『日本のいちばん長い日』と現在(4)/日本の針路(222)
『日本のいちばん長い日』のクライマックスは、玉音放送の原盤を、戦争継続派の陸軍将校たちが争奪しようとした8月14日の「宮城事件」である。
「二・二六」事件を彷彿とさせるが、余り知られてはいない。
Wikipediaでは次のように説明している。
宮城事件(きゅうじょうじけん)とは、1945年(昭和20年)8月14日の深夜から15日(日本時間)にかけて、一部の陸軍省勤務の将校と近衛師団参謀が中心となって起こしたクーデター未遂事件である。
日本の降伏を阻止しようと企図した将校達は近衛第一師団長森赳中将を殺害、師団長命令を偽造し近衛歩兵第二連隊を用いて宮城(皇居)を占拠した。しかし陸軍首脳部及び東部軍管区の説得に失敗した彼らは自殺もしくは逮捕され、日本の降伏表明は当初の予定通り行われた。
中心人物の畑中少佐は、映画では売出し中の松坂桃李さんが熱演している。
原田さんは、東京新聞フォーラム『映画「日本のいちばん長い日」で考える日本が歩んだ終戦への道』で、次のように評している。
非常にいい感性をもっていますね。阿南とはいわば疑似親子関係にある立場を、例えば阿南が「納得できぬなら、まず阿南を斬れ」と諭すシーンでは血管が破裂しそうなほどの演技でした。『ゴッドファーザー」で、アル・パチーノが一気に化けたことを思い出しました。
安倍首相の「戦後70年談話」をめぐって、官邸と宮内庁の間で悶着があったらしい。
「談話」については、厳しい箝口令が敷かれていた。
報道の錯綜ぶりを「週刊ポスト」9月4日号の『偽りと厚塗りの安倍談話』は次のように伝えている。
安倍首相は8月7日に談話の「素案」を与党幹部に示したが、NHKが〈歴代内閣の立場継承を明記へ〉と報じたのに対し、日経(8日付)は〈70年談話「おわび」盛らず〉と打ち、朝日(9日付)や毎日(10日付)は首相が与党幹部に示した談話の素案には「おわび」の文言がなかったと報道。その後、一転、〈「侵略」明記へ 「おわび」表現検討〉(読売11日付)、〈「おわび」も言及へ〉(産経12日付)と変化していった。
問題は天皇の「おことば」との関係である。
「おことば」は、宮内庁の事務方が原案をつくり、天皇が目を通し、宮内庁長官らのチェックを経て、宮内庁記者クラブで文書配布される。
全国戦没者追悼式での「おことば」は14日夕刊締め切り後の午後3時以降に記者クラブに伝えられる。
宮内庁サイドは、「首相談話」に反省やおわびが盛り込まれるか、どんな表現になるのか、官邸に問い合わせをし、官邸サイドでは、「おことば」に何か新しいことが加えられるのではないか、と大騒ぎだったらしい。
「週刊ポスト」は、〈我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました〉と「現在完了形」で「反省」と「おわび」に言及し、天皇の「おことば」には、初めて「深い反省」の言葉が盛り込まれ、大きなニュースになったとしている。
⇒2015年8月15日 (土):安倍首相の「70年談話」を読む/日本の針路(213)
⇒2015年8月16日 (日):追い込まれつつある安倍首相/日本の針路(214)
両者について、ルモンド紙(仏)は「安倍首相は直接的には何も謝罪しなかった」、ガーディアン紙(英)は「日本の天皇は、第二次世界大戦について安倍首相以上に謝罪のトーンを強めたおことばを述べた」としている。
「戦後70年談話」の意図したものは何だったのか?
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