社会的存在としての企業のあるべき姿・小林陽太郎/追悼(75)
経済同友会の元代表幹事で富士ゼロックス元会長の小林陽太郎さんが5日、左慢性膿胸のため亡くなった。
1933年(昭和8年)4月25日生まれで、82歳だった。
富士ゼロックスの親会社、富士写真フイルム(現・富士フイルムホールディングス)を世界的企業に育てた小林節太郎元社長(故人)の長男で、慶大経済学部卒。米ペンシルベニア大ウォートンスクールを修了後、1958年に富士写真フイルムに入社。63年、設立されたばかりの富士ゼロックスに移り、78年に44歳で社長に就いた。
企業の「社会的責任」や企業の意思決定に内外の監視機能が働くようにする「企業統治(コーポレートガバナンス)」の必要性を早くから主張した。富士ゼロックスの販売本部長時代、公害問題への批判も込め、「モーレツからビューティフルへ」というキャッチコピーで広告宣伝を展開したのもその一環だ。
社長時代には品質管理の取り組みが評価され、デミング賞実施賞を受賞。90年には国内で初めてボランティア休職制度を導入するなど「個の発想を重視した新しい働き方」を提唱した。
財界活動にも積極的に参加し、99~03年に経済同友会の代表幹事を務めた。日本の財界団体のトップに外資系企業の経営者が就くのは初めてだった。米国型の市場主義の重要性を踏まえつつも「最終ゴールではない」として、市場主義一辺倒ではない企業や経済のあり方を模索した。
富士ゼロックス元会長の小林陽太郎さん死去 82歳
経済同友会では、「企業白書」というレポートを不定期で発行している。
小林さんが会長任期に、小林会長の肝いりで作成された「第15回企業白書」が『「市場の進化」と社会的責任経営』である。
「企業白書」は、格調の高さを誇る(競う?)が、このレポートもまことに格調が高く仕上がっている。
一言で言えば、進化しつつある企業環境(すなわち市場)において、今後企業はCSR(企業の社会的責任)を基軸にした経営にシフトしなければならない、というものである。
キレイごとではないかという批判は当然起こりうるだろう。
しかし、東芝の大規模な不適切会計(粉飾)が伝えられる中では、一段とリアリティを増すのではなかろうか。
小林氏は、1978年44歳で社長に就任したが、 社長に就任してまもなく「マーケットインからソサエティインへ」を掲げ、「モーレツからビューティフルへ」というメッセージを打ち出した。
電通で「モーレツからビューティフルへ」を担当した藤岡和賀夫氏も先日亡くなったばかりである。
⇒2015年7月29日 (水):「少衆VS分衆」論争・藤岡和賀夫/追悼(73)
まだまだ高度成長の空気に包まれている頃であり、時代に先駆けた発想だった。
社会全体に「反知性主義」のムードが蔓延している中で、大所高所からの情報発信が期待されるところだった。
合掌。
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