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2015年10月15日 (木)

国会議事録は与党判断で修正可能か?/日本の針路(246)

安保法を採決した参院特別委の様子はTVでも放映されたから、様子は分かる。
鴻池委員長を与党議員が取り囲んで、議場に声が届かないことは明らかであった。
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安保法案、参院特別委で可決 採決強行、総括質疑無く

この採決の議事録が問題になっている。

憲法58条2項は、「両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め」ると規定します。
この規定を受けて制定された参議院規則第6節の部分は、「表決」に関して規定しています。
今回の件で関係しそうなところをみてゆくと、まず、第136条は、「議長は、表決を採ろうとするときは、表決に付する問題を宣告する。」とします。
そして、第137条前段は、「議長は、表決を採ろうとするときは、問題を可とする者を起立させ、その起立者の多少を認定して、その可否の結果を宣告する。」と規定しています。
さらに、第141条は、「投票が終つたときは、議長は、その結果を宣告する。」と規定しています。
今回の安保関連法案の参院特別委員会での採決の場面のYouTubeの動画や写真などをみると、委員長を駆け寄った多数の与党議員が取り囲み人の壁を作り、そのなかで委員長が何か発言をしたらしいですが、委員長がなにを発言したのか判然としません。会議録(参議院規則156条)においても「議場騒然、録収不能」となっています。
この与党の行為は、少なくとも人垣の壁を作っている与党議員の外にいる与野党の議員には委員長の声が届いていない(「議決を採る」との「意思表示」(民法93条以下)が外部の与野党の議員達に届いていない)と思われるので、参議院規則136条が要求する「議長は、表決を採ろうとするときは、表決に付する問題を宣告する。」を行っていたとはいえません。
同様に、参議院規則137条が要求する、①「可とする者を起立させ」という行為と、②「その起立者の多少を認定」という行為、そして③「その可否の結果を宣告する」という3つの行為があったともみられません。
さらに同様に、参議院規則第141条が要求する「投票が終つたときは、議長は、その結果を宣告する。」という行為も行われていません。
安保関連法案の参議院特別委員会での「強行採決」は有効なのか?

ところが「議場騒然、録収不能」のはずの議事録に、「安保法を可決すべきものと決定した」との文言が付け加えられているという。
Photo_2
安保法「聴取不能」の議事録 与党判断で「可決」追記


可決の有無が問われるような事態は、憲政史上の汚点として記録されることになろう。

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