COP21と中国大気汚染と日本の原発輸出/技術論と文明論(37)
地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」を採択した国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が閉幕した。
パリ協定は1997年に採択された京都議定書に代わる、18年ぶりの温暖化対策の世界的なルールである。
今世紀後半に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指し、条約に加盟する196カ国・地域が参加する初めての国際的な枠組みとなった。
COP21合意 「全員参加」枠組み優先 途上国支援、協定に盛らず
科学的な議論にはなかなか確定的なことは言えないだろうが、身近なところで異常気象が頻発するようになっているのは事実だろう。
国家の利害を超えた問題であることについて、不十分なものであるにしても国際社会が協調しようということは大きな成果だろう。
時を同じくして、中国の大気汚染が深刻な状況になっている。
12月7日、北京市政府は重度の大気汚染が長く続くと予測されたことから、4段階ある警報のうち最も重い「赤色警報」を初めて出した。
TVなどで見る限り人間の棲息環境とは思えない。
日本でも高度成長期には、四日市等で大気汚染が進み、ぜんそくなどが多発した。
当時はPM2.5などという指標は用いられなかったように記憶する。
大気や海洋は流動するので、全地球規模に拡散する。
かつては拡散によって被害が発生する濃度以下になると楽観的に考えられていたが、キャパシティとの兼ね合いであることも広く認識されるようになった。
ローマクラブが「成長の限界」を提言したのは1972年のことだから、40年以上が経つ。
そろそろ本気で取り組まないと手遅れになるだろう。
COP21において、日本の存在感は小さかったようだ。
政府は、石炭火力や原発に執着し、再生エネ導入に消極的だ。
世界から温暖化にも後ろ向き、危機感の薄い国だと見られているのも致し方あるまい。
インドを訪問した安倍晋三首相はモディ首相と会談し、日本の原発輸出を可能にする原子力協定締結に原則合意した。
インドは核拡散防止条約(NPT)にも包括的核実験禁止条約(CTBT)にも加盟していない。
日本がNPT未加盟国と原子力協定を結ぶのは初めてで、唯一の被爆国として追求してきた「核なき世界」に逆行し、大きな禍根を残すものといえよう。
東京電力福島第1原発事故の収束のめども立っていないし、核燃料サイクルについても見通しが立っていない。
原発を輸出している場合ではないと考えるのは私だけではないだろう。
今や、風力や太陽光など再生可能エネルギーの時代である。
早く再エネに切り替えて脱炭素社会を築かないと、時代の趨勢に取り残されるだろう。
必然性を洞察し得るリーダーが期待される。
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