消費税への軽減税率導入の問題点/日本の針路(256)
2017年4月に、消費税の8%から10%へ増税される。
安倍政権は、2015年10月からに1年半先送りするとして、その是非を問いたいと解散総選挙に打って出た。
消費増税の先送りに反対の人は少ないので、総選挙で圧勝し、安保法の成立に向かった。
明らかに詐術であるが、騙された方が悪いという論法も成り立たないわけではない。
そういう人は、参院選で、騙された無念を晴らすことにしたらいい。
現時点では、消費増税の再延長は行わないとしているが、延長の理由だった「景気が10%増税に耐えられるほど十分回復していない」状況は、今でも変わっていない。
財務相は、酒を除く「飲食料品」への軽減税率に、国民全員に番号を割り振るマイナンバー制度を活用する案だという。
欧州などの軽減税率は、買い物時に対象品目に低い税率が適用される仕組みであるが、それとは異なり、たとえば消費者が1000円の飲食料品を買うと、一たんは10%の消費税を含む1100円を支払うが、そのうちの2%分(軽減後の税率を8%と仮定した場合)に当たる20円が後日還付される仕組みである。
1.消費者が飲食料品を買い物するたびに小売店にICチップを搭載したマイナンバーカードを提示する。
2.ICチップか、あるいは小売店の照合機を通じて還付金額などの買い物情報を記録して、確定申告か年末調整のときに還付金としてまとめて登録した金融機関に振り込む。
3.購入時にレシートなどでいくら還付されるかわかるようにする。
マイナンバーカード自体がさまざまな問題を抱えているというのに、直観的に「ムリ」だという気がする。
実際、マイナンバー制度を使った軽減税率の仕組みに、ネット上では以下のような声が高い。
「スーパーのレジでマイナンバーカードだしてポイントカードだしてクレジットカードを出すとか、わけわからない」
「どうせ面倒くさくなって誰もマイナンバーカード提示しないだろうし、財務省は税収が増えてウハウハだよ」
「こんな面倒くさいことやるくらいなら軽減税率やめようよ」
「これって、スーパーのレジが魚とトイレットペーパーを勝手に読み分けるん?」
「いっそT‐ポイントで納税できるようにしちゃえよ」
と、「還付手続きが面倒くさい」「レジが混乱するのでは」といった否定的な声が多い。
食料品の軽減税率、マイナンバーで還付 「手続きが面倒」「レジが混乱する」と否定的な声
軽減税率の対象となる飲食料品についても議論が多い。
自民党は税率が8%で済む食品について、最大でも食品表示法の基準で「生鮮食品」に分類されるものに限定するよう主張している。これなら税収減は三千四百億円で収まるためだ。
だが、区分が消費者からは分かりにくい品目もある。同じ刺し身でもマグロ一種類のパックは生鮮食品だが、マグロとハマチの盛りあわせは加工食品の分類となる。食品表示法の基準ではまぜることは「加工」とみなすためだ。生鮮食品は、水洗いや切断、冷凍された食品などに限定され、酢で漬けた「しめサバ」などは加工食品となる。だがスーパーでは刺し身と同じ売り場にあることが多く、消費者には分かりにくい。
軽減税率の対象を加工食品まで広げた上、生活必需品とは言い難い菓子やジュースを除く案もある。ただ、これも何を「菓子」とみなすかが分かりにくい。
加工食品は「めん・パン類」「菓子類」など二十五項目に分類されるが、どの項目に当てはまるのか不明確な食品も多いことが背景にある。一般にカレーパンは「パン類」、ドーナツは「菓子類」に分類されるが、カレードーナツはあいまい。くりきんとんやドライフルーツが菓子になるかも不明確で、業者ごとに分類が異なるのが実情だ。
このほか外食を対象に含めるかどうかでも線引きが難しくなる。外食を対象から外すと、コンビニやファストフード店で食品を買う場合、持ち帰りや出前のときは軽減税率が適用されるが、店内で食べると「外食扱い」となり、税率が異なる可能性が出てくる。
軽減税率の線引きで混乱も 刺し身マグロだけ→「生鮮」 盛りあわせ→「加工」
与党は軽減税率の議論を続けているが、そもそも消費税を上げる環境か?
内閣府が16日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)は2期連続マイナス成長であった。
日本経済の足踏みが長引いている。
アベノミクスの破綻ははっきりしている。
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