GDP600兆円よりも「卒成長社会」へ/アベノミクスの危うさ(57)
安倍晋三首相がアベノミクス「新3本の矢」の目標の1つとして掲げた「国内総生産(GDP)600兆円」の実現可能性はどうか。
経済同友会の小林喜光代表幹事は、GDPを600兆円に拡大する目標について、「あり得ない数値だと語った。
⇒2015年10月 5日 (月):「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ/アベノミクスの危うさ(54)
常識的に、2020年ごろまでに今から100兆円も上積みできるということについては、非現実的と考えるのが常識的だろう。
しかし、内閣府が16年末に予定するGDPの推計方法の見直しによって、意外と実現する可能性があるという。
経済規模を示すGDPは国連の「国民経済計算(SNA)」を基準に推計する。国連は08年、その基準を見直した。すでに米国、欧州連合(EU)、オーストラリアなどは新基準に移行した。
13年に新基準に対応した米国では、02~12年のGDPが3.0~3.6%増えた。日本も新基準の導入で「3%半ば前後」(内閣府)のGDPの増加が見込める。15年度の名目GDPの見込みは現行基準で504兆円。新基準では約20兆円かさ上げされる可能性がある。
GDPの押し上げに影響が大きいのは研究開発費の算入だ。現在は付加価値を生まない「経費」として扱い、GDPの計算時には除外してきた。
例えば自動車メーカーが国内で生産・販売したハイブリッド車は最終製品としてGDPに含めるが、車に搭載する小型エンジンの開発費はGDPから除いてきた。新基準では付加価値を生む「投資」と見なし、GDPに加算する。
GDP600兆円、意外に近い? アベノミクス「新3本の矢」
計算方法の変更というカラクリがあるというわけだ。
手品か詐術か?
しかし、それにしても前提となる名目3%成長の想定は現実的であろうか?
日銀によると、日本の潜在成長率は0%台前半から半ばである。
エコノミストの多くも非現実的と考えているという。
抜本的な成長戦略がないと高成長は実現しないだろう。
⇒2015年10月17日 (土):「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ・続/アベノミクスの危うさ(55)
そろそろ成長に拘る経済から脱却すべきではないだろうか?
卒成長社会のイメージをどう描くかを考えた方が生産的なような気がする。
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