鬼怒川決壊と洪水対策/日本の針路(237)
10月2日の東京新聞の特報面に、鬼怒川決壊に関する興味深い記事が掲載されていた。
国交省がダムやスーパー堤防にばかり偏った予算配分をしていたため、喫緊の課題であるはずの堤防強化がおろそかにされていたのではないか、という内容である。
民主党政権時代に「コンクリートから人へ」というスローガンで事業仕分けが行われた。
それを以って、「スーパー堤防予算を削ったことが鬼怒川決壊の原因」などということが言われている。
鬼怒川水系の上流には、川俣ダム、川治ダム、五十里ダム、湯西川ダムの四つのダムがある。
関東地方整備局は決壊の1日前から、下流の水位上昇を抑えるために放流調整の対策を取っていた。
しかし、雨は下流にも降り続いたため、決壊は防げなかった。
市民団体「水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之共同代表は「ダムは上流からの水は受け止めれるが 下流の雨には無力。ダムで洪水の防ぐのには限界がある。それなのに、国は膨大な予算をかけてダムの 整備を続けている」と批判する。
http://fox.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1443747398/l50
嶋津暉之氏は、水需要予測を実態に即して行い、旧建設省や旧国土庁などが行っていた過大な水需要予測を行ってきた人である。
水需要予測は、水資源開発のための基礎となるものであるが、それが過大ということになると、ダム開発等の正当性が揺らぐことになる。
そのため島津氏は、これらの官庁からは、天敵のように嫌われていたように思う。
しかし、役所の中にも志を持つ人がいて、島津氏の業績を高く評価していた。
スーパー堤防とは堤防の幅が極端に広い堤防であり、完成すれば、確かに洪水には強くなる。
スーパー堤防事業
しかし完成までに数百年という法外な予算と年月を要することから、喫緊の対策としては役に立たない。
堤防の補強が進まない理由について担当者は「予算が限られているので….」 と言葉を濁すが、スーパー堤防の建設は進められている。
限られた予算の枠の中で、どう優先順位をつけるかが問われている。
また、河道の対策だけでは限界があると考えられる。
⇒2015年9月17日 (木):鬼怒川氾濫と流域水管理の思想/技術論と文明論(33)
⇒2015年9月11日 (金):東日本豪雨による鬼怒川決壊と自然堤防の掘削/因果関係論(26)
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