辺野古に考古遺跡か?/やまとの謎(108)
米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、埋め立て予定地の米軍キャンプ・シュワブ沿岸から新たに土器や石器が発見されたことが分かった。
発見場所は文化財の「碇石」が見つかった現場付近で、仮設岸壁や仮設道路建設予定地に一部が重なる。
土器などが文化財だった場合、市教育委員会は一帯を遺跡に認定するよう求める方針だという。
市教委は10月13~16日と26~30日の間、碇石発見現場付近で、歩いて遺物の有無を確かめる踏査を実施した。その結果、干潮時の海辺で土器や石器が数点見つかった。現在は市教委が保管している。市は遺失物法に基づいて名護署に届けを出し、同時に米軍に公開許可申請を提出する。その後県教委が文化財保護法に基づいて、土器や石器を鑑査し、文化財と認められた場合、その一帯を遺跡と認定するかを検討する。
遺跡と認められた場合、工事の前に遺跡の規模を調べる試掘調査が必要となる。さらに、記録を残すための調査を実施する場合もある。市の担当者は「防衛局の工事の規模が分からない」と前置きし、「現在実施している調査すら本年度中で終わるとはとても思えない。(遺跡と認められた場合の)試掘調査はその後になる」との見通しを述べた。
シュワブ沿岸に土器 遺跡認定なら辺野古工事遅れ
沖縄は、考古学的にどのような位置づけにあるのだろうか?
琉球大学名誉教授で、噴火と地震に関する独自の理論の実績が注目されている木村政昭氏に、『邪馬台国は沖縄だった!―卑弥呼と海底遺跡の謎を解く』第三文明社(2010年5月)という著書がある。
邪馬台国位置論は、まさに汗牛充棟であるが、『魏志倭人伝』に描かれている倭の習俗は、どう考えても南方系である。
その頃の気候条件がどうだったかは別とすれば、九州はともかく、畿内とは思えないというのが率直な印象である。
決して突飛な議論ではない。
そもそも沖縄は、琉球弧と呼ばれる地理的条件にある。
琉球弧とは、日本列島西南端の九州島から南約1,260kmの洋上に199余の島々が花緑のように分布し、地理学上で「南西諸島」「琉球列島」などと総称される。現在の行政区分上では北半分の薩南諸島38島は鹿児島県に、南半分の琉球諸島161島は沖縄県に所属する。ちなみに南西諸島という呼称は明治時代中期以降の行政的名称で、それ以前は「南島」や「南海諸島」「西南諸島」と呼称されてきたが、ここでは広く地理学・地学的名称として、国際的に認知される「琉球弧」という名称を使用する。
琉球弧はユーラシア大陸東端の太平洋沿岸に、世界最強の「黒潮」(日本海流・暖流)の流路に沿って弧状に分布する島嶼群である。この地理的位置から先史時代以来多くの人々が琉球弧を往来し、「南西陸橋」「道の島」「海上の道」などと呼称されている。そして今日の「日本文化の基層」には、この琉球弧経由の文化要素が多く看取され、日本人・日本文化の源流を辿る時、この島嶼地域が重要な役割を果たした証左が解明されつつある。
琉球弧の考古学
沖縄(琉球弧)は日本の文化・文明の基層と深く関連している。
文化財保護の観点からも、辺野古移設は再考されるべきではなかろうか。
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