70年談話有識者懇談会報告書/日本の針路(209)
安倍首相の出す戦後70年談話が注目されている。
談話のために、「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」が設置され、「21世紀構想懇談会」と略している。
その報告書が6日首相提出された。
東京新聞8月7日
◇21世紀構想懇談会の報告書・骨子◇
・日本は満州事変以後、大陸への侵略を拡大し、無謀な戦争でアジア諸国に多くの被害を与えた
・1930年代後半から植民地支配が過酷化
・日本は先の大戦への痛切な反省に基づき、20世紀前半とはまったく異なる国に生まれ変わった
・戦後70年の日本の平和主義・国際貢献路線は国際社会と日本国民から高い評価
・中国、韓国との和解は完全に達成されたとはいえない
報告書で「侵略」をどう取り扱うかが1つの焦点だった。
戦後七十年談話をめぐっては、村山談話を引き継ぐかどうかが国内外の最大の関心だが、懇談会は直接のテーマにしなかった。首相が村山談話をそのまま引き継ぐことに消極的だからとみられる。
それでも、村山談話のキーワードである「侵略」は委員の関心が高く、会合でも発言が相次いだ。議事録によると、委員からは「侵略でなかったと記すことは当時の常識からいってもあり得ない」「国際法からみても侵略と言わざるを得ない」と侵略を明記するよう求める意見が出された。これに対して、「現在の価値観で『あの戦争は侵略』と断定するのがいいことなのか疑問。五十年に用い、七十年談話でも用いるべきなのか」と反対意見も出された。
「侵略明記を」に重み 70年談話 私的有識者懇近く報告書
侵略に関し、報告書は「世界の大勢を見失い、無謀な戦争でアジアを中心とする諸国に多くの被害を与えた」とした。
そして、「30年代以後の日本の政府、軍の指導者の責任は誠に重い」としているが、「侵略」の記述に関しては複数の委員から異議が出たことを脚注で紹介した。
北岡伸一座長代理は記者会見で「1人が賛成できないと言い、同調がもう1人いた」と述べ、16人の委員のうち異論は2人だったことを明らかにした。
首相よりの懇談会においても、「侵略」とすることに異論だとする意見は、2人だけであった。
座長の西室泰三日本郵政社長は、会見で「この中から何をくみとってどうするかは、首相にお任せする」と述べたが、安倍首相が「侵略」という表現をつかうかどうかが注目される一点である。
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