「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ・続/アベノミクスの危うさ(55)
安倍首相は、安保から経済へと60年安保の「成功体験」を繰り返したいようだ。
⇒2015年10月 5日 (月):「安保の次は経済」という2匹目のドジョウ/アベノミクスの危うさ(54)
しかしそうは問屋が卸すまい。
1959年、IOC(国際オリンピック委員会)は、アジアで初のオリンピックを東京で開催することを決め、日本中が大いに盛り上がった。
岸信介の後を継いだ池田勇人は、60年10月24日、衆議院を解散した。
解散にあたり「日米安保新条約の決定をめぐって生じた社会的緊張をすみやかに解消し、清新にして明朗な民主政治を確立することは、国民の圧倒的な要望でありました」という声明を発表した。
同時に翌25日、首相の諮問機関である「経済審議会」は「所得倍増計画」の答申案を発表し、政策転換を明確にした。
所得倍増計画と東京オリンピックへの期待から、11月20日に行われた衆議院選挙では自民党が296議席を獲得し大勝した。
「安保解散」と言われ、しかも解散の直前に社会党の浅沼稲次郎委員長が右翼の少年によって刺殺されるという事件があったにもかかわらずである。
安保前の総選挙より10議席近く議席数を増やしたのだった。
確かに表面上類似しているように見える点がいくつかあるのである。
「バブル崩壊」「リーマンショック」という長いトンネルは四半世紀も続いてきました。戦後の混乱からの脱出が「所得倍増計画」だったとすれば、企業は積極設備投資を…首相「官民対話」で要請トンネルからの脱出は「アベノミクス」で、ということになります。
また、ここでも東京オリンピックが重要な役割を果たすことになります。国立競技場やエンブレムでつまずいていますが、オリンピックが近づくほど、国民の関心はそちらに向けられて行くことになります。経済的効果への期待も高まっていくでしょう。「安保から経済へ」の歴史が再び繰り返されることは目に見えています。
そうした意味で今回の安全保障関連法を巡る動きは60年安保の「ミニ版」に見えます。そう言えば、主役も祖父と孫ですから当たり前かもしれません。
「安保から経済へ」 二匹目のドジョウはいるか
安倍首相は、16日、経済団体の代表らとの話し合いで、企業の設備投資を要請した。
安倍首相は「企業収益は過去最高となったが、投資の伸びは十分ではない。今こそ企業が設備、技術、人材に対して積極果敢に投資していくべき時だ」と強調し、経済界に前向きな対応を要請した。
円安の追い風を受け、製造業を中心に企業業績は総じて好調だが、個人消費や企業の生産活動の停滞で、景気は足踏み状態が続いている。設備投資拡大を後押しすることで、経済の好循環につなげたいという狙いがある。
企業は積極設備投資を…首相「官民対話」で要請
しかしこれは何の意味もない要請というべきであろう。
企業はチャンスだと考えれば他人に言われなくても投資を行う。
今の環境を、投資をしても需要が見込めないと判断しているのだ。
高度成長期と長期停滞期の現在とでは、決定的に事情が異なっている。
東京新聞10月17日
二匹目のドジョウはいないと考えるのが常識だろう。
のですました。選挙直後の議員数としては戦後最高の数字という勝利でした。
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