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2015年8月29日 (土)

集団的自衛権の根拠としたパネル/日本の針路(223)

集団的自衛権の行使が必要な理由を、安倍首相は2枚のパネルを用意して説明した。
そのうちの1枚を再掲する。
A 紛争地から邦人を救出する米艦の防護
Orightofcollectiveselfdefense570
⇒2015年7月 4日 (土):柳の下に二匹目のB層はいるか?/日本の針路(189)

首相は次のように説明した。

紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さんや、おじいさんやおばあさん、子どもたちかもしれない。彼らの乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない。

誰でも、母親が乳飲み子を抱いている姿を見れば、心を動かすだろう。
という下心が見え透く図柄であるが、このケースについては、次のような批判がある。
紛争が起こった場合、一般的には各国艦船は民間人を乗船させない。
軍の艦船は敵からの攻撃の標的になる可能性が高いため、民間人が巻き添えなりがちであり、避難民に化けたテロリストが乗り込んでくる可能性もある。
民間人の輸送は、民間の船や飛行機に要請する。

また、横畠内閣法制局長官は、公海上の米艦が他国の攻撃を受けた場合「日本への武力攻撃と認められれば個別的自衛権で対処できる」と答弁している。
首相のパネルはミスリードではないかという疑問があるが、中谷元・防衛相が、このパネルの意図を疑わせるような発言が出た。
26日の参院特別委で、米艦防護について「邦人が米艦に乗っているかどうかは絶対的なものではない」と述べたのだ。

邦人が乗船していなくても米艦を守るということであれば、集団的自衛権行使の目的は結局、日本人ではなく、戦争中の米国を守るということであろう。
それはそれで、集団的自衛権の説明としては納得がいくが、首相の説明とは大きく異なってくる。

中東・ホルムズ海峡での機雷除去も根拠が薄弱である。
パイプラインが敷設された現在、石油輸送にとってホルムズ海峡は絶対ではない。
石油や天然ガスが途絶すれば、大変な事態にはなるだろうが、現時点では途絶ということは考えられないのである。

詐欺的な政府の説明は限界にきている。
「法的安定性など関係ない」と立法よりも政府判断を優先するとしたら、昭和前期の軍部指導者と変わらない。
この人たちは、靖国に行って、何をお祈りするのだろうか?

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