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2015年8月30日 (日)

デザインにおける模倣と創造/知的生産の方法(124)

2020年の東京オリンピックは、招致決定の際の高揚感が雲散霧消した感じである。
その潜在的な要因は、招致の時の安倍首相のプレゼンにあるように思う。
原発の汚染水漏れ事故が、焦点の1つになっていた。
⇒2013年9月 6日 (金):オリンピック招致と福島原発事故/原発事故の真相(82)

安倍首相は、福島原発事故の汚染水について、「状況はコントロールされている」「汚染水は港湾内で完全にブロックされている。健康問題は今もこれからも全く問題ないことを約束する」とスピーチした。
⇒2013年9月24日 (火):「嘘も方便」首相と日本の将来/花づな列島復興のためのメモ(264)

その時点でコントロールされている状況とは言えないことは明らかだった。
⇒2013年10月23日 (水):汚染水の流出は止められるか?/原発事故の真相(91)
⇒2014年5月17日 (土):汚染水は完全にブロックされている?/原発事故の真相(113)
⇒2015年2月26日 (木):汚染水はコントロールされていない/原発事故の真相(128)

このことが、トゲとなって心に刺さったままであった。
メイン会場となる新国立競技場の計画についても杜撰な経緯が晒された。
新国立競技場のデザインをウリの1つにしていたにもかかわらず、計画への批判が高まると白紙還元して、支持率対策とした。
⇒2015年7月23日 (木):五輪招致演説に表出した無責任の構造/人間の理解(16)
競技場は予算を大幅に削減できる見通しだという。
ならば今までの検討は何だったのか?
経緯をオープンにすべきである。

追い打ちとなったのが、公式エンブレム問題である。
公募で佐野研二郎氏のデザインに決まった直後に、ベルギーの劇場のロゴに似ていると指摘された。
Photo
私も似ていると思ったが、盗作か否かの立証は難しいだろうな、と思っていた。

創造という行為は、無から有を生み出すのではなく、既存の材料の「新しい組み合わせ」だと言われる。
その過程は脳内のことなので、他人には理解しがたい。
盗作疑惑があった場合、それを立証するのは、盗作を主張する側が負う。
極論を言えば、「すべての創作は模倣である」とも言えるのだ。

しかし、佐野氏の場合、サントリーのトートバッグにも疑問が寄せられ、佐野氏は30種類のうち、8点を撤回した。
さらにはTシャツのデザインや名古屋市の東山動物園のロゴにも疑惑があるという。

こうなれば、逆に佐野氏側に挙証責任が移ったと考えるのが一般的常識であろう。
話をややこしくしているのは、オリンピックエンブレムの審査を行った永井一正さんの発言である。

 審査では「五輪とパラリンピックのエンブレムが互いに関連しつつ区別がつくかどうかや、メディアやグッズ、会場で使われる際の展開可能性も検討された」という。
 その後、大会組織委員会が佐野さんの案を商標登録するために、世界中の商標を確認。永井さんは「(原案と)似たようなものがほかにあったようだ。そのため佐野さんの案は、元のイメージを崩さない範囲でパーツを一部動かすなど、組織委の依頼で何度か微修正された」とした上で、「最初の案は(類似性が指摘されている)ベルギーの劇場ロゴとは似ていなかった。盗作ではない」と話した。
 組織委によると、ベルギーの劇場ロゴは商標登録されていなかった。修正されたものを各審査委員も確認し、発表されたという。
五輪エンブレム当初案「劇場ロゴと似てない」 審査委員

要するに、商標登録されていなかったベルギーの劇場ロゴには似ていなかったが、他の商標に似たようなものがあったということである。
大会組織委員会も、28日エンブレムを制作した佐野研二郎さんが最初に提出した「原案」を初めて公表し、「リエージュのマークには全くない特徴がいくつもあり、オリジナルだと確信している」と強調した。

 組織委によると、審査委員会が応募のあった104点の中から最終的に佐野さんの作品を選んだのが昨年11月。その時点では、アルファベットの「T」に、三角形や円を組み合わせた図形だった。商標登録に向けて国際オリンピック委員会(IOC)と組織委が世界中の商標を調べたところ、海外の会社が持つ商標と類似点があったため、佐野さんに作品の修正を依頼。今年2月初旬ごろ、佐野さんが最初の修正案を提示した。
 大きな円を中心に置いた最終案に近いデザインだったが、「躍動感が薄まった」とし、再度佐野さんに修正を依頼。約2カ月後の4月、最終的に発表されたデザインが提出されたという。
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五輪エンブレム原案初公表 組織委「オリジナルと確信」

組織委の弁明(?)の意図が分からない。
問われているのは最終案であって、当初案ではない。
そして以上のような経緯からすれば、責任は佐野氏から組織委に移ったと考えられる。

似ているか否かの線引きは難しい。
しかしかくなる上は、組織委は五輪エンブレムについても撤回すべきだろう。
こちらのコンペも白紙でやり直すべきだと考える。

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