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2015年10月

2015年10月31日 (土)

辺野古埋め立て工事強行/日本の針路(249)

政府は29日朝、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とする同県名護市辺野古の沿岸部で、埋め立ての本体工事に着手した。
埋め立て予定地に隣接する米軍キャンプ・シュワブ内で作業場の整備工事を始め、中断していたボーリング調査も再開した。
これが粛々と工事を進めるということであろうか。
⇒2015年3月24日 (火):辺野古をめぐり厳しく対峙する沖縄県と政府/日本の針路(126)
法的瑕疵がないことは、積極的に進めるべきだということであろうか。

翁長知事は、国連で沖縄の立場を訴えた。
⇒2015年9月22日 (火):翁長知事が国連人権理事会で演説/日本の針路(234)
一自治体の長が国連で演説するのは筋違いという批判もあったが、私は沖縄の置かれている状況からして止むに止まれずの行動だったのだろうと思う。

 沖縄県側にとって、代執行は不意打ちだった。政府が踏み切るタイミングについて、県側は、本体工事が進む中で現実の地形と設計の食い違いを是正する「設計変更手続き」を翁長氏が認めなかった場合だと想定していた。県幹部は「一時執行停止と同時とは……」と漏らす。
 一方の政府は、一連の動きを周到に計算していた。26日には辺野古周辺の3地区に対し、県や名護市の頭越しに直接財政支援する方針を表明。翌27日、翁長氏による埋め立て承認の取り消しを石井啓一国土交通相が一時執行停止すると決定した上、翁長氏が取り消しを撤回するよう求める代執行手続きを閣議了解した。
辺野古移設:政府に勝訴の自信「沖縄の負担軽減」とは何か

政府と沖縄の対立は、司法の手に委ねられるだろう。
両者の言い分は、もはや修復不能と思われる。
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東京新聞10月14日

政府のやり方は余りに強権的ではないだろうか。
直近の選挙で示されている民意を考慮すべきではないのか。

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2015年10月30日 (金)

素粒子論の発展と日本人(5)/知的生産の方法(134)

自然には階層性がある。
身の回りの物質の基本単位は原子や分子であるが、分子量の大きなタンパク質になると生物の構成要素として重要な位置を占めるようになる。

大きさのスケールとして、下図のようなものを考えることができる。
Photo
http://www.kodenjiki.com/wp/?m=201404

「自然界の4つの力」というサイトに、この極小から極大の世界までに働いている力の説明がある。
1.万有引力
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作用をおよぼす距離は無限大。

2.電磁力
1943
電気を帯びた粒子にはたらく力。原子核と電子を結びつける力。作用をおよぼす距離は無限大。

3.弱い力
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中性子の自然崩壊(ベータ崩壊)を引き起こす力。作用をおよぼす距離は10cmの1/1億のさらに1/1億。

4.強い力
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クォークを結びつける力。中性子や陽子として、あるいは原子核として安定させる力としてはたらく。作用をおよぼす距離は10cmの1/1億分のさらに1/10万。

素粒子論では、粒子の交換によって力が伝わると考える。
いささか分かりづらいが、以下のような説明があった。

粒子を交換するとどうして力が伝わるのか?
もの凄く荒っぽい比喩ですが、これを水の上に浮かぶ2艘のボートの上でキャッチボールをする、という例えを使った説明があります。
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引力の場合はブーメランのやり取りとして考えます。
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http://blogs.yahoo.co.jp/lidoloyabun555/31532145.html

分かったようで分からないが、とりあえずそういうことにしておこう。

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2015年10月29日 (木)

素粒子論の発展と日本人(4)/知的生産の方法(133)

素粒子論は、日本人初のノーベル賞受賞者・湯川秀樹博士以来、日本人の貢献が目立って大きな分野である。
10月23日付の日本経済新聞に、「ノーベル賞の傾向と対策」とでも言うべき記事が載っている。
2000年以降に限れば、自然科学3分野での日本人受賞者数は、米国に次ぐ多さである。
Ws000000

東大准教授の岡本拓司さんは、「湯川さんに励まされて科学を志した人たちが成果を挙げるようになった」と解説している。
湯川博士の業績を振り返ってみよう。

原子は、原子核とその周りを取り巻く電子とでできている。
Photo

その原子核は正電荷を帯びた陽子と電荷のない中性子が堅く結合したもので、陽子、中性子、電子などは、物質を構成している最小の粒子と思われ、素粒子と呼ばれる(た)。
1930年代では、素粒子はこれら3種と中性微子(ニュートリーノ)だけが知られていたが、現在では数百種の素粒子が発見されている。

原子核の研究が進み、原子核の構造と性質が次第に明らかになっていくと、一つの大きな謎が浮かび上がってきた。
それは原子核を結合している力「核力」である。
陽子は互いに電気反発力が働くから、その反発力よりも遥かに強い力で結合しないと、安定な原子核はできない。
ところが、どのようにして強い核力が生ずるのか、その当時は全く謎だった。
その核力の謎を解きあかしたのが湯川中間子である。

陽子と中性子は、電気のあるなしの違いがあるものの、それ以外ではよく似た性質を持っている。
素粒子間の力は、素粒子の間で粒子を交換することにより生ずることがわかっていた。
すなわち「場の量子論」である。
例えば、陽子と電子の間に働く電気力は、光子(光の粒子)を互いに交換することにより生じる。

したがって、核力も陽子や中性子が互いに何か粒子をやり取りしているのだろうと予想されたが、その媒介となるものが当時知られていた素粒子の中にはなかった。
湯川博士は、核力のもとは「中間子」というまだ未知の素粒子を媒介にして生ずるというアイデアを得て、核力の働く距離は原子核の大きさ程度のごく短い距離なので、その未知の粒子の質量は電子の約200倍であることを理論的に予想した。
そして質量が電子と陽子・中性子の中間なので「中間子」と名付けたのである。
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湯川理論の正しさを検証するには、予言した「中間子」の存在を実験で確かめる必要がある。
1937年にアンダーソンとネッダーマイヤーが、その宇宙線現象の中に質量が電子の約200倍の新粒子を発見した。
湯川理論は世界中から注目されたが、その中間子は強い核力を生むことはできないことが明らかになり、湯川理論は暗唱に乗り上げた。
しかし、1942年に、宇宙線の衝突でまずパイ中間子ができ、それがすぐに崩壊して軽いミュー中間子ができるという坂田-井上の2中間子論が提出された。
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http://www.sci-museum.kita.osaka.jp/~saito/contribution/yukawa.htm

宇宙線で発見された中間子は、子どものミュー中間子であり、核力の中間子は親のパイ中間子だという理論である。
その後、二種類の中間子が発見され、核力はパイ中間子を媒介にして生ずることが確認された。

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2015年10月28日 (水)

素粒子論の発展と日本人(3)/知的生産の方法(132)

1897年、ジョセフ・トムソンによって電子が発見された。
真空中でフイラメントを加熱すると陰極線が出ることが知られていたが、その正体は何なのか分からなかった。

陰極線の正体をめぐってはエネルギーが振動している(波動説 干渉縞を検出できる)と考える説と、ある小さな粒子が飛び出している(粒子説 電界や磁界で進行方向の変化が検出できる)と考える説があった。
電波の実験で有名なドイツのヘルツは進行方向の変化が測定できないことから、波動説に傾いていた。
トムソンは電荷を持った粒子であれば、粒子の進行方向に直角な電界をかけると進行方向が変化するはずであり、その変化を測定できれば粒子説が証明できると考えた。

トムソンは進行方向の変化が測定できない理由は真空管内の真空度が低く、電荷を帯びた粒子が真空管内の他の物質と衝突して散乱してしまうためだと考えた。
そこで真空度を上げるため、真空ポンプの開発やデュワーによる残留気体除去法の開発、タウンゼントの荷電粒子の測定方法の開発、ウイルソンの霧箱の開発等の努力によってついに実験に成功したのだった。
Tomson
http://www.geocities.jp/hiroyuki0620785/k0dennsikotai/14discaver.htm

その粒子は水素原子の千分の1以下の質量を持ち、負に帯電していて、どんな物質からも出てくることを確認した。
これまで物質界で最小の基本粒子と見なされてきた原子よりも小さな粒子の存在を確認したのであり、原子論は終止符を打たれたのである。

トムソンの実験により、原子は負の電荷をもつ「電子」と、それを打ち消す正の電荷をもつ「何か」から成ることが明らかになった。
その「何か」をめぐって、さまざまな原子構造の提案がなされた。

具体的には、プラスの電荷を持った重い原子核の周りをマイナスの電荷を持った軽い電子が運動しているというちょうど太陽と惑星のような模型がラザフォードによって提唱され、実験ともうまく合致することが分かった。
しかしこのモデルは「加速度運動をする粒子(電子)は電磁波を出しながらエネルギーを失っていくが、なぜ電子は原子核に落ちて行かないのか?」という疑問に答えることはできなかった。
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http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0030/part2/chap01/com1_7_1.html

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2015年10月27日 (火)

素粒子論の発展と日本人(2)/知的生産の方法(131)

原子が物質の最小単位であるという考え方は、ドルトンによって装いを変えたが、それでは説明が難しい現象が出てきた。
18世紀後半から19世紀前半にかけて化学の発展に伴い元素が数多く発見され、1789年にアントワーヌ・ラヴォアジエが作成したリストでは33個の元素が記載された。
1830年までにその数は55種まで増え、それとともに化学者の中には漠然とした不安が持ち上がっていた。
元素は一体何種類あるのか、そしてこの増えるばかりの元素には何かしらの法則性が隠されていないのだろうかという疑念である。

ドイツのアウグスト・ケクレは、原子量や分子量などの概念が固まっていないことを問題視し、1860年にカールスルーエで「元素の質量測定」を命題とした史上初の国際化学者会議を開催した。
この会議に出席したロシアメンデレーエフは、1869年に化学の教科書を執筆していた際、当時63個まで発見数が増えていた元素を説明する方法に悩んでいた。
彼は好きなカードゲームから発案し、元素名を書き込んだカードを何度も原子量順に並べ替えることを繰り返す内にひとつの表を作り上げた。
それは原子価を重視し、かつ適切に当てはまる元素が無い箇所は「エカホウ素」「エカアルミニウム」「エカケイ素」(「エカ」はサンスクリット語で「1」の意味)など仮の名をつけた空白とする工夫を施したものだった。
この表は1870年にドイツの科学雑誌で発表された当初この表に価値を認める学者はほとんどいなかった。

しかし、マイヤーはこれに注目し、原子容の考え方を加えた論文を発表した。
彼は原子量順の原子容を調べたところ、リチウム・ナトリウム・カリウムと並ぶアルカリ金属族に該当する元素は原子容が前後と飛びぬけて高いことを示した。
メンデレーエフはマイヤーの論文も参照し、改良を加えた周期表(第二周期表)を作成した。
これにはローマ数字IからVIIIで縦の分類が施され、うちI–VIIが基本的に1–2族および13–17族に対応し、VIIIには遷移元素群を入れ、また希ガスは反映されていなかった。
それぞれには2種類の亜族を設け、表の左右に振り分けて区分した。

メンデレーエフの周期表はすぐに認められたわけではなかったが、1875年にフランスのポール・ボアボードランが新元素ガリウムを発見し、これが「エカアルミニウム」と一致することが判明すると周期表が注目を浴びるようになった。
その後も1879年のスカンジウム(「エカホウ素」)、1886年のゲルマニウム(「エカケイ素」)がメンデレーエフの表にある空白を埋めるものだということが判明し、彼の周期表の正しさが証明された。

帰納的に見出された周期律表が演繹力を持つことが、科学の方法の典型であると言えよう。
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Wikipedia

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2015年10月26日 (月)

素粒子論の発展と日本人(1)/知的生産の方法(130)

02015年のノーベル物理学賞は梶田隆章・東京大宇宙線研究所長らが受賞した。
梶田氏は素粒子のニュートリノに質量があることを、観測装置「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)を使って実証した業績である。
⇒2015年10月 7日 (水):祝祝・梶田隆章氏のノーベル賞受賞/日本の針路(240)

梶田氏の受賞には日本の素粒子論の豊かな土壌が寄与している。
素粒子論研究を素人なりにレビューしてみよう。

日常の生活で我々のまわりにあるものを含め、宇宙に存在するすべての物質は、分子や原子などから出来ている。
また、原子は、その中心にある原子核とそのまわりをまわる電子たちから構成され、さらに、原子核は複数個の陽子や中性子から形成されている。
一般に、物質を構成する最も基本的な粒子を素粒子と呼んでおり、原子核の内部構成が判ったばかりの頃は、電子と陽子と中性子が素粒子だと考えられていた。

古代ギリシャ以来、物質の最小単位をアトム(atom:原子)と呼んできた。

Photo_2原子という概念は紀元前5世紀ギリシャのデモクリトスによって考案されたといわれている。彼は原子をこれ以上分割することのできないもの「アトム」と定義し、真空と原子がさまざまな配列をとることで種々の物質の性質が生まれると考えた。
実験に裏付けられる理論とは異なるが、万物の成り立ちを神ではなく自然そのものによって説明しようとした最初の試みであった。
この「アトム」の考え方はローマの詩人ルクチウス(BC95-55)の「ものの本性」という長い詩に紹介され、古代ギリシャやローマの人々に影響を与えた。
中世ヨーロッパは錬金術の時代であった。卑金属を貴金属(金)に変えることを目的とする研究が盛んに行われており、古代ギリシャの科学的な考え方が途絶えてしまった時代でもあった。しかし1450年グーテンベルグが印刷術を発明したとき、最初に印刷された本の一つがこのルクチウスの「ものの本性」であった。「アトム」の考え方は、「元素や原子は実在である」とする高名なイギリスの物理学者ローバト・ボイル(1627ー1691)などに引き継がれ、近代の科学に大きな影響を及ぼすことになる。
http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0200a/contents/10101.html

Photo_3原子論は、19世紀初頭、イギリスのジョン・ドルトンによって新たな展開をみた。
『質量保存則(1774年ラボアジェ)』、『定比例の法則(1799年プルースト)』、『倍数比例の法則(1802年ドルトン)』といった実験事実に裏打ちされものである。
さらに、1811年、イタリアのアメデオ・アボガドロによって、原子は単独で存在しているのではなく、いくつかの原子が固まって存在しているという『分子説』が提唱された。

近代科学の誕生である。

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安倍政権のイヤな感じ(2)無神経と過剰反応/日本の針路(248)

シリア難民問題は、国際社会が直面している課題である。
その難民を嘲笑するかのような画像がフェイスブックに投稿された。
既に削除されているが、以下のようなものだ。
Photo
⇒2015年10月12日 (月):難民問題にどう対処するのか?/世界史の動向(36)

「そうだ 難民しよう!」というコピーは、JR東海の「そうだ京都、行こう」から思いついたものだろう。
パクリと言うかパロディと言うかは別として、何ともイヤな感じである。
描いているのは、フェイスブック上のグループ「安倍総理を支える会」の中心メンバーの漫画家という漫画家である。

 「安全保障関連法に反対する学者の会」が学生団体「SEALDs(シールズ)」との共催で計画したシンポジウムについて、立教大学が「純粋な学術内容ではない」などの理由で不許可にした。

 関係者によると、学者の会は9月末、立教大の教職員や学生の有志で作る「安全保障関連法に反対する立教人の会」を通じ、同大での開催を打診。学術シンポジウムとして、1千人以上が入れる講堂の使用を10月2日に申請した。
 これに対し立教大総長室は9日、不許可の決定を伝えた。広報課は「学外団体には施設を貸さないのが原則」と説明。学内では「学外の宗教、学術、教育、芸術その他学校が適当と認めた会合に限り許可する」との決まりがあるといい、「学会やそれに準ずる団体とはいえず、会合も純粋な学術内容ではないと判断した」としている。
 「立教人の会」関係者によると、大学側から「会合には学術的側面もあるが、主催団体の活動からみて政治的意味も持ちうる」との指摘も受けたという。主催団体の関係者は「『政治的』との理由で不許可にしたなら、学問の自由を侵すことになりかねない」と指摘。広報課は「そのような発言があったかは確認できない」としたうえで、「基本的にそれだけで判断することはない」としている。
安保法シンポ、立教大が会場許可せず 学者の会が計画

立教大学のように、政権批判の政治的な言動に過剰にナーバスになっている。
安倍政権の露骨な報道干渉により日本のメディアが萎縮していることは既に公然化した事実だろう。
⇒2015年5月 7日 (木):報道の自由と外国特派員協会/日本の針路(147)

国際的には人種差別として批判されているというが、国内のメディアでは余り問題視されていない。
一方で、こういう問題を報道しないのは、明らかに委縮しているメディアの現状を表すものだろう。

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2015年10月25日 (日)

安倍政権のイヤな感じ(1)国会開かず/日本の針路(247)

安倍政権は、臨時国会を開かないつもりらしい。
憲法53条は次のように定めている。

内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

テレ朝は次のように解説している。

 野党は21日午前、125人の署名を添えて「臨時国会召集要求書」を提出しました。もし、応じなければ「安保法制に続いて憲法をないがしろにすることになる」と牽制(けんせい)しています。しかし、政府・与党の消極的な姿勢は変わりません。
 菅官房長官:「総理の外交日程を優先をせざるを得ないという事情や年末の予算編成を行う必要など(がある)」
 21日朝の与党幹部の会合でも、国会は開かずにTPP(環太平洋経済連携協定)などの審議のため、予算や農水などの委員会だけを行うことで野党と調整していくことを確認しました。政府としては、年明けに通常国会を召集することから、臨時国会を開かなかったとしても憲法違反にはあたらないと考えています。代わりに通常国会を年明け早々に召集する方向で検討しています。
憲法53条で「臨時国会開け」 政府側消極的、なぜ?

現実に国会開催中に外訪しているのだから説得力があるとは言えないだろう。
産経新聞は次のように報じている。

 自民党が野党時代の平成24年に発表した憲法改正草案では、現行の憲法53条について、衆参両院のいずれかの4分の1以上から要求があれば「20日以内に臨時国会が召集されなければならない」と明記している。民主党の岡田克也代表は22日の記者会見で、この点を挙げて「自ら主張している通り、召集するのは当然だ」と批判した。
 ただ、民主党がこれまで、期日が定められていない憲法53条の改正を主体的に訴えてきたとはいえない。そもそも党内に護憲派と改憲派が同居する事情も手伝い、憲法論議に後ろ向きな一方、激しい党内議論を経て批判覚悟で現行憲法の問題点を世に問うた他党を糾弾する無責任さを改めて露呈した形だ。
民主、臨時国会要求でまた“ブーメラン” 自民改憲草案「20日以内召集」 

まあ多くの国民が政権交代した民主党政権にガッカリして、その結果が安倍独裁政権おとであるから、というから安倍応援団の産経新聞が鬼の首を取ったように報じるのは分かる。
しかし権力批判を行わないジャーナリズムなど存在意義はない。
やはりここは民主党の不作為を問題にするよりも、与党の憲法軽視を問題にすべきところであろう。
自分たちが、「20日以内に」と改正しようとしているのである。
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臨時国会スルー 自らの「改憲草案」守らない自民党のデタラメ

政権が「年明けに通常国会を召集することから、臨時国会を開かなかったとしても憲法違反にはあたらない」とするのは、「何日以内」という規定がないことを理由にした詭弁に過ぎない。
安保法やTPPなど丁寧に説明するとしていたはずである。
余程国会で追究されると困ることがあるからだろう、と普通の国民は考えるだろう。

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2015年10月24日 (土)

川田順@忠ちゃん牧場・裾野市/文学碑を訪ねる(3)

川田順(1882年(明治15年)1月15日 - 1966年(昭和41年)1月22日)は、住友総本社常務理事という実業家にして歌人。
浅草に生まれ、府立四中、一高を経て、1907年東京帝国大学法学部政治学科卒業した。
東京帝国大学では当初文科(文学部)に所属し小泉八雲の薫陶を受けたが、八雲の退任を受け「ヘルン先生のいない文科に学ぶことはない」と法科(法学部)に転科したという。
住友の第1期定期採用12名の1人だった。

1930年(昭和5年)に理事就任後、同年一足飛びで常務理事に就任、1936年(昭和11年)、鈴木馬左也の後任として住友の総帥の座である総理事就任がほぼ確定していたが、自らの器に非ずとして自己都合で退職し。
その間佐佐木信綱門下の歌人として「新古今集」の研究家としても活躍。
1942年4月に歌集『鷲』『国初聖蹟歌』で第1回帝国芸術院賞受賞、1944年に朝日文化賞受賞。

1948年京都大学経済学部教授・中川与之助夫人で歌人の鈴鹿俊子との恋に苦しみ、自殺未遂を起こした。
68歳の川田順が敏子と恋愛、家出し、「墓場に近き老いらくの、恋は怖るる何ものもなし」と詠んだことから「老いらくの恋」という語が生まれた。後に結婚。
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歌碑は、裾野市の忠ちゃん牧場の入口に立つ。
同牧場は雄大な富士山をバックに大きく広がる牧場だ。
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2015年10月23日 (金)

マンション杭打ち不正事件/ブランド・企業論(39)

大手デベロッパーの三井不動産レジデンシャルが手がけた横浜市内のマンションが、杭打ちが適正でなかったため傾くという問題が起きた。
杭のデータを偽装した現場責任者は、2次下請けの旭化成建材の社員だった。

マンション建設には通常、何層もの下請け業者がかかわっている。

 旭化成建材の親会社、旭化成の20日の記者会見。杭のデータ偽装や、杭が固い地盤(支持層)に十分届かなかった施工不良の背景に、工期やコストのプレッシャーがあったのではと問われ、平居正仁副社長はこう答えた。施工不良の杭8本は、3カ月の工期の終盤の2006年2月23~24日に施工されていた。
 マンション建設は工程が細分化され、専門業者が多くかかわる。日本建設業連合会によると、工事を受注する元請けのゼネコンは全体の管理を担い、施工はしないのが一般的。杭打ちや基礎工事、柱や床を造る軀体(くたい)工事、内装工事など分野ごとに下請けに回す。内装なら下地や壁、クロス貼りに分けてさらに下請けに出される。今回の元請けの三井住友建設によると、少なくとも100社以上がかかわったという。
 「現場は工期が最優先。下請けへのプレッシャーは常にある」。東海地方で大手業者のマンション建設や公共工事に長年携わる基礎工事技術者の50代の男性は明かす。
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マンション建設、下請け多重 「偽装誘発」指摘も

杭工事を請け負った旭化成建材がこれ以外にも過去10年間に担当した物件は約3000棟に及ぶ。
この中にはマンションだけでなく、学校や発電所なども含まれているという。

今回の杭工事に採用した工法は旭化成建材の「ダイナウィング工法」と呼ばれるもの。掘削ロッドで地盤を掘削し、ロッドの先端で電流値の変化を測定しながら、支持層まで到達したら、セメントミルクを注入して土とかき混ぜ、杭を挿入して固定させる。

 工事は8人体制で、内訳は旭化成建材の下請けから同社へ出向した現場代理人1人と3次下請け会社のオペレーターなど7人という構成だ。現場代理人には22時間以上に及ぶヒアリングを実施したが、紛失によるデータの転用は認めたものの、杭未達の事実を隠蔽する意図は否定したという。
三井不動産&旭化成のマンション傾斜・偽装問題 全国3000棟に波紋広がる

マンション傾斜が表面化する直前、旭化成のブランド価値は高いものだった。

9月10日、関東・東北での集中豪雨で茨城県の鬼怒川の堤防が決壊。街が濁流に飲み込まれた水害被害を伝えるテレビのニュースで繰り返し流れた映像がある。
 濁流に流される2軒の家が白い家にぶつかる形で停止。家や車を押し流し渦巻く激流にも、この白い家はびくともしない。その後、ヘリコプターによって屋根や近くの電柱に捕まりながら避難していた住民や犬が無事救助された。
 放送後にはネットユーザーらがグーグルマップなどを使い、この白い家がヘーベルハウスであることを特定。自然発生的にハウスメーカーの旭化成を称賛する書き込みが続き、ツイッターでは一時、急上昇ワードの上位にランクインするほどの盛り上がりを見せた。
 「基礎から時間をかけてしっかりと作るのがヘーベルハウスの特徴。だからこそ危機的な状況でもその強みが発揮できたと思う」。平居副社長は当時、こう胸を張っていた。
絶賛から罵倒へ、地に堕ちた「旭化成ブランド」

傾いていることが分かったのは、全4棟の中で西側に位置する11階建てのマンションで、建物を支える杭52本のうち、8本に不具合が見つかった。
6本の杭は「支持層」の地盤に届いておらず、残る2本は支持層へ到達していたが、深さが不十分だったとみられている。

 問題となっているのは、杭の深度不足だけではない。傾きが判明したマンションを含む3棟で、地盤に固定するために杭の先端に流し込むセメント量のデータも改ざんしていたことが判明。セメント量が足りなければ、杭を固定する十分な強度を保てない可能性がある。重複を除くと、何らかの形でデータの転用や加筆があった杭は計70本に上っている。
絶賛から罵倒へ、地に堕ちた「旭化成ブランド」

マンションは個人が一生のうちで購入するものの中では、最高額に位置する。
ブランドが信用できないとすれば、何を信ずれば良いのだろうか?

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2015年10月22日 (木)

ジャイアンツ選手の野球賭博関与/ブランド・企業論(38)

企業の不祥事が頻発している。
「国のかたち」が壊れてしまったかのようだ。
プロ野球では、球界の盟主を自負する読売巨人軍の現役選手が野球賭博に関与していた。

 プロ野球巨人・福田聡志投手(32)の野球賭博関与疑惑に関して調査を行っている日本野球機構(NPB)の調査委員会(委員長=大鶴基成弁護士)は21日、熊崎勝彦コミッショナーに中間報告を行い、福田投手に加え、巨人の笠原将生投手(24)と松本竜也投手(22)も野球賭博を行っていたことを明らかにした。巨人は笠原、松本両投手と、新たに野球賭博常習者との交際が明らかになった福田投手の3選手を、野球協約違反があったとして熊崎コミッショナーに告発。また同日付で松本投手を謹慎処分とした。
 調査委の報告によれば、福田投手は5~9月に、笠原投手は昨年4月から今年8月にかけて、税理士法人勤務とされていた大学院生の知人男性らとともにプロ野球や高校野球などの試合を対象に賭けを行った。さらに笠原投手は、昨年4月から今年9月にかけて飲食店経営の知人男性とプロ野球や高校野球の勝敗を賭けていた。松本投手は笠原投手の仲介で飲食店経営男性と知り合い、昨年6~10月にプロ野球十数試合について賭博を行った。福田、笠原両投手はマージャンやバカラなどの賭博も行っていた。
 NPBは大学院生と飲食店経営の男性が野球賭博常習者であると判断した。3選手は野球賭博への関与や、野球賭博常習者との交際を禁じた野球協約第180条(有害行為)違反にあたり、1年間もしくは無期限の失格処分が下される見込み。この男性2人がいわゆる反社会的勢力との関係があるかは調査中。
Ws000002
<野球賭博>常習者との交際…マージャンやバカラまで

野球界の不祥事と言えば、「黒い霧」事件がすぐ思い浮かぶ。

日本プロ野球における黒い霧事件(くろいきりじけん)は、プロ野球関係者が金銭の授受を伴う八百長に関与したとされる一連の疑惑および事件。新聞報道などをきっかけに、1969年から1971年にかけて相次いで発覚した。
日本野球機構は八百長への関与について「(野球協約第355条が規定する)『敗退行為』に該当する」との見解を発表。関与が疑われた現役選手には永久出場停止(追放)、長期間の出場停止、年俸減額などの処分を下した。
黒い霧事件 (日本プロ野球)

永久追放処分を受けた選手の中に、池永正明投手がいた。
稲生の後を継ぐと思われていた投手である。
高校2年の春のセンバツで優勝投手になった。

 西鉄では入団から5年で99勝。「黒い霧事件」により、通算103勝で球界を追われたが、2005年に復権した。「甲子園を含め、プロに進んだ投手ともたくさん対戦したが、『すごい』と感じたことは一度もない。それは池永をいつも見ていたから」。国学院大、社会人とプレーを続けた岡田(希代達:同級生)はこう言った。至近距離で怪物を見続けた男の偽らざる思いだった。
 3年生となった池永は、翌64年のセンバツにも出場したが、博多工に初戦敗退。その第36回大会を制したのは大型右腕の尾崎将司を擁した徳島海南だ。2人は西鉄に投手として同期入団したが、池永を見た尾崎が「こんなにすごいやつがいたんじゃ」と、すぐに投手をあきらめ、打者に専念。後に退団を申し出て、プロゴルフに転向した。日本ゴルフツアー史上最多の94勝をあげたジャンボ尾崎が、池永への敗北感から誕生したエピソードは有名だ。尾崎はオフィシャルブログで、こうつづっている。
 「ライバルの定義とは、自分より上の人間に対し、意識する事」とした上で「人生の中でたった1人ライバルと呼べる人間が池永正明」だと。しのぎを削った青木功や中嶋常幸ではないのだ。
 もっとも、池永の言い分は違う。「尾崎の方がすごかった。稲尾さんにもそう言われたからね。ゴルフで成功したんで、こっちを立ててくれとるんでしょう」。現在も年に1度は池永が暮らす福岡で旧交を温めている。
 46年度生まれは2人のほかにも星野仙一、山本浩二、衣笠祥雄、有藤通世、田淵幸一らスターがそろう。そんな個性派世代の中でも、池永はひときわ強い光を放っていた。
「怪物」たちの真実(1) 池永正明

池永自身は次のように語っていた。

昭和44年のある日、自宅をたずねてきた田中勉投手(当時中日ドラゴンズに在籍、元西鉄ライオンズの同僚で先輩でもあった)から、突然 ”100万円の金を預かってくれないか?”と札束を提示され、断ろうとするも、高校(三池工業高校)の先輩である田中氏の強い要請を断りきることができず、その金を押入れにこっそりしまっていた。ただし、野球の試合で八百長は絶対にやっていない。
黒い霧事件で処罰された池永選手は濡れ衣だったのでしょうか?

池永に非はあるのだから濡れ衣とは言えないだろう。
しかし本人は一貫して不正への関与は否定しており、永久追放処分は厳しすぎたのではないかとも思う。
池永は永久追放処分を受けてから、福岡市の繁華街で「ドーベル」というバーを経営しており、私も知人に連れられて一度行ったことがある。

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2015年10月21日 (水)

GDP600兆円よりも「卒成長社会」へ/アベノミクスの危うさ(57)

安倍晋三首相がアベノミクス「新3本の矢」の目標の1つとして掲げた「国内総生産(GDP)600兆円」の実現可能性はどうか。
経済同友会の小林喜光代表幹事は、GDPを600兆円に拡大する目標について、「あり得ない数値だと語った。
⇒2015年10月 5日 (月):「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ/アベノミクスの危うさ(54)

常識的に、2020年ごろまでに今から100兆円も上積みできるということについては、非現実的と考えるのが常識的だろう。
しかし、内閣府が16年末に予定するGDPの推計方法の見直しによって、意外と実現する可能性があるという。

Gdp 経済規模を示すGDPは国連の「国民経済計算(SNA)」を基準に推計する。国連は08年、その基準を見直した。すでに米国、欧州連合(EU)、オーストラリアなどは新基準に移行した。
 13年に新基準に対応した米国では、02~12年のGDPが3.0~3.6%増えた。日本も新基準の導入で「3%半ば前後」(内閣府)のGDPの増加が見込める。15年度の名目GDPの見込みは現行基準で504兆円。新基準では約20兆円かさ上げされる可能性がある。
 GDPの押し上げに影響が大きいのは研究開発費の算入だ。現在は付加価値を生まない「経費」として扱い、GDPの計算時には除外してきた。
 例えば自動車メーカーが国内で生産・販売したハイブリッド車は最終製品としてGDPに含めるが、車に搭載する小型エンジンの開発費はGDPから除いてきた。新基準では付加価値を生む「投資」と見なし、GDPに加算する。
GDP600兆円、意外に近い? アベノミクス「新3本の矢」

計算方法の変更というカラクリがあるというわけだ。
手品か詐術か?

しかし、それにしても前提となる名目3%成長の想定は現実的であろうか?
日銀によると、日本の潜在成長率は0%台前半から半ばである。
エコノミストの多くも非現実的と考えているという。
抜本的な成長戦略がないと高成長は実現しないだろう。
⇒2015年10月17日 (土):「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ・続/アベノミクスの危うさ(55)

そろそろ成長に拘る経済から脱却すべきではないだろうか?
卒成長社会のイメージをどう描くかを考えた方が生産的なような気がする。

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2015年10月20日 (火)

「新3本の矢」の意図するもの/アベノミクスの危うさ(56)

安倍晋三首相は9月24日の記者会見で「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言し、経済成長の推進力として新たな「3本の矢」を発表した。
旧「3本の矢」と併せると、6本の矢を放つことになる。
乱れ撃ちではないかというようなことは言わないで、その意図するところを、日本経済新聞の解説により、考えて見よう。

旧「3本の矢」と言われるものは、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」の3つであった。
このうち日銀の協力を得た金融緩和は、その是非は別として円安・株高を招来したのは事実である。
財政政策は一時的な刺激策で、アベノミクスに特有の政策とうわけではない。
3本目の矢の成長戦略は、不発だったと言わざるを得ないだろう。

金融緩和による円安は、企業業績を回復させた。
しかし生活者の視点で考えると、好況感はない。
消費増税と輸入品物価の値上がりで、むしろ生活は苦しくなっている。
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新たな3本の矢は(1)希望を生み出す強い経済(2)夢を紡ぐ子育て支援(3)安心につながる社会保障――の3項目。
首相は「長年手つかずだった日本社会の構造的課題である少子高齢化の問題に真正面から挑戦したい」と意気込みを示した。
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つまり「3本の矢」は次のように変わったわけである。
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日本経済新聞は、今後の焦点は、新3本の矢を実現する具体策に移るとし、問題はそうした子育てや社会保障の充実策と、国の借金が1000兆円を超す財政再建策をどう両立させていくかだ、と総括している。
果たしてどの程度の人が「新3本の矢」に明るい未来を感じることができるだろうか?

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2015年10月19日 (月)

アカデミックVSプラグマティック/知的生産の方法(129)

今年もノーベル物理学賞は梶田隆章・東京大宇宙線研究所長が受賞した。
素粒子論分野を中心に、現代物理学における日本人学者の貢献は大きい。
1949年:湯川秀樹:核力を媒介するものとして、中間子の存在を予言
1965年:朝永振一郎:「超多時間理論」と「くりこみ理論」
2002年:小柴昌俊:素粒子ニュートリノの観測による新しい天文学の開拓
2008年:南部陽一郎:素粒子物理学における自発的対称性の破れの発見
2008年:小林誠、益川敏英:小林・益川理論とCP対称性の破れの起源の発見
2015年:梶田隆章:ニュートリノ振動の発見

いずれもワクワクするような業績であるが、やはり伝統の力というか研究の蓄積の大きさを思わざるを得ない。
これらの研究を見て痛感するのは、すぐに何かに役立つためというよりも、物質の謎、宇宙の謎に迫ろうという知的好奇心の重要性である。

湯川、朝永は京都大学の同期生であるが、2人の研究に西田幾多郎の哲学が大きな影響を及ぼしているという説がある。

西田幾多郎は、西欧近代文明の根幹である物理学をパラダイムシフトさせた基本概念『場の量子論』と東洋文明古来の『無の思想』との関連を理解して、日本文明と西欧近代文明を正しく融合させ、文明パラダイムのシフトを起こし、ポストモダン文明を生み出す為に、西田哲学『場の理論』を結実させ後世に残したのです。
日本文明とは何か:理系おやじの日本文明論

さらに今西錦司の自然学も西田哲学の影響を受けているのはよく知られている。
いま大学のあり方が社会の要請との関係で問題になっている。
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就業力強化と大学講義運営

じっくり腰を据えて考えないと、百年の計を失することになりかねないだろう。
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就業力強化と大学講義運営

素粒子ニュートリノの観測による新しい天文学の開拓

博士から、

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2015年10月18日 (日)

古代史のイノベータ―・古田武彦/追悼(76)

古代史の分野に新たな視点をもたらした古田武彦さんが14日、京都市西京区の病院で亡くなった。
89歳だった。
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古代史研究家の古田武彦さん死去 「邪馬壹国」と主張

 福島県生まれ。東北大で日本思想史を学び、高校教師、龍谷大講師を経て1984〜96年、昭和薬科大教授。
 初め親鸞の研究者として知られたが、69年、現在伝わる「魏志倭人伝」の版本で女王卑弥呼の「邪馬台国」が「邪馬壹(いち)国」となっていることを指摘し、原典の表記に忠実に読むよう主張する論文を発表した。女王国の所在地は博多湾岸で、その系譜を引く九州王朝が存在したとする独自の古代史像を提示し、多くの研究者と論争を繰り広げた。
 「『邪馬台国』はなかった 解読された倭人伝の謎」「失われた九州王朝 天皇家以前の古代史」など多数の著書があり、賛同者や読者によって研究会が組織されるなど、「古田史学」として人気を呼んだ。
訃報:古田武彦さん89歳=古代史研究家

斬新な仮説を提示して、多くの論争を起こしたが、アカデミズムでは無視されることが大かった。
Wikipediaでは、以下を挙げている。

・『魏志倭人伝』にある国の名を邪馬台国とせず、現在伝わる「魏志倭人伝」の原文通りに「邪馬壹国」の表記が正しいとする。所在地を博多湾岸とする。
・『魏志倭人伝』のみならず魏晋朝では1里75m~90mの短里が公式に用いられたとする。
・『魏志倭人伝』にある裸国、黒歯国は南米大陸北半(エクアドル)にあるとする。
・金印を賜った倭奴国から一貫して、倭国は、九州王朝であるとする。白村江の戦いによって急激に衰退し、分家である近畿天皇家(日本国)に吸収されたとみる。
・須久岡本遺跡(福岡県春日市)の弥生王墓の年代は3世紀まで下るとする(通説では後1世紀頃)。
・三角縁神獣鏡について通説だった魏鏡説を批判、国産説を唱える。
・九州王朝説をはじめ、列島各地に王権が存在したとする「多元的古代史観」を提唱。稲荷山古墳金錯銘鉄剣銘文の分析などから、関東にも大王がいたとする。
・広開土王碑は改竄されていなかったとする(古田武彦の説で唯一定説になったもの)。

上記では、広開土王碑非改竄説のみが定説になったとするが、アマチュアにはファンが多い。
なお、Wikipediaには以下の記述もある。

中小路駿逸(元追手門学院大学教授)によれば、「大和なる天皇家の王権が7世紀より前から日本列島の唯一の中心権力者であった」とする日本古代史の「一元通念」を否定した点が最も大きな貢献とされる。一元通念が論証を経たものではなく、日中の文献や考古学的な遺物も多元的古代史観によって無理なく理解できると主張している。

私も、多元的古代史観にシンパシーを感じる者の一人である。
2004年9月4日に行われた「「多元的古代」研究会・関東」のシンポジウムで、1回だけ肉声を聞いたことがある。
説の当否は別としても、ポレミークな姿勢は古代史の分野のイノベーターとして良いだろう。
合掌。

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2015年10月17日 (土)

「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ・続/アベノミクスの危うさ(55)

安倍首相は、安保から経済へと60年安保の「成功体験」を繰り返したいようだ。
⇒2015年10月 5日 (月):「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ/アベノミクスの危うさ(54)
しかしそうは問屋が卸すまい。

1959年、IOC(国際オリンピック委員会)は、アジアで初のオリンピックを東京で開催することを決め、日本中が大いに盛り上がった。
岸信介の後を継いだ池田勇人は、60年10月24日、衆議院を解散した。
解散にあたり「日米安保新条約の決定をめぐって生じた社会的緊張をすみやかに解消し、清新にして明朗な民主政治を確立することは、国民の圧倒的な要望でありました」という声明を発表した。
同時に翌25日、首相の諮問機関である「経済審議会」は「所得倍増計画」の答申案を発表し、政策転換を明確にした。

所得倍増計画と東京オリンピックへの期待から、11月20日に行われた衆議院選挙では自民党が296議席を獲得し大勝した。
「安保解散」と言われ、しかも解散の直前に社会党の浅沼稲次郎委員長が右翼の少年によって刺殺されるという事件があったにもかかわらずである。
安保前の総選挙より10議席近く議席数を増やしたのだった。
確かに表面上類似しているように見える点がいくつかあるのである。

「バブル崩壊」「リーマンショック」という長いトンネルは四半世紀も続いてきました。戦後の混乱からの脱出が「所得倍増計画」だったとすれば、企業は積極設備投資を…首相「官民対話」で要請トンネルからの脱出は「アベノミクス」で、ということになります。
 また、ここでも東京オリンピックが重要な役割を果たすことになります。国立競技場やエンブレムでつまずいていますが、オリンピックが近づくほど、国民の関心はそちらに向けられて行くことになります。経済的効果への期待も高まっていくでしょう。「安保から経済へ」の歴史が再び繰り返されることは目に見えています。
そうした意味で今回の安全保障関連法を巡る動きは60年安保の「ミニ版」に見えます。そう言えば、主役も祖父と孫ですから当たり前かもしれません。
「安保から経済へ」 二匹目のドジョウはいるか

安倍首相は、16日、経済団体の代表らとの話し合いで、企業の設備投資を要請した。

 安倍首相は「企業収益は過去最高となったが、投資の伸びは十分ではない。今こそ企業が設備、技術、人材に対して積極果敢に投資していくべき時だ」と強調し、経済界に前向きな対応を要請した。
 円安の追い風を受け、製造業を中心に企業業績は総じて好調だが、個人消費や企業の生産活動の停滞で、景気は足踏み状態が続いている。設備投資拡大を後押しすることで、経済の好循環につなげたいという狙いがある。
企業は積極設備投資を…首相「官民対話」で要請

しかしこれは何の意味もない要請というべきであろう。
企業はチャンスだと考えれば他人に言われなくても投資を行う。
今の環境を、投資をしても需要が見込めないと判断しているのだ。
高度成長期と長期停滞期の現在とでは、決定的に事情が異なっている。
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東京新聞10月17日

二匹目のドジョウはいないと考えるのが常識だろう。

のですました。選挙直後の議員数としては戦後最高の数字という勝利でした。

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2015年10月16日 (金)

介護離職対策の理想と現実/ケアの諸問題(25)

安倍晋三首相が『新3本の矢』という名の新政策を掲げた。
(1)強い経済:GDP600兆円達成を目指す。
(2)子育て支援:希望出生率1.8を目指す。
(3)社会保障:仕事と介護が両立できる社会づくり。
いずれもスローガンとしては結構であるが、現実論となるとどうだろうか?
⇒2015年10月 5日 (月):「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ/アベノミクスの危うさ(54)

GDP600兆円は経済界からさえ批判が出ている。
団塊世代の後期高齢者入りを控えて、仕事と介護の両立の見通しはどうか?

 親などの介護で仕事を辞めざるを得ない「介護離職者」は年間10万人前後で推移しており、今後、大きな社会問題になりそうだ。首相は施設整備で対応する考えだが、多額の費用が必要で、ハードルは高い。
 介護に直面するのは企業の管理職の年代に当たる。政府の経済財政諮問会議では民間議員から離職者の増加による企業へのダメージを心配する声が上がっている。首相も先月24日の記者会見で「団塊ジュニアが大量離職すれば経済社会が成り立たなくなる」と強調。達成時期は2020年代初頭とし、団塊ジュニアの親である団塊世代が75歳以上となる25年の前に環境を整える意向だ。
 特別養護老人ホーム(特養)の入所待機者(要介護3以上)は13年度で約15万人で、厚生労働省の試算では、特養の定員は25年度までに20万人増える見込みだ。ただ、厚労省は在宅中心の介護に力点を置いており、施設の大幅増設には消極的。新たに大幅な財源投入がなければ整備計画の前倒しにとどまる見通しだ。
 首相は、25年度に約38万人不足すると推計される介護人材の育成にも取り組む考えだ。そのためには全産業平均より月10万円も低い介護職員の待遇改善が急務だ。
 首相は、介護離職ゼロや職員の待遇改善という形で介護対策が現役世代にも資するとの考えを示している。しかし、ある厚労省幹部は「税収の増加分で足りなければ他の社会保障費を削ることにもなりかねない」と懸念する。
新三本の矢:介護離職ゼロ 施設整備に費用の壁

帝国データバンクの『老人福祉事業者の「休廃業・解散」動向調査』によると、2005年~2014年の10年間における老人福祉事業者の休廃業・解散は428件。
2014年は130件で、前年比1.5倍以上だ。
帝国データバンクでは、介護報酬引き下げによって、今後さらにこうした状況が進むのではないかと予測している。
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https://p-kaigo.jp/news/7923.html

介護職が低賃金であることはよく知られた事実である。
賃金の大幅な引き上げが急務であるが、介護職の給与水準を全産業平均並みにするには年間1.4兆円の財源が必要になるという試算がある。
早急に具体策を検討しないと介護離職は減少しないだろう。

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2015年10月15日 (木)

国会議事録は与党判断で修正可能か?/日本の針路(246)

安保法を採決した参院特別委の様子はTVでも放映されたから、様子は分かる。
鴻池委員長を与党議員が取り囲んで、議場に声が届かないことは明らかであった。
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安保法案、参院特別委で可決 採決強行、総括質疑無く

この採決の議事録が問題になっている。

憲法58条2項は、「両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め」ると規定します。
この規定を受けて制定された参議院規則第6節の部分は、「表決」に関して規定しています。
今回の件で関係しそうなところをみてゆくと、まず、第136条は、「議長は、表決を採ろうとするときは、表決に付する問題を宣告する。」とします。
そして、第137条前段は、「議長は、表決を採ろうとするときは、問題を可とする者を起立させ、その起立者の多少を認定して、その可否の結果を宣告する。」と規定しています。
さらに、第141条は、「投票が終つたときは、議長は、その結果を宣告する。」と規定しています。
今回の安保関連法案の参院特別委員会での採決の場面のYouTubeの動画や写真などをみると、委員長を駆け寄った多数の与党議員が取り囲み人の壁を作り、そのなかで委員長が何か発言をしたらしいですが、委員長がなにを発言したのか判然としません。会議録(参議院規則156条)においても「議場騒然、録収不能」となっています。
この与党の行為は、少なくとも人垣の壁を作っている与党議員の外にいる与野党の議員には委員長の声が届いていない(「議決を採る」との「意思表示」(民法93条以下)が外部の与野党の議員達に届いていない)と思われるので、参議院規則136条が要求する「議長は、表決を採ろうとするときは、表決に付する問題を宣告する。」を行っていたとはいえません。
同様に、参議院規則137条が要求する、①「可とする者を起立させ」という行為と、②「その起立者の多少を認定」という行為、そして③「その可否の結果を宣告する」という3つの行為があったともみられません。
さらに同様に、参議院規則第141条が要求する「投票が終つたときは、議長は、その結果を宣告する。」という行為も行われていません。
安保関連法案の参議院特別委員会での「強行採決」は有効なのか?

ところが「議場騒然、録収不能」のはずの議事録に、「安保法を可決すべきものと決定した」との文言が付け加えられているという。
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安保法「聴取不能」の議事録 与党判断で「可決」追記


可決の有無が問われるような事態は、憲政史上の汚点として記録されることになろう。

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2015年10月14日 (水)

TPPの「大筋合意」は喜ぶべきことか/日本の針路(245)

米アトランタでの閣僚会合で4日間の延長の末、「大筋合意」に達したとされるTPP交渉。
そもそも「大筋合意」とはないか?
すでに今から2年前の2013年10月10日のニュースで次のように言われている。

Q 甘利氏が言う「大筋合意」に具体的な定義はあるの。 
A 「大筋合意」は日本の鶴岡公二首席交渉官が八月のTPPのブルネイ会合後に「十月のバリの首脳会合で大筋合意するため、必要な作業を加速する」と語ったころから使われるようになった。政府関係者が使う単なる「官僚用語」で、TPP交渉の中でも明確に定義されてはいない。今回、英語で出された首脳声明や付属文書にも「大筋合意」の意味に当たる言葉は出てこないんだ。 
Q 鶴岡氏は大筋合意という言葉をどうとらえているの。 
A 九月に自ら「年内妥結に向けた決着が見えてくること」と説明していたね。
Q では、インドネシア会合で年内妥結が見えたのかな。 
A 首脳声明には「年内に妥結するため、残された困難な課題の解決に取り組む」との方針を初めて明記した。日本の大江博首席交渉官代理は「十二月への『見晴らし』がよくなったので日本としては大筋合意と言える」と強調。日本は「年内妥結が見えた」という考えだ。
TPP「大筋合意」とは 英文に表記なし 日本だけの「官僚用語」

何のことはない。甘利氏は2年前から「大筋合意」と言っていたのだ。
眉にツバをつけて聞かなければなるまい。
以下のような解説がある。

「TPP大筋合意」とは、なんだったのか。いくら探しても実体がないのだ。
結論は、「大筋合意」とは、少なくとも、日本の外務省他が国民を洗脳するために創作した言葉である。それを、記者クラブが拡散したに過ぎない、ということ。
なにより、英語の原文と日本語の訳文を比較して自分で確認することが大切だ。
まず、米国の公式ホームページ。
最終交渉の結果を伝えている公式文書の見出しは
Summary of the Trans-Pacific Partnership Agreement
「TPP合意書についての要約」とだけ記してある。どこにも、「大筋合意」を意味する言葉はない。
この英文の要点だけを日本語に翻訳して、リリースしたものが以下。
(10月5日付けのUSTRプレスリリース及び10月6日付けのホワイトハウスのプレスリリース)
見出しは、「環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉参加国で大筋合意(USTR)」・・・
この見出しも、そうだが、本文の頭から2行目の最後に、「・・・当初予定の日程を大幅に延長して交渉を続け、10月5日TPPの大筋に合意しました。」とある。
しかし、英語の原文には、「大筋合意」などという表現は、どこにもない。
それに近いのが、上から5行目の、
We envision conclusion of this agreement
という文章。
「この協定の締結を構想します」といった意味に過ぎない。
envisionは、「思い描く」「心に抱く」という意味だから、ここでの使い方は、こんなふうになる。
この先、この協定が締結されるであろうことを、前もって思い描く」・・・こんな意味になる。
外務省のホームページでは、「大筋合意(USTR)」としているが、意訳どころか、こんな“飛訳”をして大丈夫なのか。
先走っている、というより、ニュアンスが全然が違う。
マレーシア「TPP、権益を守るため18年までの発効はない」

グローバル資本主義の典型とも思われるマレーシアであるが、現実の状況は以下のようであるという。

【クアラルンプール】
米国アトランタで開催された交渉で環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋合意に達したが、マレーシア通産省は向こう2年間はTPPの発効はないとの考えを明らかにした。
マレーシア通産省のレベッカ・ファティマ事務総長は、先の交渉で大筋合意に至った内容は国民に公表し、国会で審議をした上で費用便益分析が行われると指摘。
全ての交渉参加国がそれぞれの国で承認を経て批准に関する正式決定が行われるとし、長い道のりとなるとの考えを示した。
通産省は大筋合意に至った交渉内容を精査し、全てを国民に明らかにするという。また、実際にTPPに署名するかどうかは政府判断となる。
マレーシア「TPP、権益を守るため18年までの発効はない」

第一、主導する米国が「大筋合意」そのものを認めているかも怪しくなってきたというのだ。
8日行われたTPP阻止国民会議などによる現地報告会では次のような発言があった。

「日本と他国との認識にはどうもズレがあります。閣僚合同記者会見で〈大筋合意したのか?〉と問われた米国のフロマン通商代表はイエスともノーとも答えず、言葉を濁していたし、貿易協定が一変する重要な会合だったにもかかわらず、参加12カ国中の3カ国は代理出席。質疑は空回りしていました。安倍政権は来夏の参院選での争点化を避けるため、このタイミングでの形式にこだわってきた。『大筋合意することを合意した』というのが真相に近いのではないか」
眉ツバもののTPP「大筋合意」 日本だけが大ハシャギする理由

甘利担当相は得意満面だが、だいぶ様子が違うようだ。
TPP発効には正式な協定案への署名や各国議会での承認、さらに「参加6カ国以上でGDPの合計が85%以上を占めること」が条件とされる。
慌てずマレーシアに倣って、国民すべてに情報を公表し、さらに国会で審議した上で、果たして国益にどれだけ資するのか(費用便益分析)を精査すべきであろう。

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2015年10月13日 (火)

地方国立大学とノーベル賞/日本の針路(244)

2015年ノーベル賞受賞に、日本人受賞が2人いた。
大村智北里大学特別栄誉教授と、梶田隆章東京大学宇宙線研究所長である。
大村氏は山梨大学、梶田氏は埼玉大学という地方国立大学の卒業だ。
今回の2氏、それに14年の受賞者で徳島大学出身の中村修二米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授は、いずれも学部時代を出身に近い地方国立大学で過ごしている。
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ノーベル賞「地方大出身」受賞続く。今後の国立大改革につなげられるか               

今夏、文部科学省が求めた国立大の「世界」「特色」「地域」の重点支援枠で、地方創生に貢献する「地域」を選んだ大学だ。
埼玉大の山口宏樹学長は、梶田氏の受賞について「大学の基本的な使命は知の継承、知の創造だということが示せた」と述べた。
3氏の事例は、”地域から全国、世界へ“と広がる人材や研究の源に、地方大学があることを示したともいえる。

日本の科学研究の幅広さを示していることは間違いないだろう。
文部科学省のある幹部は「地方大は東京大や京都大と違って成果を求めるプレッシャーが少なく、自由に研究に打ち込める雰囲気がよかったのではないか」と話している。
成果主義ではないことを文科省自身が認めたと言える。

思えば、最初にノーベル化学賞を受賞した福井謙一先生の業績も自由を尊重する学風から生まれた。
⇒2009年10月10日 (土):プライマリーな独創とセカンダリーな独創

文科省自身が即戦力養成型に傾いているとしたら、百年の計を危うくする。
地方大学ぼ特性ある多様性が、日本の創造性発揮のために重要である。
⇒2015年6月19日 (金):文科省の国立大学改革通知はナンセンス/日本の針路(181)

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2015年10月12日 (月)

難民問題にどう対処するのか?/世界史の動向(36)

シリアをはじめとする難民問題は、世界史的な課題となっている。
中東からヨーロッパに殺到した難民や移民は今年、500万人に達している。
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東京新聞10月12日

シリア国民2200万人の避難先は数のようである。
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シリアだけではないが、難民救済は喫緊の世界的課題であり、人道が問われるものである。
わが国の難民認定者は、昨年1年で11人であり、シリア人については今年3人だけである。
国連のサザーランド事務総長特別代表は、日本を名指しして受け入れを求めた。
積極的平和主義を標榜する安倍首相は、今こそ出番であろうが、内向きである。
⇒2015年10月 4日 (日):「積極的平和主義」と難民問題/日本の針路(238)

首相の姿勢を反映しているのだろうか、FB上の「安倍総理を支える会」の中心的な人物とされるはすみとしこという漫画家が、自身のFBに投稿したイラストが問題になっている。
イラク難民の少女を元にしたものであることは明らかである。Img_0003
東京新聞10月10日

はすみ氏は偽装難民を揶揄したものと言うが、少女のみならず難民全体の尊厳を傷つけるものといえよう。
「積極的平和主義」の実体見たり、ではなかろうか。

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2015年10月11日 (日)

明石海人@千本松原/文学碑を訪ねる(2)

明石海人の名は、どの程度知られているのだろうか?
私は知人に研究者がいるので比較的詳しく知っているが、一般には余り知られていないのではなかろうか。

明石海人(本名:野田勝太郎)は沼津市に生まれ、沼商から師範学校をへて、教職に付き、結婚し、長女が生まれ、これからという26歳の時にハンセン病を発病します。
名を捨て、家族もすて(素性を隠し)明石楽生病院から長島愛生園での療養生活をしいられます。32歳で長島の地に来た海人はかなりの病状悪化にもかかわらず、短歌を勉強し、34歳ごろから短歌を発表しその才能が開花しますが、歌集「白描」を世に出した年、昭和14年、37歳の短い生涯を閉じました。
慟哭の歌人とは・・・

沼津の千本松原の中に歌碑がある。
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さくら花かつ散る今日の夕ぐれを幾世の底より鐘のなりくる
ゆくりなく映画にみればふるさとの海に十年のうつろいはなし
シルレア紀の地層は沓きそのかみを海の蠍の我もすみけむ

3首が建っている。
出身の沼津商業高校の同窓会には、「明石海人の会(瀬川裕市郎代表)があって、活発に活動している。
同校の校庭にも歌碑があるが、9月28日、説明板が設置された。
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沼津朝日新聞10月1日

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2015年10月10日 (土)

超高齢社会と「一億総活躍社会」/日本の針路(243)

改造内閣の目玉である「1億総活躍社会」の担当相に加藤勝信が就任した。

 「1億総活躍社会」の実現に向けて、首相は担当相の下に「国民会議」を設置するとともに、「日本1億総活躍プラン」を策定する方針。政府は、国民会議の運営などに当たる事務局の規模や人選について調整を進めている。
 しかし、「1億総活躍」に向けて首相が打ち出した「新3本の矢」のうち、「強い経済」については、経済再生相との役割分担がはっきりしていない。残る「子育て支援」と「社会保障」についても、政府内からは「厚労省と似た組織をつくるなら効率が悪いだけ」(官邸筋)との声が漏れる。
 首相は昨年9月に第2次改造内閣を発足させた際、看板ポストとして地方創生担当相を設け、石破茂氏を起用すると同時に、地方創生の司令塔として、首相を本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」を発足させた。政府関係者は「『まち・ひと・しごと』は新しい試みだったが、『1億総活躍』は既にやっている取り組みも多い」と指摘する。
1億総活躍相、実効性が課題=スローガン先行で「非効率」

しかし、そもそも「1億総活躍社会」」をどう理解するのか?
エッセイストの小田嶋隆氏は、「日経ビジネスオンライン」誌の連載で次のように書いている。

 国民を「一億」という数字を以ってひとつの集合として扱うのは、戦前の語法だ。控えめに言っても、「一億」で「全国民」を含意するものの言い方は、昭和のレトリックではある。
 であるから、この言い方は、「一億」の中にある「個性」を捨象し、一人ひとりの個々の国民が備えている「多様性」や「個別性」をきれいに黙殺する結果をもたらす。
 つまり、「一億」は、一国の国民をひとかたまりの粘土のごときものとして扱う人間が使う接頭辞で、その言葉で名指しされた国民は、個人の顔を喪失せざるを得ないのである。
 結果、「一億総活躍社会」は、語感として「一億総決起」とほぼ同義の言葉に着地する。
 いっそ「一億総蹶起」と古い漢字を使いたくなるほどだ。
・・・・・・
 「一億総◯◯」という言い方には、強い圧力がある。
 具体的に言えば、「一億総◯◯」と言ってしまった瞬間に、◯◯でない人たち、すなわち少数者への排除圧力が生じるということだ。
「一億総健康社会」
「一億総前向き社会」
 一見、素晴らしい社会のようでもある。
 が、健康でない人間、前向きに考えることができない人間はどうしたら良いのだ? そういう人間は社会にいてはいけないということなのか?
 「◯◯」を「活躍」に変えても同じことだ。「一億総活躍社会」は、「すべての国民が活躍する社会」である一方で、「活躍できない人間が居場所を失う社会」でもある。
「一億総活躍社会」を総括する

私も同じような感じを受けた。
⇒2015年10月 1日 (木):「女性の活躍」=出産と考える愚/日本の針路(236)

私などのようにリタイア世代にはイヤミに聞こえるのは僻みが入っているにしても、半年ばかりの入院生活の間、近未来の社会像を見た経験からすれば、入院患者や鬱で休職中の人たちがどういう思いでこのスローガンを目にするだろうか、ということが気になる。
社会の中には、活躍できない人間が必ず含まれているのであり、団塊世代が後期高齢者になる10年後の2025年には700万人の認知症が予想されている。
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認知症とは!①   
「一億総活躍社会」の前に、社会保障政策を充実すべきだろう。
小田嶋氏の次の言葉に共感する。
社会とは、異質な人々が、その異質さを互いに容認し、補完しながら、全体としてひとつのネットワークを形成して行くものだ。

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2015年10月 9日 (金)

「働き方革命」とは何か?/日本の針路(242)

Wedge10月号が「働き方革命」という特集を組んでいる。
リードは、以下のようである。

在宅勤務、朝型勤務、ゆう活……。企業や官公庁が続々と「働き方改革」を実施している。旧態依然の「ニッポン株式会社」に、こうした働き方は根付くのだろうか……。

確かに働き方を示す用語が賑やかである。
働き蜂と評されることの多いサラリーマンであるが、何が問題なのか?
年間の総労働時間は下図のようである。
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Wedge10月号

フランスやドイツに比べると多いが、アメリカ、イタリアとは差がない。
問題は労働に対する実際の裁量がどの程度あるかということではなかろうか。
年休取得日については下図のようである。
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Wedge10月号

制度があっても実際に休暇を取得できていないのだ。
10月2日の日本経済新聞コラム「春秋」に以下のような文章があった。

・・・・・・信用金庫勤めの主人公は同僚と語りあう。会社は私たちを粗末に扱っていないか? その扱いに慣れなかった私が悪いのか……。▼放映から12年。働く意味に悩む女性たちの琴線に触れるのか、今もDVDが売れ続ける。何かひとつ要望を聞こうという上司に主人公はいう。「ほめてもらえますか?」。助かってる、ありがとう、これからも頑張ってくれ。そうした言葉が欲しい、と。賃金や肩書よりも、人としてまっとうに扱う大事さを作品は訴える。

これを読んで、マズローの図式を思い浮かべた。
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⇒2011年2月28日 (月):モチベーションを持ち続けるためには?/闘病記・中間報告(22)

私たちは他人から認められたいという欲求を持っているのだ。
東京新聞の「私の東京物語」に登場する進士五十八(元東京農大学長)さんの10月6日の回に、明治神宮の森作りを指導し林学者・本多静六の言葉が引用されている。

人生の最大幸福は職業の道楽化にある。

なかなか到達し得ない境地であるが、含蓄のある言葉だ。
本多静六は、蓄財の理論と実践で有名だった人だ。
投資家として巨万の富を築いたが、退官を機に匿名でほぼすべてを教育、公共の関係機関に寄付した。

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2015年10月 8日 (木)

裁判制度は何を改革すべきか/日本の針路(241)

名張毒ぶどう酒事件で無罪を訴え続けてきた奥西勝死刑囚が、10月4日獄死した。
事実上の終身刑だったと見ることもできる。
冤罪なのかどうかは分からないが、少なくともその疑いは否定できないままだった。

名張毒ぶどう酒事件とは、1961年3月28日の夜、三重県名張市葛尾地区の公民館で起きた毒物混入で5人が死亡した事ある。
容疑者として逮捕・起訴された奥西勝さんは死刑判決が確定していたが、冤罪であるとの主張と、支援者らによる合計9回にわたる再審請求がなされていた。
再審請求中は刑の執行が行われないことから、確定死刑囚のまま収監され続け、刑が執行されることなく89歳で死亡した。

有罪あるいは再審請求の論拠はどういうものか?

Photo_2 事件当時、飲み残りのぶどう酒からどのような毒物が検出されるかということについて、三重衛生研究所においてペーパークロマトグラフ試験がおこなわれた。
 その結果、飲み残りのぶどう酒からは0・58スポットが出なかったが、対照用のニッカリンTからは0・58が検出された。その理由について当時は、成分は何かわからないが、飲み残りのぶどう酒は事件発生から丸1日以上経過しているので、加水分解して消失したのではないかという理由で、飲み残りのぶどう酒に入れられたテップ剤はニッカリンTであると結論付けた。
 しかし近年になって分析したところ、0・58スポットはトリエチルピロホスフェートであり、その加水分解速度はTEPPより遅く、TEPPが検出されている以上、加水分解は理由にならないことが明らかとなった。
 そうした場合、飲み残りのぶどう酒に入れられたテップ剤はニッカリンTではないことになり、ニッカリンTしか所有していなかった奥西勝さんは犯人ではない(持っていない凶器で人を殺すことはできない)ということが明らかとなり、2005年の「再審開始」決定につながっていった。
名張毒ぶどう酒事件

冤罪の可能性を消せぬまま、奥西死刑囚を獄死させてしまったことは、司法のあり方に疑問を投げかけるものといえよう。
冤罪というのは、統計的判断でいう「第1種の過誤」で、悪いことをしていないのに、悪いことをしたと判断されることである。
これに対し、「第2種過誤」は、悪いのに悪くないと判断することである。
刑事的分野では、「第2種の過誤」の可能性があったとしても、「第1種の過誤」は絶対に避けなければならない。

今までいく例か冤罪が明らかにされた。
名張毒ぶどう酒事件でも、津地裁の一審は無罪だった。
再審請求で一度は高裁が再審開始を認めたことは、有罪の立証が不十分であることを窺わせるものである。
最高裁が判決を見直す姿勢を見せなかったのは不可解である。

無罪の証明は、原理的に難しい。
無いものを証拠をもって示すことは、不可能ともいえる。

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2015年10月 7日 (水)

祝祝・梶田隆章氏のノーベル賞受賞/日本の針路(240)

2日続きの朗報である。
スウェーデン王立科学アカデミーがは2015年のノーベル物理学賞を梶田隆章・東京大宇宙線研究所長ら2人に授与すると発表した。
梶田氏は素粒子のニュートリノに質量があることを、観測装置「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)を使って実証した。
1998年6月の国際会議で発表し、ニュートリノの質量はゼロ」という前提で組み立てられた現代物理学の見直しを迫る成果として世界的に注目を集めた。
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東京新聞10月7日

 物質を構成する素粒子の一つであるニュートリノは1930年代に存在が予測され、56年に発見された。だが、他の物質とほとんど反応しないため観測が極めて難しく、質量の有無など詳しい性質は長い間の謎だった。
 ニュートリノを直接観測するため、戸塚洋二・東京大特別栄誉教授(08年死去)が率いる国際共同プロジェクトが96年に始動。梶田氏は実験のまとめ役を務め、スーパーカミオカンデを使った実験に取り組んだ。
 ニュートリノは電子型、ミュー型、タウ型の3種類。研究チームは、宇宙線が地球の大気とぶつかって生じるミュー型と電子型を観測した。だが、理論上はミュー型の数が電子型の2倍あるはずなのに、実際に観測できたのはほぼ同数だった。
 ミュー型が理論値の半分しかない理由としてチームは、ミュー型が長距離を移動する過程で、スーパーカミオカンデでは観測できないタウ型に変わったためと推定した。
 ニュートリノが別の種類に変身する現象は「ニュートリノ振動」と呼ばれる。この現象は、ニュートリノに質量がなければ起きないことから、「ニュートリノに質量がある確証が得られた」と結論付けた。
ノーベル賞:物理学賞に梶田氏 ニュートリノに質量実証

宇宙の起源に関連した偉大な業績である。
共に、すぐ役に立つと思われない研究が花開いた。
原動力は、大村氏のように、謎に対する好奇心だ。

前日の大村氏に倣って、研究対象(ニュートリノや宇宙線)への感謝の言葉を口にした。
謙虚な人柄を窺わせる。
梶田氏は埼玉大学の出身であって、スーパーグローバル大学ではない。
官僚の決める格付けは、ブレークスルー的業績とは相関しないようだ。

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2015年10月 6日 (火)

祝・大村智氏のノーベル賞受賞/日本の針路(239)

ノーベル賞ウィークの幕開けに素晴らしいニュースが飛び込んできた。
2015年のノーベル医学生理学賞を大村智北里大特別栄誉教授と米ドリュー大のウィリアム・キャンベル博士、中国中医科学院の女性科学者の屠ゆうゆう首席研究員の3氏に授与すると発表があったのだ(※屠ゆうゆう教授の「ゆう」は口へんに幼)。
私は寡聞にして大村氏の業績を知らなかったが、受賞理由は、「寄生虫によって引き起こされる感染症の治療の開発」だという。
開発途上国で感染症対策に役立っていることを、ノーベル財団は「人類への計り知れない貢献」とたたえた。
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東京新聞10月6日

日本人のノーベル賞受賞も増えた。
ノーベル賞がすべてではないが、やはり大きな栄誉であり、実績である。
文字通り「地を這うような研究」のようだが、TVで拝見した人柄が何とも言えず良い。
山梨大学の出身ということで、中村修二氏の徳島大学に続き、地方国立大学に日が当たるのも良いことではなかろうか。
両大学共に、文部科学省が昨年度創設したスーパーグローバル大学には選定されていない。

土壌中の生息する微生物は、生態系の重要なプレーヤーである。
大村氏は70年代から各地で土を採取して微生物を分離・培養し、その微生物が作る化学物質に有用なものがないか調べてきた。
その中で、静岡県伊東市のゴルフ場周辺の土にいた新種の放線菌が出す物質から寄生虫に効果のある抗生物質「エバーメクチン」を発見したのが79年である。
福島原発事故で、かけがえのない土壌が広範囲に汚染されている。
それでも原発を止めない安倍政権は、基本的な素養に欠けているのではなかろうか。

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2015年10月 5日 (月)

「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ/アベノミクスの危うさ(54)

安全保障関連法が成立して安倍首相はさっそく「安保法の後は経済」と表明した。
9月24日、総裁選出後初めての記者会見を行い、「本日からアベノミクスは第2ステージに入る」とした。
第2ステージでは、(1)国内総生産(GDP)600兆円、(2)出生率1.8、(3)介護離職ゼロという新しい3本の矢を放つという。
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“アベノミクス”第2ステージへ-安倍首相「GDP600兆円、経済最優先で臨む」

私などの世代にとっては、「安保の後は経済」は既視感たっぷりである。
岸信介内閣退陣を受けて発足した池田勇人内閣は、「経済のことは池田にお任せください」との言葉で発足し、「国民所得倍増」を掲げて高度経済成長を実現した。
安倍首相は1人2役を演じようというのだろうか?

それにしても経済成長の要因があるか否かが問題である。

 経済同友会の小林喜光代表幹事は29日の記者会見で、安倍晋三首相が「新3本の矢」で掲げた、名目国内総生産(GDP)を600兆円に拡大する目標について、「あり得ない数値だ。政治的メッセージとしか思えない」と実現性に疑問を示した。
・・・・・・
GDPを490兆円余(2014年度)から600兆円に増やす目標は、名目で年3%超の経済成長が前提になるとして、「とてもコミットできる数値ではない」と突き放した。
GDP600兆円目標「あり得ない」 経済同友会

まあ、池田内閣発足当時は、「所得倍増」もスローガン的に捉えられていたのだから、空想的というのは批判にならないだろう。
スローガンは人々を鼓舞する力となって現実をも動かすこともあり得る。
しかし現在「GDP600兆円」あるいは「名目で年3%超の経済成長」が人々を鼓舞し得るであろうか?
私は否と考えるものである。

8月の第1週、個人投資家が占める売買シェアは21.9%だった。ところが、9月の第1週は15.9%まで下がっている。個人投資家が「アベノミクスは崩壊する」と警戒している証拠だろう。そもそも、この2年間、GDPはゼロ成長なのだからアベノミクスが失敗に終わったことはハッキリしている。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。
「アベノミクスが失敗に終わった最大の原因は、トリクルダウンが空振りに終わったことです。この2年間で企業の収益は3割以上拡大していますが、実質賃金はまったく上昇していない。労働分配率は5%も下がり、正規労働者の割合も2年前の65%から62%に低下している。これでは個人消費は伸びない。GDPの6割を占める個人消費が冷え込んだままでは、景気がよくなるはずがありません」
 弱者ほど貧しくなるのが、アベノミクスだ。「下流老人」が流行語となり、国民の62.4%が「生活が苦しい」と答えている。恐ろしいのは、11月以降、日本経済はさらに悪化する恐れが強いことだ。
アベノミクス“第2ステージ”で日本経済は完全に破壊される            

第2ステージというなら、第1ステージの総括がなければならないだろう。
アベノミクスは成功したのだろうか?
異次元の金融緩和によって人為的に株高が演出された以外に、見るべき実績はないと考える。

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2015年10月 4日 (日)

「積極的平和主義」と難民問題/日本の針路(238)

シリア難民の問題が重大な局面を迎えている。
シリアの国内情勢は複雑怪奇というべき状況であり、中途半端な発言は慎むべきであろう。
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東京新聞10月1日

シリア問題の解決のためには、国際社会の享禄が必要であるが、米ロの思惑の差異がこれを阻んでいる。
米国のオバマ大統領とロシアのプーチン大統領が、国連総会にあわせシリア情勢について話し合ったが、シリアのアサド大統領の退陣を求める米国と、政権を支援するロシアでは共同歩調をとるのが事実上難しい。

ロシアはIS掃討のため、アサド政権に協力するとして、9月30日に空爆を開始した。
標的を過激派組織「イスラム国」(IS)に限定すると説明していたが、10月1日、シリア領内で過激派組織「イスラム国」(IS)以外の過激派の拠点を空爆した。
アサド政権の延命のため、米国が支援する反体制派を攻撃している可能性もあるとされる。
オバマ大統領は演説でアサド大統領の退陣を改めて求め、プーチン大統領との会談でも「アサド政権が残る限りシリアの安定はない」と伝えたという。
米軍はイラク領内に続き、昨年9月からシリア領内のISに空爆を始めた。
ISと戦う反政府勢力への軍事訓練も実施しているが、ISの勢いは衰えていないのが現状だ。

「積極的平和主義」を旗幟とする日本政府はどう対応するのか?
語感からすれば人道的な措置に全力を尽くすように受け取られよう。

安倍晋三首相は29日午後(日本時間30日未明)、米ニューヨークで開かれている国連総会で一般討論演説に臨んだ。中東・北アフリカから欧州へ難民や移民が大量に流入していることを受け、約8・1億ドル(約960億円)の支援を表明。教育や医療といった「人間の安全保障」で国際社会に貢献する姿勢を強調し、安全保障理事会の常任理事国入りに強い意欲を示した。
安倍首相、国連一般討論演説 シリア難民対策に8・1億ドル支援表明 常任理事国入りに強い意欲

一般演説の後で、海外通信社ロイターの記者が、「シリア難民問題への追加の経済的支援を表明したが、難民の一部を日本に受け入れることは考えていないか?」と質問した。

「そして今回の難民に対する対応の問題であります。これはまさに国際社会で連携して取り組まなければならない課題であろうと思います。人口問題として申し上げれば、我々は移民を受け入れる前に、女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手があるということでもあります。同時に、この難民の問題においては、日本は日本としての責任を果たしていきたいと考えております。それはまさに難民を生み出す土壌そのものを変えていくために、日本としては貢献をしていきたいと考えております」
ロイター通信は会見の内容を「安倍首相、シリア難民受け入れより国内問題解決が先」とのタイトルで報じた。
安倍首相「難民受け入れは?」と問われ「女性の活躍、高齢者の活躍が先」

この発言をどう考えるか?
前後の文脈等を考慮しなければならないが、質問と答えがチグハグな印象であることは否めない。

 昨年は5000人にのぼった難民申請に対して、11人しか難民と認定されていないことなどを紹介しつつ、「首相は演説の最後を、「積極的平和主義」を掲げ、国連の安全保障理事会を改革し、常任理事国として貢献していきたいと締めくくった。その意欲に比べ、発信したメッセージは内向きでさびしい」(毎日新聞)などと印象を伝えています。
 しかし日本として考えた時の大きな問題は、安保理の常任理事国入りをめざして積極的に国際貢献を果たしていくと宣言する一方で、国際メディアからは「日本の首相は難民よりも国内が先だと語った」と報じられてしまうことをどう考えれば良いのか、ということです。
難民支援の実績を台無しにした安倍首相の「あの」一言

安倍首相の「積極的平和主義」というのは、国連常任理事国になって武力により紛争を解決しようということが分かる。

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2015年10月 3日 (土)

鬼怒川決壊と洪水対策/日本の針路(237)

10月2日の東京新聞の特報面に、鬼怒川決壊に関する興味深い記事が掲載されていた。
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国交省がダムやスーパー堤防にばかり偏った予算配分をしていたため、喫緊の課題であるはずの堤防強化がおろそかにされていたのではないか、という内容である。
民主党政権時代に「コンクリートから人へ」というスローガンで事業仕分けが行われた。
それを以って、「スーパー堤防予算を削ったことが鬼怒川決壊の原因」などということが言われている。

鬼怒川水系の上流には、川俣ダム、川治ダム、五十里ダム、湯西川ダムの四つのダムがある。
関東地方整備局は決壊の1日前から、下流の水位上昇を抑えるために放流調整の対策を取っていた。
しかし、雨は下流にも降り続いたため、決壊は防げなかった。
市民団体「水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之共同代表は「ダムは上流からの水は受け止めれるが 下流の雨には無力。ダムで洪水の防ぐのには限界がある。それなのに、国は膨大な予算をかけてダムの 整備を続けている」と批判する。
http://fox.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1443747398/l50

嶋津暉之氏は、水需要予測を実態に即して行い、旧建設省や旧国土庁などが行っていた過大な水需要予測を行ってきた人である。
水需要予測は、水資源開発のための基礎となるものであるが、それが過大ということになると、ダム開発等の正当性が揺らぐことになる。
そのため島津氏は、これらの官庁からは、天敵のように嫌われていたように思う。
しかし、役所の中にも志を持つ人がいて、島津氏の業績を高く評価していた。

スーパー堤防とは堤防の幅が極端に広い堤防であり、完成すれば、確かに洪水には強くなる。
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スーパー堤防事業

しかし完成までに数百年という法外な予算と年月を要することから、喫緊の対策としては役に立たない。
堤防の補強が進まない理由について担当者は「予算が限られているので….」 と言葉を濁すが、スーパー堤防の建設は進められている。
限られた予算の枠の中で、どう優先順位をつけるかが問われている。
また、河道の対策だけでは限界があると考えられる。
⇒2015年9月17日 (木):鬼怒川氾濫と流域水管理の思想/技術論と文明論(33)
⇒2015年9月11日 (金):東日本豪雨による鬼怒川決壊と自然堤防の掘削/因果関係論(26)

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2015年10月 2日 (金)

光治良と戦争展@芹沢光治良記念館/人物記念館(2)

沼津市我入道というところに芹沢光治良記念館がある。
松林の中の閑静な場所で、菊竹清訓氏の初期の作品である。
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菊竹清訓は、メタボリズム運動の旗手として、「か・かた・かたちの三段階論」を提唱して大きな影響を与えたが、2011年12月に亡くなった。
⇒2013年8月13日 (火):三段階論という方法②菊竹清訓の設計の論理/知的生産の方法(72)
⇒2012年1月 6日 (金):菊竹清訓氏と設計の論理/追悼(19)

光治良は、明治29(1896)年5月4日、静岡県駿東郡楊原村我入道一番地(現在の沼津市我入道)に生まれた。
小学校入学以前から孔子の『論語』を暗唱できるほどの頭の良さから神童といわれ、県立沼津中学校(現在の県立沼津東高等学校)時代に、文芸雑誌『白樺』を読み、フランス文化に憧れるようになった。
旧制第一高等学校をへて、東京帝国大学(現在の東京大学)経済学部経済学科に入学、卒業後、農商務省(現在の農林水産省、経済産業省)に入省した。
29歳のときに結婚、貨幣論の研究のため、新妻を伴ってフランスのパリ大学に留学した。
フランス滞在3年間に、三木清、佐伯祐三、ジュール・ロマン、ケッセル、ルイ・ジューベ、マリー・ベル、デュラン、アンドレ・ジッド、ポール・ヴァレリー等、多くの学者、作家、俳優や画家といった文化人と広く交流し、帰国後、作家としてデビューした。
代表作に、結核罹患体験を基にした『巴里に死す』(昭和17年)、天理教教祖に関する『教祖様』(昭和34年)、自身の生い立ちにそって時代背景を描いた大河小説『人間の運命』(昭和37年~昭和43年)などがある。

現在、1階展示室で戦後70年連動企画展として、「光治良と戦争展(第1回)」をやっている。
光治良の戦時体験を基に書いた作品等を紹介し、併せて初出資料となる当時の日記等を展示している。
第1回は、主に太平洋戦争前から戦中までである。
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配付資料の中に『私の憲法観』という文章があった。
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次のような文章で始まっている。

憲法の條文が公に問題になる時は、國家に、不幸な暗雲がおそいかかる前兆のような気がしてならない

現在のことのように錯覚しそうだが、「世界」の昭和29年8月号に載ったものだ。
昭和29(1954)年は、以下のような出来事があった年である。
3月 第五福竜丸事件
6月 ソ連で史上初の原子力発電所が稼働
9月 洞爺丸事故
11月 「ゴジラ」第1作劇場公開

光治良の文章は、7月1日に発足した自衛隊が憲法で許されるのかどうか、という議論があったことを踏まえている。
自衛隊は、以下のような任務を行う実力組織である。

自衛隊法第3条第1項により「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」ものとされ、人命救助などの災害派遣や国連PKOへの派遣などの国際平和協力活動を副次的任務とする。
Wikipedia

憲法第9条第2項にいう「戦力」に該当するか否かが問題とされたが、政府見解は「戦力」にあたらない組織とされてきた。
この解釈が定着してきたわけであるが、集団的自衛権(つまり他衛)の行使ということになると、事情は異なるのではないだろうか。

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2015年10月 1日 (木)

「女性の活躍」=出産と考える愚/日本の針路(236)

かつて柳沢伯夫厚労省が、女性を「子どもを産む機械」に例えて顰蹙を買ったことがある。

柳沢伯夫厚生労働相は27日、松江市で開かれた自民県議の決起集会で、「産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と女性を機械に例えて少子化問題を解説した。
柳沢氏は「これからの年金・福祉・医療の展望について」と題し約30分間講演。出生率の低下に言及し「機械って言っちゃ申し訳ないけど」「機械って言ってごめんなさいね」との言葉を挟みながら、「15-50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と述べた。
女性は「産む機械、装置」 松江市で柳沢厚労相

どうも自民党は学習能力が欠如しているようである。
安倍晋三首相が新「3本の矢」政策を打ち出した。
第1の矢である「強い経済」政策としては、名目GDP(国内総生産)600兆円という目標を掲げた。

7月に公表された政府の中期財政試算において示された「経済再生ケース」では、年率3%の名目成長を続けて2020年度に594兆円になると試算しており、全く新しい数字が出たわけではない。しかし、その実現性に対し、多くの市場関係者が疑問視している。
同ケースでの経済成長率は名目3%だけでなく実質2%が前提。消費者物価指数(CPI)は2%近傍で中期的に推移する姿を描いている。だが、中国をはじめとする新興国経済が転機を迎え、世界的にディスインフレ圧力が強まるなかで、これらの高い目標を達成するのは容易ではない。前提成長率が実質1%弱、名目1%半ばの「ベースラインケース」では、2020年で552兆円にとどまる。
子育て支援や社会保障の充実という新しい第2、第3の矢の方向性は、市場でも賛同の声が多い。内需が弱々しいのは将来への不安があるためだ。人口問題や年金問題が解決に向かえば、国内消費も上向きの力が働きやすい。しかし、市場が求めているのはその具体策。総論だけでは、市場は期待さえも織り込めない。
アベノミクス相場、風向き変わり出した「第2ステージ」

そんな中で、菅官房長官が問題になりそうな発言をした。
福山雅治さんと吹石一恵さんの結婚公表を受け、女性の出産を促すような発言をしたのである。
まあ、結婚の祝辞として、「早く子どもを」という言葉はよくあることだろう。
しかし世の中には、子どもを産みたいのに産めない既婚者が大勢いる。
⇒2014年12月 9日 (火):悪いのは「産まない」か「産めない」か?/日本の針路(82)

安倍首相の「一億総活躍社会」というのは、総力戦という言葉とダブってくる。
「燃えろ一億火の玉だ」というわけである。
⇒2014年6月 4日 (水):超高齢社会と限界自治体/花づな列島復興のためのメモ(330)

そして「産めよ増やせよ」ということになる。
分かりやすいと言えば分かりやすいが、自民党執行部の感度を疑わせるのに十分だろう。

共産党の志位和夫委員長はツイッターで「『1億総活躍社会』(首相)、『たくさん産んで国家に貢献して』(官房長官)」と2人の発言を列挙。「この人たちの感覚は戦前と同じだ。こんな勢力は一刻も早く退場を!」と書き込んだ。
「産んで貢献」発言、野党批判 「強制してはならない」

次の国政選挙では、共産党もしくは共産党と選挙協力する政党へ投票しようと思う。
民主党は共産党の提案に乗らないようだから、選択肢から消える。
⇒2015年9月21日 (月):「国民連合政府」は成立するか?/日本の針路(233)

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