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2015年12月17日 (木)

夫婦は同姓でなければならないか?/日本の針路(267)

最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)が、家族のあり方をめぐる民法の規定について、憲法判断を示した。
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東京新聞12月17日

夫婦別姓を認めない民法750条が憲法違反かどうかが争われた訴訟では、「結婚時に夫または妻の姓(氏)を名乗る」との規定を「家族の呼称を一つに定めることには合理性があり、女性の不利益は通称使用で緩和できる」と、合憲と判断した。
女性のみ再婚を6カ月間禁じる民法733条をめぐる訴訟では、100日を超える部分を「生まれた子の父の推定には不要で違憲だ」とした。

民法の条文は以下のようである。
Photo
なぜ選択的夫婦別姓は最高裁で退けられたのか

違憲とされた733条は、国会で改正されることになる。
ここでは750条について考えてみたい。

最高裁は、「いずれの姓を名乗るかは夫婦の協議に委ねており、規定には男女の形式的な不平等はなく、憲法違反とはいえない」とした。
ただ、希望すれば結婚前のそれぞれの姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」にも一定の合理性を認め、「どのような制度にすべきかは、社会の受け止め方を踏まえ、国会で論じられ判断されるべきだ」と、国会での積極的な議論を促した。
果たして国会はどう判断するであろうか?

注目すべきは女性裁判官3人が全員、違憲と判断したことだ。
「多くの女性が姓の変更による不利益を避けるため事実婚を選んでいる。別姓を全く認めないことに合理性は認められない」などとした。
また4人の弁護士出身者の内、3人は違憲判断だった。
現在の規定が「合憲」との判決は、裁判官15人のうち10人の多数意見である。
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夫婦別姓認めぬ規定「合憲」 最高裁初判断 「家族の姓一つに合理性」


法相の諮問機関の法制審議会は、平成8(1996)年、選択的夫婦別姓を導入するよう東進している。
判決は「姓の変更で不利益を受けるのは女性の場合が多いと思われる」と認めたが、旧姓の通称使用が一般的になっていることなどから、「個人の尊厳と男女の平等に照らして合理性を欠く制度とは認められない」と結論づけた。

選択的夫婦別姓に対する慎重論は、「夫婦や親子など家族のあり方が損なわれる」というものが多いという。
確かに山極寿一『 「サル化」する人間社会』 集英社インターナショナル(2014年7月)で語られているように、家族というものが人間を特徴づける要素であるにも拘わらず、個体化とグローバル化の同時進行によって、家族が崩壊しつつあるように見える。
しかし、それが夫婦同姓か否かで変わるのであろうか?
基本的には無関係であろう。

私の知り合いにも、職場での通称として、旧姓を用いている人がいる。
だから「問題ない」とは言えないだろう。
今回の最高裁判決も、結局は問題を国会に預けているだけではないだろうか。
「違憲とは言えない」という消極的な合憲論である。
国会が動かないから裁判に訴えたのだと考えると、裁判所で積極的な見解を出すべきであったと思う。

 

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