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2015年10月14日 (水)

TPPの「大筋合意」は喜ぶべきことか/日本の針路(245)

米アトランタでの閣僚会合で4日間の延長の末、「大筋合意」に達したとされるTPP交渉。
そもそも「大筋合意」とはないか?
すでに今から2年前の2013年10月10日のニュースで次のように言われている。

Q 甘利氏が言う「大筋合意」に具体的な定義はあるの。 
A 「大筋合意」は日本の鶴岡公二首席交渉官が八月のTPPのブルネイ会合後に「十月のバリの首脳会合で大筋合意するため、必要な作業を加速する」と語ったころから使われるようになった。政府関係者が使う単なる「官僚用語」で、TPP交渉の中でも明確に定義されてはいない。今回、英語で出された首脳声明や付属文書にも「大筋合意」の意味に当たる言葉は出てこないんだ。 
Q 鶴岡氏は大筋合意という言葉をどうとらえているの。 
A 九月に自ら「年内妥結に向けた決着が見えてくること」と説明していたね。
Q では、インドネシア会合で年内妥結が見えたのかな。 
A 首脳声明には「年内に妥結するため、残された困難な課題の解決に取り組む」との方針を初めて明記した。日本の大江博首席交渉官代理は「十二月への『見晴らし』がよくなったので日本としては大筋合意と言える」と強調。日本は「年内妥結が見えた」という考えだ。
TPP「大筋合意」とは 英文に表記なし 日本だけの「官僚用語」

何のことはない。甘利氏は2年前から「大筋合意」と言っていたのだ。
眉にツバをつけて聞かなければなるまい。
以下のような解説がある。

「TPP大筋合意」とは、なんだったのか。いくら探しても実体がないのだ。
結論は、「大筋合意」とは、少なくとも、日本の外務省他が国民を洗脳するために創作した言葉である。それを、記者クラブが拡散したに過ぎない、ということ。
なにより、英語の原文と日本語の訳文を比較して自分で確認することが大切だ。
まず、米国の公式ホームページ。
最終交渉の結果を伝えている公式文書の見出しは
Summary of the Trans-Pacific Partnership Agreement
「TPP合意書についての要約」とだけ記してある。どこにも、「大筋合意」を意味する言葉はない。
この英文の要点だけを日本語に翻訳して、リリースしたものが以下。
(10月5日付けのUSTRプレスリリース及び10月6日付けのホワイトハウスのプレスリリース)
見出しは、「環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉参加国で大筋合意(USTR)」・・・
この見出しも、そうだが、本文の頭から2行目の最後に、「・・・当初予定の日程を大幅に延長して交渉を続け、10月5日TPPの大筋に合意しました。」とある。
しかし、英語の原文には、「大筋合意」などという表現は、どこにもない。
それに近いのが、上から5行目の、
We envision conclusion of this agreement
という文章。
「この協定の締結を構想します」といった意味に過ぎない。
envisionは、「思い描く」「心に抱く」という意味だから、ここでの使い方は、こんなふうになる。
この先、この協定が締結されるであろうことを、前もって思い描く」・・・こんな意味になる。
外務省のホームページでは、「大筋合意(USTR)」としているが、意訳どころか、こんな“飛訳”をして大丈夫なのか。
先走っている、というより、ニュアンスが全然が違う。
マレーシア「TPP、権益を守るため18年までの発効はない」

グローバル資本主義の典型とも思われるマレーシアであるが、現実の状況は以下のようであるという。

【クアラルンプール】
米国アトランタで開催された交渉で環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋合意に達したが、マレーシア通産省は向こう2年間はTPPの発効はないとの考えを明らかにした。
マレーシア通産省のレベッカ・ファティマ事務総長は、先の交渉で大筋合意に至った内容は国民に公表し、国会で審議をした上で費用便益分析が行われると指摘。
全ての交渉参加国がそれぞれの国で承認を経て批准に関する正式決定が行われるとし、長い道のりとなるとの考えを示した。
通産省は大筋合意に至った交渉内容を精査し、全てを国民に明らかにするという。また、実際にTPPに署名するかどうかは政府判断となる。
マレーシア「TPP、権益を守るため18年までの発効はない」

第一、主導する米国が「大筋合意」そのものを認めているかも怪しくなってきたというのだ。
8日行われたTPP阻止国民会議などによる現地報告会では次のような発言があった。

「日本と他国との認識にはどうもズレがあります。閣僚合同記者会見で〈大筋合意したのか?〉と問われた米国のフロマン通商代表はイエスともノーとも答えず、言葉を濁していたし、貿易協定が一変する重要な会合だったにもかかわらず、参加12カ国中の3カ国は代理出席。質疑は空回りしていました。安倍政権は来夏の参院選での争点化を避けるため、このタイミングでの形式にこだわってきた。『大筋合意することを合意した』というのが真相に近いのではないか」
眉ツバもののTPP「大筋合意」 日本だけが大ハシャギする理由

甘利担当相は得意満面だが、だいぶ様子が違うようだ。
TPP発効には正式な協定案への署名や各国議会での承認、さらに「参加6カ国以上でGDPの合計が85%以上を占めること」が条件とされる。
慌てずマレーシアに倣って、国民すべてに情報を公表し、さらに国会で審議した上で、果たして国益にどれだけ資するのか(費用便益分析)を精査すべきであろう。

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