高尾山古墳の文化遺産学/やまとの謎(107)
8月30日に行われた赤塚次郎氏による『スルガ國誕生と高尾山古墳/文化遺産「高尾山古墳」が語りかけるモノ』はいろいろ示唆に富むものであった。
⇒2015年9月 5日 (土):アズミ系倭人とアズマの領域/やまとの謎(105)
講演会の要旨が沼津朝日新聞の9月13日号に載っている。
私は邪馬台国については、「魏志倭人伝」が根本資料であって、考古資料はあくまで補完材料と考える。
しかし、「魏志倭人伝」の情報からだけでは不十分であるということも分かっている。
赤塚氏の講演では、高尾山古墳を文化財として考えるのではなく、文化遺産として考えるという視点が新鮮だった。
それは遺跡からどういう物語を紡ぎ出すかということでもある。
ヒストリーはハイストーリーだという言葉を連想した。
物語というのは、人間が感じられるような歴史観ということではなかろうか。
ビジネスの世界では「見える化」などというが、見えにくいモノを可視化する努力は重要である。
特に、人間については、精神性について語らなければ、ほとんど意味がない。
精神性を探究してきたのは、文学を筆頭とする文系学問である。
その意味でも、文科省の文系軽視の大学改革は如何なものかと思う。
⇒2015年9月14日 (月):文系学部狙い撃ちの愚/知的生産の方法(126)
弥生時代後期の2世紀は、気象変動で寒冷化が進み、長雨や洪水が頻発した時代だったとういう。
有名な静岡市の登呂遺跡も、西暦127年の洪水で埋まったということを、前回の静岡大学篠原和大教授の『高尾山古墳の語るもの』という講演で聴いた。
⇒2015年7月21日 (火):歴史理解のための地政学/技術論と文明論(31)
赤塚氏は、この気象変動による食糧不足による社会不安が、山の部族と海の部族を統合するリーダーを生み出した。
それが山の部族の集住遺跡と考えられる標高100メートル地点の足高尾上遺跡群と海の部族の遺跡群と考えられる狩野川下流遺跡群の中間地帯に高尾山古墳が存在する背景ではないか。
赤塚氏は、高尾山古墳を現地で現状保存すべきだという。
その理由は次の2点である。
1.高尾山古墳は1800年間自然災害に耐えた。それは優れた古墳の築造技術があったからであり、それらはまだ未解明で残されている。
2.高尾山古墳は2つの部族が統合されて古代のスルガ國が形成されたことを示す位置に作られいる。位置そのものが重要な意味を持つ。
この古墳を残せるかどうかは沼津という地域の文化のバロメーターになるのではなかろうか。
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