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2015年11月18日 (水)

虚妄の景気回復シナリオ/アベノミクスの危うさ(59)

安倍首相は、9月24日、自民党総裁に再選するや、「アベノミクスは第二ステージへ移る」と宣言し、その実現の方策として、「新3本の矢」を掲げた。
⇒2015年10月17日 (土):「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ・続/アベノミクスの危うさ(55)
⇒2015年10月20日 (火):「新3本の矢」の意図するもの/アベノミクスの危うさ(56)

「新3本の矢」の当否はともかくとして、日本経済の現況について、大きな見誤りがあるようである。
「文藝春秋2015年12月号」に『「一億総活躍」わが真意』と題する一文を寄稿し、次のように自信たっぷりに書いている。

客観的に数値を見れば、「日本はもう一度成長できるのだ」という確かな自信を我々日本人は取り戻すことができるのではないでしょうか。

しかし、内閣府が16日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)は2期連続マイナス成長となり、日本経済の足踏みが長引いていることを示している。
けん引役と期待された設備投資が期待したように伸びていないし、個人消費や輸出の回復も力強さを欠いている。
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東京新聞11月17日

政府も民間エコノミストも4~6月期の落ち込みは一時的で、7~9月期はプラス成長に戻り、景気は緩やかに回復するとみていた。
中国やアジア経済の減速の度合いが想像以上で、企業が設備投資を先送りする動きが広がったことが大きいが、もともと楽観的状況認識に基づいた虚妄のシナリオだったのだ。

 日銀の9月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)によると、2015年度の大企業・全産業の設備投資計画は14年度比10.9%増と、6月調査(9.3%増)から上方修正された。企業収益は過去最高水準にあり、設備投資計画は依然強気だ。しかしGDPの設備投資は4~6月期の前期比1.2%減に続き7~9月期も1.3%減と2期連続のマイナスとなった。
 GDPの6割を占める個人消費は前期比0.5%増と、食料品などの値上げが相次いだ4~6月期(0.6%減)からの戻りは弱かった。GDPの実質雇用者報酬は前年同期比1.6%増と伸びているが、パートの増加が全体の報酬を押し上げている面がある。賃上げやボーナス増の広がりは乏しく、1人あたりの実質賃金は7~9月期で前年同期比0.3%増にとどまっている。
景気回復シナリオ誤算 7~9月GDP、2期連続マイナス 

1人あたりの実質賃金が伸びていないことが、トリクルダウンなどインチキであることを証明している。
GDPにはいろいろな要素がある。
Gdp
「GDP」とは?

2015年の1-3月期のGDPに関して、以下のように報じられていた。

2015年1〜3月の実質GDP速報値 前期比年率換算で+2.4%(FNN)
1~3月期GDP、年率2.4%増 設備投資プラスに(日経)
実質GDP、年率2.4%増 消費増税のダメージやわらぐ(テレビ朝日)
1~3月期のGDP、年2.4%増 2期連続のプラス成長(J-cast)

つまり年率2.4%の「成長」いうわけである。
しかし、下表を見てみよう。

Photo
したがって、8項目のうち、増える事が年間に渡り好景気要因だとみなせるのは
・民間最終消費支出
・民間住宅
・民間企業設備
・政府最終消費支出
・公的固定資本形成
・純輸出
の6項目です。(但し、輸入が減ったことにより、相対的に純輸出が増えた場合は違います)
これら6項目である、上図の青枠内の数値を足し合わた場合の寄与度の合計はたったの0.1%年換算で0.4%しかないということになります。
GDP成長率の誤解!アベノミクスを軸に見た直近5年の日本経済を振り返る。その⑤【終章】

統計データを恣意的(楽観的)に解釈しているから、実態と乖離してしまうのである。

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