大学は都心にく回帰する/知的生産の方法(127)
1970年代後半から1990年代にかけて、少なからぬ大学が郊外に広大なキャンパスを取得し移転した。
郊外移転の経緯を、Wikipediaでは以下のように解説している。
もともと第二次世界大戦前から大手民間鉄道各社が沿線開発の一環として大学などの高等教育機関を招致する動きを見せていた。一番積極的であった東京急行電鉄は、旧制東京高等工業学校(現在の東京工業大学。関東大震災翌年の1924年に大岡山へ移転)や旧制慶應義塾大学予科(1934年に日吉に移転。)、旧制東京第一師範学校(現在の東京学芸大学。1936年に碑文谷へ移転、現在は小金井へ再移転。)、旧制府立高等学校(高等科の後身が東京都立大学、現在の首都大学東京。1932年に八雲へ移転、現在は八王子市へ再移転)などを沿線へ誘致している。
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これが顕著になるきっかけは文部省が1960年代後半から、都市部への大学の極度の集中を防ぎ、地域間格差を是正するため、東京23区内および大阪市周辺に本部を置く大学が昼間学部の学部・学科増設や定員の増加を申請してもこれを認可せずに抑制していく方針をとったことである。
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この頃郊外ではニュータウン開発などが進み、都心部の人口増加には歯止めが掛けられたが、昼間人口は依然として増え続けていたため、大学の郊外移転を進めたいとする考え方があった。
学部増設・定員増加を希望していた大学側もこの動きに乗り、1970年代前半から徐々に一部の学部やこ教養課程を郊外へ移転する大学が増えた。
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この動きに他の大学も追従、相次いで郊外へ全面移転する大学が現れた。国立大学でも国家プロジェクト的な郊外移転といえる筑波大学をはじめとして、蛸足大学状態解消を名目に、全国的に郊外の広い用地を確保した上での移転が目立った。
しかし、郊外に移転した大学の都心回帰の動きが著しい。
少子化時代を迎え、大学の学生獲得競争は激化している。
予備校も転換期を迎えて業態変革を迫られている。
⇒2014年8月26日 (火):代ゼミ7割撤退の意味/ブランド・企業論(31)
大妻女子大では現在、文学部と家政学部の1年生が狭山台キャンパス(埼玉県狭山市)で学んでいるが、来春から全学生を東京都千代田区の千代田キャンパスへ移転する。さらに、平成28年以降にも、比較文化学部や社会情報学部の学生らを多摩キャンパス(東京都多摩市)から千代田キャンパスへ移す計画を進めている。
大妻女子大の伊藤朋恭副学長は「学生目線に立った場合、都心の方がインターンシップや就職活動などが圧倒的に有利となる。さらに学生生活の面でも、キャンパスが都心と郊外の2カ所に分散している場合、郊外キャンパスの学生が不公平を抱きがちになる傾向もある」と説明する。
こうした郊外から都心へのキャンパス移転は大妻女子大だけにとどまらない。昨年には明治大が東京都中野区に、拓殖大が文京区にそれぞれキャンパスを整備。東京理科大は28年、埼玉県久喜市の経営学部を新宿区の神楽坂キャンパスに移転する。近畿や東海地方でも同様だ。同志社大や南山大、立命館大などが郊外から都市部へとキャンパス機能を移転したり、移転の計画を進めている。
「明治」「理科」「同志社」「立命」…都心に回帰する大学次々の背景
受験生の大学・学部選択の主要因が立地である。
かつて日本の大学にして、理想的な環境と設備を持って慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の総合政策、環境情報の2つの学部が凋落しているという。
原因は藤沢のチベットと言われるほど僻地であることが、学生から敬遠されているからだ。
大学にとって、企業の粗利に当たる「帰属収入」のおよそ8割は、受験手数料、入学時納付金、それに授業料から成り立っている。
受験生の確保、入学者の確保は至上命題であるから、大学の都心回帰は必然であろう。
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