『日本のいちばん長い日』と現在(3)/日本の針路(221)
お盆で久しぶりに姉たちと話をする機会があった。
7つ年上の姉は、終戦時8歳で玉音放送を覚えているという。
国民学校の学童だったが、大事な放送があると聞かされ、家にあったラジオで聞いたが、内容は良く分からなかったという。
玉音放送を実際に聞いたか否か、この差異は大きいのではなかろうか。
原作者の半藤一利さんは、1930(昭和5)年5月21日生まれ。
1945年3月の東京大空襲では逃げまどい中川を漂流し、死にかける体験をした。
15歳の時に玉音放送を聞き、戦争が終わった事は分かったそうだ。
Wikipediaにより略歴を見よう。
1953年に文藝春秋新社に入社した。同期入社に田中健五。流行作家の坂口安吾の原稿取りをして、坂口から歴史に絶対はないことと歴史を推理する発想を学び、冗談めかして坂口に弟子入りしたと称している。続けて当時『連合艦隊の最後』などで人気を博していた軍事記者の伊藤正徳の担当となり、日本中の戦争体験者の取材に奔走し、『週刊文春』に無署名で「人物太平洋戦争」を連載した。このときに歴史の当事者は嘘をつくことを学び、これらの経験が後に昭和の軍部を描いた作品を書く素地となった。
社内で「太平洋戦争を勉強する会」を主宰して、戦争体験者から話を聞く会を開催。ここから生まれた企画が『文藝春秋』1963年8月号に掲載された28人による座談会「日本のいちばん長い日」である。半藤は座談会の司会も務めた。さらに取材して1965年に単行本『日本のいちばん長い日――運命の八月十五日』を執筆。売るための営業上の都合から大宅壮一の名前を借りて大宅壮一編集として出版された。単行本は20万部、角川文庫化されて25万部が売れた。この他にも30代前半は編集者生活と並行して、太平洋戦争関係の著作を何冊か出す。
上記座談会には、終戦当時の松本瞬一外務次官、佐藤尚武駐ソ大使館員、迫水久常内閣書記官長、鈴木一首相秘書官、外地での捕虜体験者などが出席した。
1945年2月に英米仏にソ連が加わった4カ国会議でソ連の対日参戦が議論されていた。
海軍も陸軍も、現地駐在武官によりヤルタ会談の内容の情報を掴んでいながら、御前会議でこの情報を出さなかった。
海外情報を所管する外務省はこの事実を知らず停戦の仲介をソ連に働きかけていた。
読売新聞戦争責任検証委員会『検証 戦争責任〈2〉 』中央公論社(0610)によれば、昭和天皇や天皇の側近だった木戸幸一内大臣が終戦工作に向けて動き始めたのは、1945(昭和20)年6月に入ってからだった。
5月にドイツが降伏し、本土は連日空襲に曝されており、沖縄戦も必敗の様相だった。
しかし、6月8日の御前会議で、戦争を継続することが決定され、そのことを天皇から聞いた木戸内大臣は、「時局対策私案」を一気に起草した。
その中に、天皇の親書を奉じてソ連に和平の仲介を依頼し、和平交渉に入ることが盛り込まれていた。
⇒2007年8月14日 (火):終戦の経緯と国体護持
7月26日の「ポツダム宣言」も迫水内閣書記官長ですら直ぐには知らされなかった。
全体よrも自分の属する部門を優先する。
あるいは目標と目的の混同であろう。
⇒2015年8月12日 (水):目的と目標/「同じ」と「違う」(87)
結局軍人が自ら終戦に至らせることはできなかったのだ。
http://homepage2.nifty.com/smilenobori/tsubuyaki/2010/2010.08.htm
しかし象徴天皇は、政治判断はしない。
シビリアンコントロールさえないがしろにしようという最近の動向はきわめて危険である。
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