« 裁判員制度と統計的過誤/知的生産の方法(137) | トップページ | 日本古代史におけるパラダイム転換/やまとの謎(110) »

2015年11月29日 (日)

税構造と日本経済の停滞の原因/アベノミクスの危うさ(60)

安倍首相は、「文藝春秋2015年12月号」に『「一億総活躍」わが真意』と題する一文を寄稿し、次のように書いた。

客観的に数値を見れば、「日本はもう一度成長できるのだ」という確かな自信を我々日本人は取り戻すことができるのではないでしょうか。

しかし、内閣府が16日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)は2期連続マイナス成長となり、日本経済の足踏みが長引いていることを示している。
⇒2015年11月18日 (水):虚妄の景気回復シナリオ/アベノミクスの危うさ(59)
日本経済が思わしくないのは明らかだろう。

企業業績が最高益な割であるが、賃金や投資はあまり伸びていない。
それがGDPの壁になっている。
そんな状況の中で、安倍政権は、法人税の実効税率を1年前倒しして、2016年度から20%台に引き下げる方針だ。
その代わりに(?)、16年も15年の実績を上回る賃上げを企業に求め、設備投資についても、企業側に18年度までに10兆円の上積みを誓わせる、という。
本来、企業の裁量の範囲にまで口を出そうというのだ。
祖父・岸信介譲りの統制経済ということだろうか?

日本企業の利益は、13年度と14年度に急増し、税引き前で年60兆円を越えた。
リーマン・ショック前をはるかに上回り、15年度も増益が見込まれる。
にもかかわらず景況が良くない。
個人消費が伸びないからで、それは賃金が伸びないからである。
Photo
利益と賃金の好循環、知恵比べ促す市場

企業は利益から法人税など税金を納め、税引き後の利益は、配当や役員賞与に回り、それでも残った利益は内部留保(利益剰余金)となる。 
日本企業全体としてみると、13年度、14年度と配当や役員報酬は増えている。
しかしながら、それ以上に拡大しているのは内部留保である。
Photo_2
利益と賃金の好循環、知恵比べ促す市場

そんな時法人税を減税すれば、減税分だけ税引き後利益は増える。
政権が重視する賃金(人件費)は、利益を計上する前の段階の話である。
「売上高-コスト=利益」であるが、コストの中で大きな部分を占めているのが人件費である。 
円安のおかげで利益は伸びても、売上高が伸び悩んでいる現状では、どうしても賃金を増やすことに慎重になりやすい。
コストである賃金は、売上高との見合いで決まるものと考えるのが自然だからである。

内部留保をそのまま積み上げるだけでは、家計にお金が行き渡らない。
内部留保へ課税したらどうかという考え方もある。
私は、現時点では、消費税を上げるのをやめて、法人税、所得税を増税すべきだと考える。
日本の税の内訳は以下のようである。
Photo_3
国民をなめ切っている安倍政権の軽減税率論議

25年間に、所得税、法人税が激減して、消費税だけが突出して拡大している。
税の考え方は、大雑把に言えば、受益者負担と応能負担ということになる。
所得税や法人税は応能負担であり、消費税は受益者負担である。

消費税は逆進的である。
だからこそ軽減税率が問題になっているわけであるが、軽減税率の効果は小さい。
⇒2015年11月17日 (火):消費税への軽減税率導入の問題点/日本の針路(256)
⇒2015年11月19日 (木):軽減税率の効果は小さい/日本の針路(257)

与党が軽減税率の線引きで綱引きをするのが、目くらましに過ぎない。
本来、与党として取り組まなければならない課題は他にあるはずだ。
今の経済状況下で消費税を上げれば、日本経済の不振は低落の一途だろう。
不安定な非正規雇用を増やす政策をとり続ける安倍首相は、経済オンチと言うべきであろう。
「安保の次は経済」と思っても、「言うだけ番長」になるだけであろう。
⇒2015年10月17日 (土):「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ・続/アベノミクスの危うさ(55)
⇒2015年10月20日 (火):「新3本の矢」の意図するもの/アベノミクスの危うさ(56)

|

« 裁判員制度と統計的過誤/知的生産の方法(137) | トップページ | 日本古代史におけるパラダイム転換/やまとの謎(110) »

アベノミクスの危うさ」カテゴリの記事

ニュース」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/395349/62730102

この記事へのトラックバック一覧です: 税構造と日本経済の停滞の原因/アベノミクスの危うさ(60):

« 裁判員制度と統計的過誤/知的生産の方法(137) | トップページ | 日本古代史におけるパラダイム転換/やまとの謎(110) »