「積極的平和主義」と難民問題/日本の針路(238)
シリア難民の問題が重大な局面を迎えている。
シリアの国内情勢は複雑怪奇というべき状況であり、中途半端な発言は慎むべきであろう。
東京新聞10月1日
シリア問題の解決のためには、国際社会の享禄が必要であるが、米ロの思惑の差異がこれを阻んでいる。
米国のオバマ大統領とロシアのプーチン大統領が、国連総会にあわせシリア情勢について話し合ったが、シリアのアサド大統領の退陣を求める米国と、政権を支援するロシアでは共同歩調をとるのが事実上難しい。
ロシアはIS掃討のため、アサド政権に協力するとして、9月30日に空爆を開始した。
標的を過激派組織「イスラム国」(IS)に限定すると説明していたが、10月1日、シリア領内で過激派組織「イスラム国」(IS)以外の過激派の拠点を空爆した。
アサド政権の延命のため、米国が支援する反体制派を攻撃している可能性もあるとされる。
オバマ大統領は演説でアサド大統領の退陣を改めて求め、プーチン大統領との会談でも「アサド政権が残る限りシリアの安定はない」と伝えたという。
米軍はイラク領内に続き、昨年9月からシリア領内のISに空爆を始めた。
ISと戦う反政府勢力への軍事訓練も実施しているが、ISの勢いは衰えていないのが現状だ。
「積極的平和主義」を旗幟とする日本政府はどう対応するのか?
語感からすれば人道的な措置に全力を尽くすように受け取られよう。
安倍晋三首相は29日午後(日本時間30日未明)、米ニューヨークで開かれている国連総会で一般討論演説に臨んだ。中東・北アフリカから欧州へ難民や移民が大量に流入していることを受け、約8・1億ドル(約960億円)の支援を表明。教育や医療といった「人間の安全保障」で国際社会に貢献する姿勢を強調し、安全保障理事会の常任理事国入りに強い意欲を示した。
安倍首相、国連一般討論演説 シリア難民対策に8・1億ドル支援表明 常任理事国入りに強い意欲
一般演説の後で、海外通信社ロイターの記者が、「シリア難民問題への追加の経済的支援を表明したが、難民の一部を日本に受け入れることは考えていないか?」と質問した。
「そして今回の難民に対する対応の問題であります。これはまさに国際社会で連携して取り組まなければならない課題であろうと思います。人口問題として申し上げれば、我々は移民を受け入れる前に、女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手があるということでもあります。同時に、この難民の問題においては、日本は日本としての責任を果たしていきたいと考えております。それはまさに難民を生み出す土壌そのものを変えていくために、日本としては貢献をしていきたいと考えております」
ロイター通信は会見の内容を「安倍首相、シリア難民受け入れより国内問題解決が先」とのタイトルで報じた。
安倍首相「難民受け入れは?」と問われ「女性の活躍、高齢者の活躍が先」
この発言をどう考えるか?
前後の文脈等を考慮しなければならないが、質問と答えがチグハグな印象であることは否めない。
昨年は5000人にのぼった難民申請に対して、11人しか難民と認定されていないことなどを紹介しつつ、「首相は演説の最後を、「積極的平和主義」を掲げ、国連の安全保障理事会を改革し、常任理事国として貢献していきたいと締めくくった。その意欲に比べ、発信したメッセージは内向きでさびしい」(毎日新聞)などと印象を伝えています。
しかし日本として考えた時の大きな問題は、安保理の常任理事国入りをめざして積極的に国際貢献を果たしていくと宣言する一方で、国際メディアからは「日本の首相は難民よりも国内が先だと語った」と報じられてしまうことをどう考えれば良いのか、ということです。
難民支援の実績を台無しにした安倍首相の「あの」一言
安倍首相の「積極的平和主義」というのは、国連常任理事国になって武力により紛争を解決しようということが分かる。
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