マンション杭打ち不正事件/ブランド・企業論(39)
大手デベロッパーの三井不動産レジデンシャルが手がけた横浜市内のマンションが、杭打ちが適正でなかったため傾くという問題が起きた。
杭のデータを偽装した現場責任者は、2次下請けの旭化成建材の社員だった。
マンション建設には通常、何層もの下請け業者がかかわっている。
旭化成建材の親会社、旭化成の20日の記者会見。杭のデータ偽装や、杭が固い地盤(支持層)に十分届かなかった施工不良の背景に、工期やコストのプレッシャーがあったのではと問われ、平居正仁副社長はこう答えた。施工不良の杭8本は、3カ月の工期の終盤の2006年2月23~24日に施工されていた。
マンション建設は工程が細分化され、専門業者が多くかかわる。日本建設業連合会によると、工事を受注する元請けのゼネコンは全体の管理を担い、施工はしないのが一般的。杭打ちや基礎工事、柱や床を造る軀体(くたい)工事、内装工事など分野ごとに下請けに回す。内装なら下地や壁、クロス貼りに分けてさらに下請けに出される。今回の元請けの三井住友建設によると、少なくとも100社以上がかかわったという。
「現場は工期が最優先。下請けへのプレッシャーは常にある」。東海地方で大手業者のマンション建設や公共工事に長年携わる基礎工事技術者の50代の男性は明かす。
マンション建設、下請け多重 「偽装誘発」指摘も
杭工事を請け負った旭化成建材がこれ以外にも過去10年間に担当した物件は約3000棟に及ぶ。
この中にはマンションだけでなく、学校や発電所なども含まれているという。
今回の杭工事に採用した工法は旭化成建材の「ダイナウィング工法」と呼ばれるもの。掘削ロッドで地盤を掘削し、ロッドの先端で電流値の変化を測定しながら、支持層まで到達したら、セメントミルクを注入して土とかき混ぜ、杭を挿入して固定させる。
工事は8人体制で、内訳は旭化成建材の下請けから同社へ出向した現場代理人1人と3次下請け会社のオペレーターなど7人という構成だ。現場代理人には22時間以上に及ぶヒアリングを実施したが、紛失によるデータの転用は認めたものの、杭未達の事実を隠蔽する意図は否定したという。
三井不動産&旭化成のマンション傾斜・偽装問題 全国3000棟に波紋広がる
マンション傾斜が表面化する直前、旭化成のブランド価値は高いものだった。
9月10日、関東・東北での集中豪雨で茨城県の鬼怒川の堤防が決壊。街が濁流に飲み込まれた水害被害を伝えるテレビのニュースで繰り返し流れた映像がある。
濁流に流される2軒の家が白い家にぶつかる形で停止。家や車を押し流し渦巻く激流にも、この白い家はびくともしない。その後、ヘリコプターによって屋根や近くの電柱に捕まりながら避難していた住民や犬が無事救助された。
放送後にはネットユーザーらがグーグルマップなどを使い、この白い家がヘーベルハウスであることを特定。自然発生的にハウスメーカーの旭化成を称賛する書き込みが続き、ツイッターでは一時、急上昇ワードの上位にランクインするほどの盛り上がりを見せた。
「基礎から時間をかけてしっかりと作るのがヘーベルハウスの特徴。だからこそ危機的な状況でもその強みが発揮できたと思う」。平居副社長は当時、こう胸を張っていた。
絶賛から罵倒へ、地に堕ちた「旭化成ブランド」
傾いていることが分かったのは、全4棟の中で西側に位置する11階建てのマンションで、建物を支える杭52本のうち、8本に不具合が見つかった。
6本の杭は「支持層」の地盤に届いておらず、残る2本は支持層へ到達していたが、深さが不十分だったとみられている。
問題となっているのは、杭の深度不足だけではない。傾きが判明したマンションを含む3棟で、地盤に固定するために杭の先端に流し込むセメント量のデータも改ざんしていたことが判明。セメント量が足りなければ、杭を固定する十分な強度を保てない可能性がある。重複を除くと、何らかの形でデータの転用や加筆があった杭は計70本に上っている。
絶賛から罵倒へ、地に堕ちた「旭化成ブランド」
マンションは個人が一生のうちで購入するものの中では、最高額に位置する。
ブランドが信用できないとすれば、何を信ずれば良いのだろうか?
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