表現の自由と志/知的生産の方法(140)
今年も間もなく暮れる。
1年の印象としてさまざまな出来事が思い浮かぶが、やはりテロ事件が今年を象徴するものだろう。
正月気分の抜けきれない1月7日、フランスの風刺マンガを主に掲載する「シャルリ-・エブド」の本社がイスラム過激派に襲撃された
⇒2015年1月11日 (日):フランス連続テロ事件の衝撃/世界史の動向(30)
2015年1月7日に発売されたシャルリー・エブドには、イスラム過激派を挑発する風刺画が掲載されていた。
それは「フランスではいまだに襲撃が全くない Toujours pas d'attentats en France」という見出しの下に、ジハディスト戦士を(茶化すように、目線が左右バラバラになっているように)描き、ロシア製の自動小銃「AK-47」を肩にかけて立った状態で「待ってろ! 新年の挨拶なら1月末まで間に合うだろ Attendez! on a jusqu' à la fin janvier pour présenter ses vœux.」と言っている風刺画であった。同画の右下隅には風刺画家「CHARB シャルブ」の署名があった。
シャルリー・エブド襲撃事件
1月の事件の後、日本人ジャーナリストが拘束され、殺害された。
⇒2015年1月21日 (水):日本人をターゲットとしたテロと安倍政権/世界史の動向(31)
⇒2015年2月 1日 (日):「イスラム国」が後藤健二氏を殺害/世界史の動向(33)
残念ながら、安倍政権の基本的な姿勢は「自己責任」というものであった。
⇒2015年2月 2日 (月):人命軽視の積極的平和主義/世界史の動向(34)
パリのテロ事件は、11月にさらに大規模な形で再び起こった。
⇒2015年11月15日 (日):パリ・惨劇の拡大再生産/世界史の動向(38)
安倍首相は「テロには屈しない。価値観を共有する国と共に戦う」としているが、戦いの展望をどう描いているのか?
出口戦略を持たないで戦うのでは、大東亜戦争の教訓が生かされていない。
難民問題は、21世紀の大きな課題である。
積極的平和主義を掲げるなら、真っ先に取り組むべきテーマではないか。
ユダヤ難民に大量のビザを発給したことで知られる杉浦千畝の映画が話題になっているが、積極的平和主義は、戦争とセットではなく人道とセットで考えるべきであろう。
FB上の「安倍総理を支える会」の中心的な人物とされる「はすみとしこ」という漫画家は、自身のFBに「そうだ 難民しよう!」というイラストを投稿した。
自称難民の実質経済移民が大勢いることが事実だとしても、このコピーと絵柄はどうなのか?
私は不快である。
⇒2015年10月12日 (月):難民問題にどう対処するのか?/世界史の動向(36)
「はすみとしこ」氏は、同名の著書を出したらしい。
私には、クリエイティブというよりも売名行為に思えるが、Amazonのレビューでは大きな支持を得ているようだ。
恐ろしい気がする。
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