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2015年12月 1日 (火)

究極の公私混同と言うべきGPIFの資金運用/アベノミクスの危うさ(61)

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は30日、2015年7~9月期の運用損益が7兆8899億円の赤字に転落したと発表した。
赤字は6四半期ぶりで、四半期の赤字額としては過去最大となった。
記者会見したGPIFの三石博之審議役は「10月以降の市場環境は回復しており、今年度の直近までの収益額はプラスに転じる基調だ」と強調したが、それだから許されるというものではないだろう。
GPIFの資金運用方針そのものが問われなければならない。

そもそも国民の大切な資金である。
リスクの高い市場で運用することが適切なのか?

安倍政権が、高株価を演出するために、GPIFの資金を動員してきたことは周知の事実である。
「文藝春秋」12月号で、『「一億総活躍」わが真意』で、「日経平均株価も八千円台から二倍以上、上昇しました」と得意げに語っているが、政策的に形成された株価で実体経済とは乖離したものであることは、GDPが2四半期下落していることでも分かる。
⇒2015年11月18日 (水):虚妄の景気回復シナリオ/アベノミクスの危うさ(59)

15年4月~6月の国内総生産(GDP )はマイナス成長で約500兆円だった一方で、東証1部の時価総額 が610兆円と過去最高を更新した。
GDPに対する株式時価総額の比率を指数化した「バフェット指標」というものがある。
アメリカの投資家のウォーレン・バフェットが愛用することから呼ばれている。

2012年12月の安倍政権発足時のGDPは現在と変わらない約475兆円だった。
同じ時期の東証一部株式総額は約250兆円ほどに過ぎなかったので、この指数では「安すぎ」とされた。
その後の2年半で株価は2.4倍になったが、GDPはほぼ同じまま成長しませんでした。
バフェット指標で日本株は高すぎる GDPと株価総額は同額であるべき

もちろん、バフェット指数が絶対とは言えない。
しかし安倍政権の高株価が実体経済と遊離したものであることは確かである。
塚澤健二『そして偽装経済の崩壊が仕組まれる』 ビジネス社(2015年11月)に下図が載っている。
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割高な株価を形成してきたのがGPIFなどの資金である。
⇒2015年4月14日 (火):株価2万円のカラクリ/アベノミクスの危うさ(51)
そのことは上掲書に載っている下図が見事に示している。
Gpif
見事であるとしか言いようがない。
同書で塚澤氏は次のように書いている。

 だが、安倍政権の本当の目的は、今後の日経平均を二万一〇〇〇円台、二万二〇〇〇円台に押し上げることではない。
 黒田総裁が政府よりな金融政策で株価を上げている間に、集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法案の成立を筆頭に、安倍政権がやりたいことをやれるようにするために他ならない。TPP参加についても、なし崩し的に決まってしまった。

人為的に挙げられた株価は、いつか元に戻る。
自分の政策のために公的資金をつぎ込むというのは、究極の公私混同である。

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