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2015年11月25日 (水)

高尾山遺跡保存の方向へ/やまとの謎(109)

古代史の分野には多くの謎が残されている。
それは私たちの好奇心を刺激するが、日本の国の成り立ちを正しく知ることは重要であろう。

私は、老後の楽しみに邪馬台国関連著書を集めていた。
しかしいざ老後を迎えると、発症やら地震やらの影響で、家族から蔵書の処分を迫られ、邪馬台国関連本は殆ど処分してしまった。
私自身の興味が、日本の建国問題(大化改新、白村江の戦い、壬申の乱等)に移ったことも大きい。
そこに邪馬台国と同時代かも知れないという古墳が沼津市で発見された。
発症前に発掘調査を見学し、貴重品とされた大量の朱や破鏡などが発掘されたと聞き、これは重要な古墳かもしれないと、思っていた(当時は辻畑古墳という名称)。
⇒2009年9月20日 (日):沼津市で最古級の古墳を発掘
⇒2009年9月21日 (月):沼津市で最古級の古墳を発掘(続)
⇒2009年10月25日 (日):朱の効能

その直後、長い入院とリハビリの間に、高尾山古墳のことなどすっかり忘れていたが、新聞報道で、道路建設のために取り壊す予算が市議会で可決されたということを知った。
「地方創生」と言われ、「地域の宝探し」が行われている時に、何ということだと思って、微力ながら反対運動に協力してきた。
⇒2015年6月17日 (水):高尾山古墳の主は卑弥弓呼か?/やまとの謎(103)
⇒2015年6月25日 (木):高尾山古墳が存亡の危機という非常事態/やまとの謎(104)

その後、反対運動の盛り上がりなどもあって、市長は協議会を設けて両立の方策を探るとしてきた。

前提方針 
協議会では、初めに前回に市側が実施を約束した沼津南一色線の交通量推計が報告され、一日二五、八〇〇台であるとされた。この推計は、道路を二車線にするか四車線にするかの判断基準として実施され、一万二千台以下なら二車線化も可能になるとされていた。しかし、推計値は基準値を大きく超えたため、二車線化による道路設計は否定されることになった。
続いて、古墳の現地での現状保存については、文化庁の禰宜田氏から「移築では史跡指定の対象とはならない」との意見が出され、古墳移築は検討対象から除外された。
代替案 
前回協議会で委員達が要望していた新たな道路設計の代替案について、市側から九案が提出された。
この九案を設計するに当たり、市側は「古墳北側部分の高く盛り上がっている墳丘部を壊さない」「道路用地取得のための建物再移転は可能な限り避ける」「追加の用地買収は最小限に抑える」などの原則を設定。
・・・・・・
一長一短 各案には、それぞれ利点と欠点がある。
四車線が一体的にS字力ーブで古墳を迂回する方式では、用地買収面積が広くなり、過去に移転に応じた建物が再移転を迫られる件数が最も多くなる。
T字交差点方式は、事業費用が約五億円と九案の中では最少レベルであるのに対し、交差点の追加により、スムーズな車両通行に影響が出る。
トンネル方式は、四車線をすべてトンネル化した場合、事業費として最低でも五十億円以上が必要となる。事業費の半分は国負担となるが、平均の年間道路事業費が約八億円である沼津市にとっては重大な負担となる。
・・・・・・
T字方式の利点 新たに交差点を設けることになるT字交差点による古墳迂回方式は、スムーズな車両走行の妨げになる可能性があると指摘されたが、新たな用地取得や事業費が比較的少なくなることから、委員達からも大きく注目された。
それに伴い矢野委員は、「自分は道路の専門家ではないが」と前置きした上で、交差点の設置により車両の走行速度が落ちることから、交通安全の面では有益であると指摘した。
都市計画の専門家である久保田委員は「T字方式は、道路の専門家が見ると『びっくりたまげた』案であろう」と述べて非常識的なアイデアだとする一方で、「しかし、この場合は可能性のある案だ。近くには国道一号との交差点があり、沼津南一色線の走行車両は、必ず国道一号で止まることになる。どうせ、すぐに止まるのだから、その手前で一時止まるようなことになっても、交通への影響は限られるのではないか」と話した。
国交省の神田氏は、信号機付きの交差点が設置されることは、児童の道路横断にとって都合が良いものであり、交通安全の観点からプラスになる、と意見を述べた。
今回の結論議長役の大橋委員は、各委員からの意見表明を受けた上で、①四車線を一体的にT字交差点方式で古墳西側を迂回させる案、②片側二車線を古墳西側地上でS字カーブさせ、残り二車線をトンネル化する案、③片側二車線を古墳西側地上をT字交差点方式で迂回させ残り二車線をトンネル化する案の三案が有力になるだろう、と述べた。
これに対し、神田氏は、古墳と神社を分断する東西迂回案については、市民の意見を反映した上で今後の検討対象として残すことを要望した。
この意見を踏まえ、大橋委員は市に対して協議会の第3回開催以前に、パブリックコメントなどの実施による市民意見の聴取を市側に要望した。
【沼朝平成27年11月20日(金)号】

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2015年11月19日第2回高尾山古墳・道路整備両立協議会画像資料

私もT字案がいいように思う。
何とか保存の方向性が見えてきたようで、保存を願ってきた者の1人として一安心である。

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