撤回は国民の理解が得られないためか?/日本の針路(224)
2020年東京五輪の公式エンブレムについて、大会組織委員会は1日、エンブレムの使用中止を正式に決めた。
東京新聞9月2日
この問題は、明らかにされていない経緯もあるので軽々に言うべきではないだろうが、使用中止 は順当な結論ではあると思う。
当初は、ベルギーのリエージュ劇場のロゴに似ていると指摘された。
この時、佐野氏は断固模倣を否定したのであるが、その後サントリーのバッグのデザインについて、スタッフのコピーを認めた。
原案は似ていなかったという組織委の釈明が、藪を突いたような結果になった。
⇒2015年8月30日 (日):デザインにおける模倣と創造/知的生産の方法(124)
修正の過程で劇場のロゴに似たとすれば、その責任はどこにあるのか?
そもそもの原案が、別のポスターに似ているのではないか、と指摘された。
使用事例として佐野氏が示した図が、コピーしたものであった・・・・・・
結局、佐野氏が「原作者として」案を取り下げたので、組織委としても撤回したという説明である。
組織委の武藤敏郎事務総長は記者会見で、制作したアートディレクター、佐野研二郎氏(43)から取り下げの意向が示されたことを明かし「このままでは国民の理解が得られない」と撤回の理由を説明した。佐野氏も同日夜、「模倣や盗作は断じてしていないが、批判やバッシングで今の状況を続けるのは難しい」とのコメントを出した。
五輪エンブレム撤回:佐野氏「国民の理解得られない」
要するに、「盗用ではなかったが、国民に理解されない」、、使用中止はあくまでエンブレム原作者であるデザイナーの判断であって、組織委員会は悪くないと言っている。
混乱を招いた責任を取る気配はみじんもない。
国民の理解が得られないとは、国民が悪いかのような言い方である。
安保法案も同じであるが。
またしても無責任の体系が露呈したといえよう。
⇒2015年7月23日 (木):五輪招致演説に表出した無責任の構造/人間の理解(16)
遠藤利明五輪担当相は1日、新国立競技場の整備計画の白紙撤回を含め、前代未聞の事態が続いたことについて「大変、残念だ。しかし、災い転じて福となすとの言葉もある。疑念をすっきりさせたうえで、透明性を高めて、新しく決めてほしい」と述べた。
まったく他人事のようであり、これでは決して「災い転じて福となす」というようにはいかないだろう。
新国立競技場とエンブレムには共通するところがある。
不透明な選考過程と権威主義である。
サントリーがいち早く佐野氏のデザインに決着をつけたことに比し、五輪組織委は親方日の丸的ではないか。
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