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2015年12月10日 (木)

新国立競技場問題は安倍一強状況の産物/日本の針路(264)

2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の建設計画は白紙撤回となった。
建築家の槙文彦氏らの問題の指摘があったにも関わらず、なぜ早期に計画の見直しができなかったのか?

新国立競技場の建設計画の問題点を、早くから指摘してきた(2013年8月の論文)。大枠では、景観への影響やキールアーチについて。細部では、ライブ会場として使用するには残響時間に対する高度な電気補助機能が必要になること、透過型屋根による室内温度上昇の懸念など。
槇グループとして、大野秀敏、中村勉、元倉眞琴、山本圭介、古市徹雄らも問題点追及に加わった。
なお、槇自身2012年の国際デザインコンペの応募資格を満たしていたが、応募しなかった。逆にほぼ著名建築家しか応募できないという条件への疑問、そして第一には敷地が広くないところでその10倍の施設をつくるという設計条件をミスマッチだと直感的に感じたため、という。「コンペへの不参加声明を出して、メッセージを出してもよかったのでは」という意見(高崎正治)もあった。
2015年7月のザハ・ハディド案の白紙化決定後も、縮小案を提案するなど活動している。ただし同月、やり直しとなる国際コンペへの参加を否定し、その審査委員の依頼があっても受けない姿勢を示した。
(8万人でなく)5万 - 6万人規模を推奨する理由として、立地上、災害などで避難誘導するのは難しいことも挙げている。
Wikipedia

東京新聞が文科省第三者委員会の聴取録を分析し、安倍晋三首相のスピーチがきっかけで後戻りしにくくなったことを示した。
安倍一強の状況が自由に議論することを妨げていると言えよう。
151210
東京新聞12月10日

 「どんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから財政措置まで、二〇年東京大会は確実に実行されます」
 アルゼンチン・ブエノスアイレスで一三年九月に開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会。安倍首相は英語のプレゼンテーションで招致を訴えた。巨大アーチが屋根を支える斬新なハディド氏のイメージ図も紹介された。
 JSCは当初千三百億円の工費を見込んだが、ハディド氏案を試算すると三千億円超に。IOC総会の一カ月前、文科省に報告した。二週間余り前には、工費削減を検討するため、千二百億~三千四百億円程度の七案も伝えた。
 聴取録からは担当者の危機感が伝わる。設計会社は「思い切ったことをやらないとだめ」、JSCは「二位案への変更は考えないのかと文科省に提案した」、文科省は「千三百億円程度に抑える作業を」-。
 だが招致決定後、総会での首相の“公約”に縛られる。JSCの河野一郎理事長(当時)は、首相のプレゼンで「ハディド案をベースに置くことは決まったと思う」と振り返る。別のJSC幹部も「周りの雰囲気は変わっていった」と話した。その後、工費がかかるとされたアーチなどには手を付けず、机上の試算が繰り返された。
 聴取録からは、硬直化した官僚組織もかいま見える。今月下旬に新計画の設計・施工業者が決まるのを前に、特集面で「先送りの内幕」を検証した。
新国立 首相演説が撤回の足かせ 第三者委聴取録を本紙入手

強権的な手法は、結局は高くつくのだ。
福島第一原発事故の汚染水問題といい、首相の独走(暴走)に歯止めをかける人材が自民党から消えてしまったのが問題である。

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