素粒子論の発展と日本人(6)/知的生産の方法(135)
ニュートリノは、有名な物理学者のヴォルフガング・パウリが苦し紛れに考え出したものだと言われる。
Wikipediaによれば、その間の事情は以下のようであった。
1900年代初め、理論によりベータ崩壊によって特定のエネルギーを持った電子が放出されると予測された。しかし1914年、ジェームズ・チャドウィックは連続したスペクトルを持つことを示した。
1930年、ヴォルフガング・パウリは未発見の粒子がエネルギー、運動量、角運動量を持ち去っているという理論を提案した。
1930年12月4日、パウリはチューリヒのPhysical Institute of the Federal Institute of Technologyに宛てて有名な手紙を書き、その中でベータ崩壊における連続スペクトルの問題を解決するために電子ニュートリノの存在を提案した。
・・・・・・
β崩壊のニュートリノを検出する装置は、1942年に王淦昌によって初めて考案された。そして、電子ニュートリノは、1956年にフレデリック・ライネスとクライド・カワンによって初めて検出された。この業績により、フレデリック・ライネスは1995年のノーベル物理学を受賞した。
ニュートリノは、もともとパウリがつじつまが合うように仮想的に考えた粒子であるから、観測が非常に難しい。
ニュートリノは1秒間に1m²あたり数十兆個も地球に降り注いでおり、われわれの身体を貫通している。
しかし、ニュートリノは非常に小さいので、われわれが感じることはない。
ニュートリノを人間と同じくらいの大きさにするためには、10億倍の更に10億倍に拡大する必要がある。
人間の身体を同じ倍率で拡大すると、太陽系の外側まで到達してしまう。つまりニュートリノを人間の大きさとした場合、電子は地球より大きい範囲を飛び回り、その中心にある原子核は1000m級の山一つ分ぐらいになる。
原子が連なった分子は、地球規模のスカスカの空間が連なっていることになり、細胞の膜は太陽系ほどの大きさといいうことになる。
言い換えれば、ニュートリノにとって生物の細胞は、人間にとっての太陽系に匹敵する大きさだということになる。
自然に発生したニュートリノの観測に成功したのが、小柴昌俊博士である。
岐阜県 神岡鉱山地下1000mに存在した観測装置・カミオカンデで、1987年2月23日、カミオカンデはこの仕組みによって、大マゼラン星雲でおきた超新星爆発 (SN 1987A) で生じたニュートリノを偶発的に世界で初めて検出した。
この業績により、2002年小柴昌俊博士は、ノーベル物理学賞を受賞した。
Wikipediaによれば、カミオカンデの仕組みは以下のようである。
カミオカンデは、大統一理論の予言する陽子崩壊を実証するため1983年に完成した。
カミオカンデは3000トンの超純水を蓄えたタンクと、その壁面に設置した1000本の光電子増倍管からなる。ここで使用された光電子増倍管は研究グループと浜松ホトニクスが新規に共同開発した口径20インチのものである(一般に広く使われるのは口径2インチ型)。
カミオカンデが地下に設けられたのは、陽子崩壊時に放出されるニュートリノ以外の粒子の影響を避けるためである。ニュートリノはものを貫通する能力が高く、他の物質と反応することなく簡単に地球を抜けていってしまう。しかし、まれに他の物質と衝突することがある。カミオカンデは、このまれに起こる衝突を検出することで間接的に陽子崩壊を実証することを目的とした。
カミオカンデはニュートリノの衝突を検出するため、超純水をつかう。カミオカンデの内部には超純水がためられており、ニュートリノが水の中の電子に衝突したあとに、高速で移動する電子より放出されるチェレンコフ光は青白く発光し、壁面に備え付けられた光電子増倍管で検出する。
チェレンコフ光を検出した光電子増倍管がわかると、計算によりどの方角からきたニュートリノによる反応かがわかるしくみになっている。
上記のように、当初のカミオカンデのミッションは、陽子崩壊の実証であった。
しかしながら、期待された陽子崩壊は観測されず、予想以上に陽子の寿命が長いことが分かった。
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- スキャンダラスな東京五輪/安部政権の命運(94)(2019.03.17)
- 際立つNHKの阿諛追従/安部政権の命運(93)(2019.03.16)
- 安倍トモ百田尚樹の『日本国紀』/安部政権の命運(95)(2019.03.18)
- 平成史の汚点としての森友事件/安部政権の命運(92)(2019.03.15)
- 内閣の番犬・横畠内閣法制局長官/人間の理解(24)(2019.03.13)
「思考技術」カテゴリの記事
- 際立つNHKの阿諛追従/安部政権の命運(93)(2019.03.16)
- 安倍トモ百田尚樹の『日本国紀』/安部政権の命運(95)(2019.03.18)
- 平成史の汚点としての森友事件/安部政権の命運(92)(2019.03.15)
- 横畠内閣法制局長官の不遜/安部政権の命運(91)(2019.03.12)
- 安倍首相の「法の支配」認識/安部政権の命運(89)(2019.03.10)
「知的生産の方法」カテゴリの記事
- 『日日是好日と「分かる」ということ/知的生産の方法(182)(2019.01.02)
- 祝・本庶佑京大特別教授ノーベル賞受賞/知的生産の方法(180)(2018.10.02)
- この問題は、本当の問題です/知的生産の方法(179)(2018.09.13)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント