素粒子論の発展と日本人(1)/知的生産の方法(130)
02015年のノーベル物理学賞は梶田隆章・東京大宇宙線研究所長らが受賞した。
梶田氏は素粒子のニュートリノに質量があることを、観測装置「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)を使って実証した業績である。
⇒2015年10月 7日 (水):祝祝・梶田隆章氏のノーベル賞受賞/日本の針路(240)
梶田氏の受賞には日本の素粒子論の豊かな土壌が寄与している。
素粒子論研究を素人なりにレビューしてみよう。
日常の生活で我々のまわりにあるものを含め、宇宙に存在するすべての物質は、分子や原子などから出来ている。
また、原子は、その中心にある原子核とそのまわりをまわる電子たちから構成され、さらに、原子核は複数個の陽子や中性子から形成されている。
一般に、物質を構成する最も基本的な粒子を素粒子と呼んでおり、原子核の内部構成が判ったばかりの頃は、電子と陽子と中性子が素粒子だと考えられていた。
古代ギリシャ以来、物質の最小単位をアトム(atom:原子)と呼んできた。
原子という概念は紀元前5世紀ギリシャのデモクリトスによって考案されたといわれている。彼は原子をこれ以上分割することのできないもの「アトム」と定義し、真空と原子がさまざまな配列をとることで種々の物質の性質が生まれると考えた。
実験に裏付けられる理論とは異なるが、万物の成り立ちを神ではなく自然そのものによって説明しようとした最初の試みであった。
この「アトム」の考え方はローマの詩人ルクチウス(BC95-55)の「ものの本性」という長い詩に紹介され、古代ギリシャやローマの人々に影響を与えた。
中世ヨーロッパは錬金術の時代であった。卑金属を貴金属(金)に変えることを目的とする研究が盛んに行われており、古代ギリシャの科学的な考え方が途絶えてしまった時代でもあった。しかし1450年グーテンベルグが印刷術を発明したとき、最初に印刷された本の一つがこのルクチウスの「ものの本性」であった。「アトム」の考え方は、「元素や原子は実在である」とする高名なイギリスの物理学者ローバト・ボイル(1627ー1691)などに引き継がれ、近代の科学に大きな影響を及ぼすことになる。
http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0200a/contents/10101.html
原子論は、19世紀初頭、イギリスのジョン・ドルトンによって新たな展開をみた。
『質量保存則(1774年ラボアジェ)』、『定比例の法則(1799年プルースト)』、『倍数比例の法則(1802年ドルトン)』といった実験事実に裏打ちされものである。
さらに、1811年、イタリアのアメデオ・アボガドロによって、原子は単独で存在しているのではなく、いくつかの原子が固まって存在しているという『分子説』が提唱された。
近代科学の誕生である。
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