「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ/アベノミクスの危うさ(54)
安全保障関連法が成立して安倍首相はさっそく「安保法の後は経済」と表明した。
9月24日、総裁選出後初めての記者会見を行い、「本日からアベノミクスは第2ステージに入る」とした。
第2ステージでは、(1)国内総生産(GDP)600兆円、(2)出生率1.8、(3)介護離職ゼロという新しい3本の矢を放つという。
“アベノミクス”第2ステージへ-安倍首相「GDP600兆円、経済最優先で臨む」
私などの世代にとっては、「安保の後は経済」は既視感たっぷりである。
岸信介内閣退陣を受けて発足した池田勇人内閣は、「経済のことは池田にお任せください」との言葉で発足し、「国民所得倍増」を掲げて高度経済成長を実現した。
安倍首相は1人2役を演じようというのだろうか?
それにしても経済成長の要因があるか否かが問題である。
経済同友会の小林喜光代表幹事は29日の記者会見で、安倍晋三首相が「新3本の矢」で掲げた、名目国内総生産(GDP)を600兆円に拡大する目標について、「あり得ない数値だ。政治的メッセージとしか思えない」と実現性に疑問を示した。
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GDPを490兆円余(2014年度)から600兆円に増やす目標は、名目で年3%超の経済成長が前提になるとして、「とてもコミットできる数値ではない」と突き放した。
GDP600兆円目標「あり得ない」 経済同友会
まあ、池田内閣発足当時は、「所得倍増」もスローガン的に捉えられていたのだから、空想的というのは批判にならないだろう。
スローガンは人々を鼓舞する力となって現実をも動かすこともあり得る。
しかし現在「GDP600兆円」あるいは「名目で年3%超の経済成長」が人々を鼓舞し得るであろうか?
私は否と考えるものである。
8月の第1週、個人投資家が占める売買シェアは21.9%だった。ところが、9月の第1週は15.9%まで下がっている。個人投資家が「アベノミクスは崩壊する」と警戒している証拠だろう。そもそも、この2年間、GDPはゼロ成長なのだからアベノミクスが失敗に終わったことはハッキリしている。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。
「アベノミクスが失敗に終わった最大の原因は、トリクルダウンが空振りに終わったことです。この2年間で企業の収益は3割以上拡大していますが、実質賃金はまったく上昇していない。労働分配率は5%も下がり、正規労働者の割合も2年前の65%から62%に低下している。これでは個人消費は伸びない。GDPの6割を占める個人消費が冷え込んだままでは、景気がよくなるはずがありません」
弱者ほど貧しくなるのが、アベノミクスだ。「下流老人」が流行語となり、国民の62.4%が「生活が苦しい」と答えている。恐ろしいのは、11月以降、日本経済はさらに悪化する恐れが強いことだ。
アベノミクス“第2ステージ”で日本経済は完全に破壊される
第2ステージというなら、第1ステージの総括がなければならないだろう。
アベノミクスは成功したのだろうか?
異次元の金融緩和によって人為的に株高が演出された以外に、見るべき実績はないと考える。
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