学力テストの狙いと使い方/知的生産の方法(125)
文科省の全国学力テストがまた話題になっている。
わが静岡県は、結果の公表の仕方をめぐり、川勝平太知事が波紋を呼んだことがある。
⇒2014年9月 6日 (土):全国学力テストの意義と公表の仕方/日本の針路(38)
⇒2013年9月12日 (木):全国学力テスト静岡県の乱/花づな列島復興のためのメモ
今度は、大阪府教育委員会が文部科学省の反対を押し切って、来春から全国学力テストの結果を高校入試に利用するという。
学力テストは毎年、原則すべての小学6年生と中学3年生が参加して行われる。
今年は国語、算数・数学のほか、理科が3年ぶりに加わった。
理科のテストは、科学技術人材の育成が課題となるなか、子どもたちの理科離れが指摘されていたことなどから学力を把握し授業の改善につなげようと3年前に全国学力テストに導入されました。ただ、3年前は抽出調査で、全員が対象となったのは今回が初めてです。テストでは、観察や実験の結果を分析し考察したり説明したりする力に課題が見られました。
設問3(6)小学校で正答率が最も低かったのは、実験結果を見ながらものの溶け方の規則性を答える問題です。水100ミリリットルを50度に温めてから砂糖を溶かし、冷蔵庫で5度まで冷やすと容器の底に砂糖がたまっていたという想定で水の温度と砂糖が溶ける量の関係を示したグラフを参考に、溶けきらなかった砂糖は何グラムかを答え、その理由も記述します。正しく答えられたのは29.2%でした。
全国学力テスト 理科は実験分析などに課題
学力テストの狙いは、学力の傾向を把握し、授業や指導の改善などの対策に資することである。
リケジョなどとブームを煽るのではなく、地道に好奇心を育てたい。
入試に使うとなれば、学校の序列化に伴う点取り競争に陥ることは必定であろう。
それは健全なこととは言えない。
文科省の見識が問われるところである。
二〇〇七年に現行の学力テストが復活してからも、成績の取り扱いをめぐり度々問題が持ち上がる。
かつての失敗を繰り返さないよう、文科省は市町村別や学校別の成績公表を禁じていた。ところが、情報開示や説明責任を理由にルール破りの自治体が相次ぐと追認に転じた。それで大阪府を翻意させられるのか。
毎年かつ全員参加方式は見直すべきだ。もはや一点刻みの競争教育の時代ではない。子どもの人格に目を向けた教育力を磨きたい。
全国学力テスト 入試利用は競争あおる
今回、すべてのテストで正答率の低い地域と全国平均との差が縮まっているという。
底上げによって学力の平準化が進んだのなら好ましい。
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