安保デモ報道とメディアの立ち位置/日本の針路(225)
安全保障関連法案に反対する市民団体が8月30日国会近くで集会を開いた。
東京新聞8月31日
主催者発表で約12万人、警視庁発表で3万3千人が参加した。
デモの様子は地上5mの鳥の目で撮影した動画がある。
鳥の目線で撮影したデモの様子は動画をみてください。4分21秒あります。
https://youtu.be/6ohr-TAI14M
8月30日、安保法制反対の抗議活動 地上5メートルからの観察/日比谷公園から国会前まで
デモの参加者等の報道の仕方で、メディアの立ち位置が良く分かる。
まず、海外の反応。
BBCは「日本の若者は政治に無関心で無気力だと批判されるが、彼らは目覚め、沈黙することを拒否しているようだ」と報じた。デモ参加者へのインタビューを交えながら、「(安倍晋三首相が)この声を聞いているのかが問題だ」とも。英紙フィナンシャル・タイムズは、中国の領土的野心への懸念から法案が準備されたと伝え「安倍首相は軍国主義の過去から学んでおらず、中国も同じ道を歩む危険がある」とのデモ参加者の声を紹介した。
日本と同じ敗戦国で現在は北大西洋条約機構(NATO)の集団的自衛権に基づく作戦に参加しているドイツも関心を見せ、第1、第2公共テレビはそろって30日夜のメインニュースで取り上げた。安保関連法案を「戦後初めて自衛隊を海外での戦闘に参加させる法案」と解説し、「平和主義からの決別に市民が反対している」「安倍首相は9月中の法案成立を願っているが、逆に市民の反対は増えている」と伝えた。米CNNや通信社も「ここ数年で最も大きなデモの一つだ」(ロイター通信)などと報じた。
安保デモ:海外が注視…BBC「日本の若者は目覚めた」
これに対して、NHKは?
イギリスBBCは30日、東京の国会議事堂前で実施されたSEALDsの「100万人デモ」の現場からの中継をトップニュースで伝えた。マレーシアの首相退任要求デモと同列の扱いで重視していた模様。なお、NHKは30日夕方現在デモを報じておらず、夜のワイドニュースになって初めてデモを報じた
イギリスBBCがトップニュースでSEALDs国会100万人デモを中継 NHKは無視
さすがに、籾井会長にした効果か?
国内新聞の報道は、東京新聞の斎藤美奈子さんの「本音のコラム」9月2日が『新聞の立ち位置』が次のように書いている。
朝日新聞は一面のほか二面、社会面でこれを扱い、毎日新聞も一面で報道、社会面には抗議活動の広がりを示す全国地図を掲載した。
苦笑したのは読売新聞だ。社会面に載った小さな記事の見出しは「安保法案『反対』『賛成』デモ」。二十九日に新宿で行われた賛成デモ(主催者発表で五百人)と、国会前の反対デモ(同十二万人)を同列に扱い、さも意見が拮抗している風を装う。写真も二枚。
が、ここまではまだマシ。笑いが引きつるのは産経新聞だ。社会面の記事の見出しは「周辺、雨中騒然」。・・・・・・「デモ=騒擾」とみなす姿勢がありあり。
・・・・・・
読売が御用新聞風なら悪意に満ちた産経の報道は、もはや市民の敵レベル、特高警察風である。市民運動に対する認識も五十年古い。ジャーナリズムの看板をもう下ろしたら?
産経新聞はご丁寧にデモ参加者を独自に試算している。
試算は上空から撮影した正門前で警備にあたっていた警察車両の前に機動隊員が15人並んでいたことを基準とした。そこに面した正方形部分(矢印)の人数を約225人と計算。白枠の正方形はその16倍で約3600人とした。9つの白枠全てが参加者で埋まっても国会前は約3万2400人となった。
安保法案反対デモ、本当の参加者数を本社が試算
何で9マスだけ数えたかは不明だが、警視庁発表より少ない数とするのは驚きである。
産経が試算した3万2400人でも十分多いという声もあるが、橋下徹大阪市長(大阪維新の会代表)は31日、自身のツイッターで「日本の有権者数は1億人。国会前のデモはそのうちの何パーセントなんだ? ほぼ数字にならないくらいだろう」とつぶやいた。
60年安保の時に岸信介首相(当時)が言った「デモをしている人よりプロ野球を見ている人のほうが多い」とそっくりである。
岸と安倍はもちろん血族であるが、白井聡さんの言う「永続敗戦」のレジームで繋がっている。
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