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2015年11月13日 (金)

安倍政権のイヤな感じ(7)放送番組への介入・続/日本の針路(254)

放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が、NHK番組「クローズアップ現代」の過剰演出問題をめぐり、意見書を出した。
⇒2015年11月 8日 (日):安倍政権のイヤな感じ(5)放送番組への介入/日本の針路(253)

自民党の「圧力」は、「報道ステーション」や古賀茂明氏個人に対して行われていたことが明らかになっている。
⇒2015年4月16日 (木):タガが外れた自民党の言論抑圧/日本の針路(138)

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BPOが自民党に「放送の自由と自律に対する政権党による圧力そのものであるから、厳しく非難されるべき」

「クローズアップ現代」に関するBPOの意見は、当然と言えよう。
しかし、意見書で批判された高市早苗総務相や安倍首相が、反省はおろか逆に意見書を批判している。

 高市氏は文書による厳重注意の根拠として、「報道は事実をまげないですること」とした放送法第4条などの規定を挙げている。この点について、意見書は「放送事業者が自らを律するための『倫理規範』であり、総務相が介入する根拠ではない」と主張。同法が保障する放送の「自律」を侵害した、としている。
 安倍晋三首相は10日の予算委で「単なる倫理規定ではなく法規であり、法規に違反しているのだから、担当官庁が法に則(のっと)って対応するのは当然」とBPOに反論した。
 さらに意見書が「政権党による圧力」とした自民党情報通信戦略調査会の事情聴取についても、「NHK予算を国会で承認する責任がある国会議員が、事実をまげているかどうか議論するのは至極当然だ」と語り、正当性を強調した。
 同調査会は11日に幹部会を開き、意見書についても議論する見通しだ。
首相、BPO意見書に反論「法規違反に対応は当然」

しかし、高市総務相や安倍首相は、放送法の趣旨を理解していないのだ。

まず高市早苗総務大臣が「クロ現」に関し文書でNHKに厳重注意をした件。これについて、BPOは「個々の番組の内容に介入する根拠がない」と指摘した。放送法は「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保する」という原則を定めている。これを誤解しているというのだ。

「放送の不偏不党」「真実」や「自律」は、放送局に課せられた義務ではない。この原則を守るよう求められているのは、政府などの公権力である。政府が放送に介入することを防ぐために「放送の不偏不党」を保障し、政府が「真実」を曲げるよう圧力をかけるのを封じるために「真実」を保障し、政府による規制や干渉を排除するために「自律」を保障しているのである。

ここは放送法の解釈に関する重要な部分である。公権力が番組に圧力をかけたり介入することがないよう保障しているのが放送法であり、放送倫理を業界が自主的に守るためのチェック機関としてBPOが存在する。高市総務大臣はこの点についてほとんど理解していないように思える。

では、自民党についてはどうか。番組に干渉する資格が自民党にはないのだと、下記のように述べている。
自民党情報通信戦略調査会がNHKの経営幹部を呼び、「クロ現」の番組について非公開の場で説明させるという事態も生じた。
しかし、放送法は、番組編成の自由を明確にし「放送番組は法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」と定めている。
「法律に定める権限」が自民党にないことは自明であり、自民党が、放送局を呼び説明を求める根拠として放送法の規定をあげていることは、法の解釈を誤ったものと言うほかない。
今回の事態は、放送の自由とこれを支える自律に対する政権党による圧力そのものであるから、厳しく非難されるべきである。

自民党には放送局の幹部を呼んで説明を求める権限は放送法上、まったくないという見解である。したがって、報道ステーションの古賀発言に関しても、同じように、幹部に説明させる権限はなく、単なる嫌がらせや圧力といったたぐいに過ぎないのだ。
「放送弾圧」に警鐘を鳴らしたBPOに、脅しをかけた自民党議員の正体

結局、高市総務相や安倍首相は、「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」(大西英男議員)などといって憚らない「文化芸術懇話会」のレベルと同じと言えよう。

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