会が、開かれた。
同期生の少なからぬメンバーが戦死していた。
生き残った会員の中から、祖国と郷土の再興を誓う声が上がり、その根本は文化運動ではないかということになった。

同窓会は、「昭八会」と名付けられ、具体的な活動が始まり「沼津自由大学」と名付けられ、第1回が7月7日から14日にかけて連続講演会が開かれた。
講師には、各界の超一流人が名を連ねた。
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沼津史談会という集まりで、同会の会員でもあり昭八会のメンバーでもある矢田保久氏(100歳)が講演する予定だったが、当日体調がすぐれずピンチヒッターが立ったが、当時の資料などを閲覧することができた。
交通事情も良くない中で、よくこれだけの講師陣を揃えたと感嘆する。

昭八会の会員に朝日新聞の東京本社の記者がおり、そのツテを生かしたことが大きいだろう。
その他に、沼津中学の美術の教師を務めていた前田千寸(ゆきちか)という人の存在が大きかった。
沼津中学は、芹沢光治良、井上靖、大岡信という3人のペンクラブ会長を出している。
3人ともが、前田の薫陶を受けている。
『黯い潮』『夏草冬涛』(井上靖)、『人間の運命』(芹沢光治良)等の作品には前田千寸をモデルとした人物が登場している。

例えば、井上靖は、『青春放浪』で次のように書いている。

 この教師に、私は終戦後に、中学卒業以来初めてあって、彼が『日本色彩文化史の研究』という大著に取り組んでいることを始めて知った。私たちが中学生であった当時、前田さんはこの終生の仕事に既に取りかかっていたのであった。
   私は「黯い潮」という小説にその旧師の仕事を書かせてもらった。前田さんの仕事は河出書房から出た『むらさき草』という書物としてみのり、毎日出版文化賞を受けた。そして更に全部の仕事が岩波書店から出た『日本色彩文化史の研究』という大著として完成した。

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2016年1月12日 (火)

原子爆弾と水素爆弾/「同じ」と「違う」(90)

北朝鮮が水素爆弾の実験に成功したと発表した。
⇒2016年1月 7日 (木):北朝鮮は核実験で何を目指すのか?/世界史の動向(40)
北朝鮮政府は、「堂々とした水素爆弾保有国になり、核抑止力を持つことになった」とし、「責任ある核保有国として、敵対勢力が我々の自主権を侵害しない限り(他国より)先に核兵器を使用することはない」と発表した。

私は、北朝鮮の命運は尽きつつあると考える。
⇒2016年1月 8日 (金):金体制の終わりの始まり/世界史の動向(41)
それはそれとして、原子爆弾と水素爆弾はどう違うのか?
一言で言えば、水爆は核融合で、原爆は核分裂である。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160107-00000095-san-pol.view-000

有名なアインシュタインのE=mcという式は、エネルギーと質量の等価性を示している。
原爆も水爆も核反応を用いる点では同じことである。
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核融合とは?

重水素と三重水素からヘリウムと中性子ができる反応では、ヘリウムと中性子の各々の質量の和が、重水素と三重水素の各々の質量の和より小さい。
質量の一部が反応によって失われエネルギーに変換される。
それが水素爆弾の原理であり、質量の変化は大きい分、エネルギーも大きい。

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2016年1月11日 (月)

サウジアラビアとイランの国交断絶/世界史の動向(42)

今年も世界は波乱のようである。
新年早々、サウジアラビアがイランとの国交を断絶した。

サウジアラビアのジュベイル外相は3日夜、イランとの国交を断絶すると発表した。イランの首都テヘランで同日、サウジがイスラム教シーア派の高位聖職者ニムル師を処刑したことに抗議する群衆がサウジ大使館を襲撃したことなどに対する措置。両国が関与するシリアやイエメンなど中東各地での紛争や宗派対立がいっそう激化する恐れがある。
サウジ、イランと国交断絶

サウジアラビアがイランとの外交関係断絶を表明して以来、サウジと関係の深いバーレーンやスーダンもイランとの断交を宣言し、アラブ首長国連邦(UAE)やクウェートもイランから大使を召還した。
イスラム教スンニ派のサウジアラビアを中心とするグループとシーア派イランの対立が深まっている。

対立の発端は2日、シーア派指導者ニムル師を処刑したと、サウジが発表したことだ。
シーア派の指導者が国を治めるイランは猛反発して、最高指導者ハメネイ師が「サウジアラビアは神の報復に直面するだろう」との声明を出し、イランにあるサウジ大使館や領事館は、暴徒化した群衆に襲われ、放火された。
サウジから見れば、ニムル師は体制転覆を唱えた「危険人物」である。
ジュベイル外相は過去のイランでの外国公館襲撃事件にも触れ、「イラン政府が黙認している」と批判した。

サウジとイランは、ともに保守的なイスラム教国で産油国である。
共和制でシーア派を国教とするイランと、その影響力の拡大を防ぎたいスンニ派の王制国家サウジの覇権争いと言えよう。

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 サウジの断交宣言の後、米ニューヨーク商業取引所では一時、原油先物価格が3%以上値上がりした。
 米国務省のカービー報道官は「違いを克服するためには外交努力と直接対話が不可欠だ」とし、緊張緩和に向けた取り組みを促した。また欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表は3日、イランのザリフ外相に電話し、緊張緩和を要請した。
 中東不安定化の要因であるシリア、イエメンの内戦でも、サウジはスンニ派、イランはシーア派の諸勢力を支援している。
サウジとイラン、対立激化の背景 2国とも計算ずくか

日本人には、スンニ派とシーア派の争いと言っても実感は湧きにくい。
⇒2014年6月18日 (水):シーア派とスンニ派/「同じ」と「違う」(76)
2016年が安らかな年であることを願う。

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2016年1月10日 (日)

邪馬台国と駿河と高尾山古墳/やまとの謎(111)

JR東海の広報誌「ひととき」の1月号に、歴史と旅の作家・恵美嘉樹氏が『邪馬台国と駿河』という一文を寄せている。
沼津市の高尾山古墳によって、邪馬台国時代の歴史観が変わるかもしれない、という内容である。
高尾山古墳は旧辻畑古墳というが、昨年道路計画のため取り壊されそうになった。
⇒2009年9月20日 (日):沼津市で最古級の古墳を発掘
⇒2009年9月21日 (月):沼津市で最古級の古墳を発掘(続)
⇒2009年10月25日 (日):朱の効能
⇒2015年6月17日 (水):高尾山古墳の主は卑弥弓呼か?/やまとの謎(103)
⇒2015年6月25日 (木):高尾山古墳が存亡の危機という非常事態/やまとの謎(104)

その後反対運動が高まり、中沢新一氏が、「週刊現代」に連載中の『アースダイバー』で扱ったりした。
また、狗奴国研究の第一人者である赤塚次郎さんの講演会などもあって、現在は古墳の保存と道路の両立ということになっている。

恵美氏の文章も、基本的には高尾山古墳は狗奴国連合の一員ではなかったかとするものである。
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残念なことは、出土品を展示している沼津市文化財センターが、土・日・祝・年末年始等が休館なことである。
平日にしか時間がとれない希望者も多いだろう。
担当を交代制にするなど、何らかの策を講じて欲しいと考える。
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恵美氏もヤマトタケルの話と結びつけていた。
ヤマトタケルが火攻めにあったという記紀神話が、焼津の地名の起源であるとうことである。
高尾山古墳の主も、ヤマトタケルの抵抗勢力だったかも知れない。
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焼津神社のヤマトタケル像

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2016年1月 9日 (土)

障害者差別解消法を実効性のあるもに/日本の針路(270)

2016年4月から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障碍者差別解消法、平成25年法律第65号)が施行される。
2013年6月19日、第183回通常国会において、全会一致で採択されたものである。
2009年9月に誕生した民主党・国民新党・社民党の3党連立政権の下で、構成員の半数以上を障害当事者が占める「障がい者制度改革推進会議」が設けられた。
推進会議は、障害者権利条約の「私たち抜きに私たちのことを決めるな(Nothing  about us without  us!)」という基本精神にたって、精力的に議論をすすめ、今後の障害者政策の強固な礎となる意見や提言を次々に公表し、2012年7月に、改正障害者基本法にもとづく障害者政策委員会へと承継された。

ところが、2012年末の選挙で、再度の政権交代が行われ、自民党新政権の下では障害者政策委員会は開催されなくなった。
障害者基本計画案も、2012年末に政府に手渡されて以来、2013年4月まで公表が見送られていたが、4月26日に閣議決定され、2013年6月に成立した。

差別解消法は、障害という事由に基づく「あらゆる分野の差別」の解消を図る初めての具体的な立法、という意義をもつ。
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障害者差別解消法

私も障害者の1人である。
幸いにして、おおむね職業生活を終了してからの発症であり、日常生活の不便はあるものの、不当な差別的扱いは受けていない。
手書きのメモなどに不便は感じるが、一昔前と比べてもICTの発展によってずいぶん恵まれていると思う。

しかし障碍者にはそれぞれの事情がある。
是非、差別解消法を実効性のあるものにして欲しいが、行政の取り組みは遅れがちである。
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東京新聞1月9日

「1億総活躍社会」という表現には違和感を拭えないが、障害者差別解消を分かりやすく実行することはその第一歩であろう。

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2016年1月 8日 (金)

金体制の終わりの始まり/世界史の動向(41)

北朝鮮の内情はどうなっているのだろうか?
韓国の情報機関である国家安保戦略研究院によれば、北朝鮮で金正恩体制になってから処刑された幹部が約100人に上るという。
金正恩第1書記の叔父である張成沢国防委員会副委員長も処刑された。
⇒2013年12月 5日 (木):張成沢北朝鮮国防委副委員長失脚か?/世界史の動向(4)
⇒2013年12月31日 (火):今年を振り返って

中国としては北朝鮮が改革開放を推進して自立してくれればと思い、中朝国境の周辺に経済特区を設けて中朝貿易を推進させてきた。
しかし改革開放に熱心だった張成沢が残虐な形で公開処刑(2013年12月)されてからというもの、改革開放の可能性は低まり、中朝関係も最悪の事態になっていた。

水爆実験という報道を受けて、韓国による軍事宣伝放送が再開された。

韓国が昨年8月、非武装地帯(DMZ)で発生した地雷爆発事件に対する報復措置として放送を一時再開した際、北朝鮮軍は即時中止を要求。DMZで威嚇射撃を行ったほか、潜水艦を多数出航させた。
 韓国の専門家によれば、北朝鮮は、放送が前線兵士に心理的な動揺を与えることを懸念しているという。放送に金正恩(キムジョンウン)第1書記を批判する内容が含まれているため、強硬な姿勢をとっているとの分析もある。
 韓国軍は在韓米軍と協力して、北朝鮮による武力挑発を抑止する考え。在韓米軍によれば、米軍側も今後、戦略爆撃機や原子力空母などの派遣も含め、積極的に韓国を支援していく考えという。韓国警察庁は8日、南北軍事境界線に接した地域の警察署を中心に、北朝鮮の武力挑発に対する警戒態勢を強化するよう指示した。
北朝鮮が前線部隊を増強か 韓国、武力挑発を警戒

国内では、格差が拡大し、賄賂が横行し、売春が増えているという。
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東京新聞1月8日

まさに末期的状況であるが、こういう時には軍隊が暴発しがちである。

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2016年1月 7日 (木)

北朝鮮は核実験で何を目指すのか?/世界史の動向(40)

北朝鮮が水爆実験に成功したとアナウンスした。
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東京新聞1月7日

北朝鮮による核実験は4回目で、金正恩第一書記の体制下では2013年2月に続き2回目である。
水爆かどうか現時点では定かではないが、水爆であれば、原子核に中性子を当てて「核分裂」させる原爆と異なり、水素の原子核を衝突させて一体化する「核融合」となる。
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原爆を大きく上回る力 水爆

北朝鮮が「水爆実験成功」をアナウンスする狙いは何であろうか?

 現段階では、この時期に核実験を行った理由がはっきりとしない。今回の実験が本当に核実験となれば、国連や米国をはじめ世界レベルでの経済制裁などが強化される見通しだ。2012年に金正恩(キム・ジョンウン)第1書記政権が本格的に始まって以来、徐々に経済成長を続けてきた北朝鮮にとって、経済制裁措置の追加や強化は経済活動にとって冷水を浴びせることになる。    
 北朝鮮は、国家の統一的指導の下で、社会主義経済の前提を堅持しながらも、工場や企業所など経済活動の現場に権限を与え、相対的に自由な経済活動を許してきた。同時に、貿易全体の9割を中国が占めるなど、中国一辺倒の状態が続いてきた。
 そのため、今回の実験において「北朝鮮が言うところの民族経済の本筋に戻るという意味があるのかもしれない」と、北朝鮮経済に詳しい環日本海経済研究所(新潟市)主任研究員の三村光弘氏は指摘する。それは、中国との関係を悪化させても、北朝鮮が言う「輸入病」から脱却し「主体」(チュチェ)経済という名の自立経済をより強化するための信号弾ではないか、という見方だ。
北朝鮮は「水爆実験成功」で何を伝えたいのか

日本海側には北朝鮮からと見られる木造船が漂着しているという。
民は疲弊しているのではないか?
水爆実験などしている場合ではないように思う。
しかし70余年前は、日本もおそらくそう見えたのではないか。

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2016年1月 6日 (水)

情報士官としての杉原千畝/知的生産の方法(142)

去年の年末に、家に居ても邪魔になるだけなので、映画『杉原千畝』を観てきた。
唐沢寿明、小雪というキャスティングである。
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小雪が演じる千畝の妻・幸子は、沼津市に生まれた、
母が裾野市の出身で、沼津商業学校で教鞭を執っていた菊池文雄と結婚したのである。
幸子の兄・静男が外務省に出入りする保険会社員で、千畝と気が合う友人だった。
念願だったモスクワ赴任を、ソ連が、ペルソナ・ノン・グラータ(「好ましからざる人物」という外交用語)を発動して千畝の赴任を拒絶したのだ。
満洲から失意の内に帰国した千畝が静男と一緒に酒を飲み、そのまま菊池家に泊まってしまったことが縁で交際が始まった。

杉原千畝の名前は、ユダヤ難民に対する大量のビザ発給で知られる。
それは人道的見地から行われたのは疑いないだろう。
岐阜県八百津町の記念館は、人道の丘公園に建っている。

しかし、千畝はヒューマニストとして「だけ」で捉えきれない存在だった。
千畝の本来業務は、情報士官(インテリジェントオフィサー)だった。
情報という言葉は森鴎外がクラウゼビッツの『戦争論』を翻訳する時に作った造語と言われるが、異説もあるらしい。
今のように情報という言葉が広く使われる前、1950年代位までは諜報とほぼ同義語であった。

英語では、加工度によって、データ、インフォメーション、インテリジェンスに分ける。
英語圏の情報機関には、CIA(Central Intelligence Agency:米中央情報局)、SIS(Secret Intelligence Service:英秘密情報部)のように「インテリジェンス」が付けられている。
「国のリーダーが判断する時の助けとなる知見を与える」という組織であることを表している。
データは生に近く、インテリジェンスは最終目的に近く、インフォメーションは中間である。
一応、そう区分されるが、この区分は相対的である。
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よく料理に譬えられるが、データは食材、インテリジェンスができ上がった料理ということになろう。
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インテリジェンスが価値を持つのは、情勢が複雑な時であるのは当然である。
1932年(昭和7年)3月に、満洲国の建国が宣言された。
ハルビンの日本総領事館にいた千畝は、上司の大橋忠一総領事の要請で、満洲国政府の外交部に出向となった。
満洲国外交部では政務局ロシア科長兼計画科長としてソ連との北満洲鉄道(東清鉄道)譲渡交渉を担当し、緻密な調査に基づいて大きな成果を上げた。
まさにインテリジェントオフィサーの面目躍如である。
しかし、これが千畝の念願だった在モスクワ大使館への赴任を阻害したのだった。

ソ連は、反革命的な白系ロシア人との親交を理由に、ペルソナ・ノン・グラータを発動したのだった。
モスクワへ赴任できなくなった千畝は、1937年(昭和12年)フィンランドの在ヘルシンキ日本公使館への赴任となった。

1939年8月23日、独ソ不可侵条約が締結される。
平沼騏一郎内閣は、「欧州の天地に複雑怪奇なる新情勢が生じた」という声明を出し、総辞職した。
時を同じくして、千畝はリトアニアの在カウナス日本領事館領事代理となり、8月28日にカウナスに着任した。
リトアニアは、「複雑怪奇なる欧州」の焦点である。
その直後の9月1日にナチスドイツがポーランド西部に侵攻し第二次世界大戦が始まった。

ポーランドとリトアニアには、ユダヤ教の神学校があり、ヨーロッパ中から留学生が集まっていた。
1940年(昭和15年)7月、ドイツ占領下のポーランドからリトアニアに逃亡してきた多くのユダヤ系難民などが、各国の領事館・大使館からビザを取得しようとしていた。
当時リトアニアはソ連軍に占領されており、ソ連が各国に在リトアニア領事館・大使館の閉鎖を求めた。
ユダヤ難民は、まだ業務を続けていた日本領事館に名目上の行き先(オランダ領アンティルなど)への通過ビザを求めて殺到した。
ユダヤ人迫害の惨状を熟知する千畝は、情状酌量を求める請訓電報を打つが、本省からは発給条件厳守の指示が繰り返し回電されてきた。
千畝は、苦悩の末、本省の訓命に反し、「人道上、どうしても拒否できない」という理由で、受給要件を満たしていない者に対しても独断で通過査証を発給した。

スターリンはドイツとの密約にもとずいて、ポーランドを分割し、バルト三国などを併合した。
1940年(昭和15年)9月27日には、日本、ドイツ、イタリアの間で、日独伊三国間条約が締結された。

ドイツとの対決を想定したスターリンは急遽、日ソ中立条約を締結し、極東での日本との戦争を回避した。
1941年6月、独ソ不可侵条約を破棄したドイツが突如、ソ連に侵攻し、第二次世界大戦の戦局が転換した。
ドイツ軍はモスクワやレニングラード、スターリングラードに迫ったが、広大な戦線でソ連軍の反撃を受け、敗退した。

独ソ戦の開始によって、ドイツを共通の敵とすることになったイギリスとソ連は、早くも7月22日、英ソ軍事同盟を締結した。
ボリシェヴィキ=スターリン政権を敵視していたイギリスにとって、大きな転換であった。
ソ連は、1941年8月に発表された米英首脳による大西洋憲章に対しただちに支持を表明、それを受けてアメリカもソ連への武器援助を開始した。
1942年1月にはソ連も参加して連合国共同宣言が作成され、連合国の態勢が成立した。
またソ連はそれまで資本主義国のソ連敵視の原因となっていたコミンテルンの解散を1943年6月に実行した。
資本主義国と共産主義国が、枢軸国に対して一致して戦う連合国を形成するという図式となったのである。

この半年後の1943年12月、日本は対米戦争(太平洋戦争)にふみきり、アメリカの参戦をもたらした。
かくして文字通り「世界大戦」になったのである。

このように複雑な世界情勢の中で、的確に状況判断をしたのが杉原千畝というインテリジェントオフィサーであった。

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2016年1月 5日 (火)

下町工場の再生可能エネルギー開発技術力/技術論と文明論(40)

TBS系の日曜劇場でテレビドラマ化された『下町ロケット』が高視聴率だった。
原作は池井戸潤の小説で、宇宙科学開発機構の研究員だった佃航平が、死んだ父の経営していた中小企業「佃製作所」の社長となり、社員たちと共に奮闘する姿を描いたものである。
日本のモノ作りにおける優位性の低下が心配されているが、一種の応援歌であろう。

安倍政権は原発再稼働を積極的に推進する姿勢を変えていないが、原発の問題点ははっきりしている。
速やかに政策資源を再生可能エネルギー開発にシフトさせるべきであろう。
再生可能エネルギーは、太陽光発電、地熱発電、風力発電が中心となろう。
それぞれ課題があるが、1月4日の東京新聞に、風力発電の新しいしくみの開発にチャレンジする下町工場が紹介されていた。
風力発電の現状は以下のようである。

 日本風力発電協会の予測では、これから陸上の風力が年々増えて、2035年までに発電規模が2010年の10倍になる。さらに2020年代から洋上の風力が急速に広がり、2050年には陸上の風力と同程度にまで拡大する見通しだ(図1)。その時点で陸上と洋上を合わせた総発電能力は5000万kWに達して、大規模な原子力発電所の50基分に相当する(ただし年間の発電量は3分の1程度)。
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風力発電の3つの課題-環境影響、安全性、コスト-

風力発電の最大の問題点は、風の強弱を調整することができないため、肝心の発電量が安定性に欠けることである。
また、台風のように風が強すぎると今度は耐久性の問題が発生する。

墨田区のベンチャー企業「チャレナジー」は台風のように強い風を発電に利用する全く新しい風力発電のしくみだ。
社長の清水敦史氏は、1979年に岡山県生まれ、2005年に東京大学大学院修士課程を修了後、大手電機メーカー・キーエンスで自動制御機器の研究開発に従事した。
独力で「垂直軸型マグナス風力発電機」を発明し、2014年の第1回テックプラングランプリ最優秀賞を受賞し、同年10月にチャレナジーを設立した。

同社の風力発電はマグナス力を利用する。
地面に対して垂直に立てる円筒棒が風を受けて回転すると、マグナス力の作用で、円筒棒を支える軸が回ることで発電する。
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台風で電気「垂直軸型マグナス風力発電」のすごさ

円筒棒を縦置きにするため、風向きを問わないし、低周波の発生などにも利点があると思われる。
こうした技術開発をこそ応援すべきであろう。

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2016年1月 4日 (月)

経営危機にまで追い詰められた東芝/ブランド・企業論(46)

粉飾決算が発覚した東芝が、経営危機にまで追い詰められている。
⇒2015年7月22日 (水):日本を代表する企業・東芝の実態/ブランド・企業論(36)
⇒2015年8月 2日 (日):東芝の粉飾と原発事業の「失敗」/ブランド・企業論(37)
⇒2015年11月16日 (月):原発ビジネスは成立しない!/ブランド・企業論(41)

 東芝は21日、テレビやパソコンなど家電事業を中心としたリストラ策を発表し、今年度中に国内外で計約1万人の従業員を削減する方針を示した。割り増し退職金の支払いに加え、利益が出ることを前提に税金の前払い分を資産に計上する「繰り延べ税金資産」の取り崩しも発生するため、16年3月期の純損失は過去最悪の5500億円となる見通しだ。
 その結果、自己資本は15年3月期の約1兆円から6割減の4300億円に激減する見通しだ。財務の健全性を示す自己資本比率も10%割れが必至で、健全の目安とされる30%以上を大きく下回る。主取引銀行の関係者も「安心して見ていられる状況ではない」と打ち明ける。
 すでに東芝は9月末、銀行から4千億円の融資枠の設定を受けている。ただ、家電事業など新たに必要なリストラ費用に加え、今年度中に約2千億円の借入金の返済も迫る。現在の融資枠では足りそうになく、銀行側と追加融資枠について協議し始めた。
 今後は財務体質の改善に向け、事業や資産の売却も進める。医療機器を扱うヘルスケア事業の中核子会社「東芝メディカルシステムズ」の売却方針をすでに示しているほか、不動産の売却も検討している。
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東芝、追加融資枠要請へ 3千億円規模、資金不足を懸念

もはや存続の危機というレベルである。
こういう事態になると、監査のあり方も問われることになる。
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東京新聞12月30日

東芝を監査したのは新日本監査法人である。
同法人に対し、金融庁の公認会計士・監査審査会が2011年、検査に入り、東芝の監査の実態を調べていた。
金融庁は新日本に21億円の課徴金納付を命令したが、新日本は「審査会の検査で東芝の監査は問題なしとされた」と主張していた。
検査がお墨付きを与えた形であり、審査会は検査方法について再検討を始めたという。

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2016年1月 3日 (日)

原発ゼロへ向かう年に/技術論と文明論(39)

昨年は停止していた川内原発が、8発11日に再稼働し、原発0が終わった。
⇒2015年8月11日 (火):なぜ川内原発を再稼働させるのか?/日本の針路(211)
⇒2015年8月14日 (金):原発再稼働とメディアの姿勢/原発事故の真相(133)

しかし、電力は原発無しでも十分に足りているのではないか。
単に安全審査が通ったから再稼働するというのではなく、積極的な「必要性」を示すべきではないか。
原発の状況は以下の通りである。

 北海道電力(1原発3基中稼働なし)
 東北電力(2原発 4基中稼働なし)
 東京電力(3原発11基中稼働なし他6基廃炉)
 中部電力(1原発 3基中稼働なし他2基廃炉)
 北陸電力(1原発 2基中稼働なし)
 関西電力(3原発9基中稼働なし他2基廃炉)
 中国電力(1原発 1基中稼働なし他1基廃炉)
 四国電力(1原発 3基中稼働なし)

 九州電力(2原発 5基中2基稼働中他1基廃炉)
  川内原発1号炉(2015/08/11~)
  川内原発2号炉(2015/10/15~)

 日本原電(2原発 2基中稼働なし他2基廃炉)
  運転中の商用原発一覧

原発に拘っていると、再生可能エネルギーという潮流に乗り遅れることになろう。
世界の趨勢は、脱原発の方向である。
⇒2015年12月27日 (日):日本とドイツの脱原発/「同じ」と「違う」(89)
しかし安倍政権は、原発立国路線に拘泥している。
⇒2015年12月20日 (日):COP21と中国大気汚染と日本の原発輸出/技術論と文明論(37)
⇒2015年12月25日 (金):高浜原発再稼働に慄然とする/技術論と文明論(38)

しかし、再稼働によって発生する核ゴミをどうするのか?
「もんじゅ」の破綻を認めないのであろうか?
⇒2015年11月 6日 (金):もんじゅは廃炉にして原発政策を見直すべき/原発事故の真相(135)
⇒2015年11月12日 (木):原発再稼働は誰のため/原発事故の真相(136)

151230
東京新聞2015年12月30日

福島原発事故の汚染水さえ統御できていないのである。
⇒2015年12月 7日 (月):原発再稼働の前に汚染水統御を/技術論と文明論(36)
今年こそ、ソフトエネルギーにはっきりと針路を定める年にしたい。
⇒2015年1月31日 (土):「この道しかない」はソフト・パスだ!/技術論と文明論(17)

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2016年1月 2日 (土)

理研が新元素の命名権を獲得/知的生産の方法(141)

理化学研究所が、新元素(原子番号113)について、アジアで初めて命名権を獲得したと発表した。

理化学研究所仁科加速器研究センターの森田浩介グループディレクターを中心とする研究グループ(森田グループ)が発見した「113番元素」を、国際機関が2015年12月30日(日本時間31日早朝)、新元素であると認定しました。これに伴い、森田グループには、発見者として新元素の命名権が与えられます。欧米以外の研究者・グループに命名権が与えられるのは初めてです。
113番元素の命名権獲得

日本の科学水準の高さを示すものであり、昨年の2人のノーベル賞受賞に続く快挙である。
新たに発見が報告された元素を新元素と認めるかどうかの審議は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)と国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)が推薦する委員で組織された合同作業部会「JWP」が行う。
森田グループは、2004年からこれまでに3度合成に成功した「113番元素」を新発見の元素と主張していたが、ロシアと米国の共同研究グループも別の手法によって113番元素を合成し、発見を主張していた。
JWPの審議の結果、森田グループが113番元素の発見者であると認定し、IUPACもそれを認めた。

原子番号113は、周期律表で、以下の位置にある。
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3度目の113番元素の同位体「113、質量数278」の合成を確認した際には、前の2度の合成とは異なる新しい崩壊経路をたどっていたという。
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新元素の合成を証明するためには、その元素が崩壊した後、既知の原子核に到達することが重要で、森田グループは、6回のアルファ崩壊によってボーリウム、ドブニウム、ローレンシウム、メンデレビウムの既知の原子核に到達していることを観測した。
これらによって、「既知の同位体への崩壊」が疑う余地なく確認されたことになる。

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2016年1月 1日 (金)

2016年の幕開けをお喜び申し上げます

穏やかな元旦を迎えることができました。
今年も富士山は美しく朝陽を浴びて秀麗な姿を見せています。
暖冬のせいか、降った雪も一部は融けているようです。
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「無事=取り立てて言うほどの変わった事がないこと。

危険・不幸・大過などが起こらない状態
であること」の有難さを実感します。
社会もまた、平穏無事であることを祈念して、今年をスタートしたいと思います。

発症から満6年経ちましたが、残念ながら「元の状態には戻らない」という医師の言葉を受け入れざるを得ないようです。
しかしめげずにリハビリに励んでおり、お陰様で、こうしてブログを更新できています。

今年の干支は、丙申です。
私は、甲申の生まれですから、暦が一巡して再びの申年になりました。
思えば「遥けくも来つるものかな」という感慨が湧いてきます。
いろいろ失敗もあったけど、今こうしてあることが何やら不思議な気もします。

今年の皆様のご多幸をお祈り致します。

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