五輪招致演説に表出した無責任の構造/人間の理解(16)
安倍首相は、2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場建設計画を、白紙に戻すと表明した。
⇒2015年7月17日 (金):新国立競技場の見直しだけで終わらせない/日本の針路(198)
⇒2015年7月20日 (月):新国立競技場の混乱に関する舛添都知事の批判/日本の針路(200)
明らかな支持率対策であるが、2年前の五輪招致演説では、白紙にしたデザインを念頭に、独創的なスタジアムでの開催をアピールし、財政措置を確実に実行すると明言していた。
演説で、福島第一原発事故の状況について、実態と全く乖離した発言をしていたことを聞き、この人の言うことは信用しないことに決めた。
⇒2015年1月 5日 (月):福島原発事故による海洋汚染/原発事故の真相(124)
⇒2015年2月26日 (木):汚染水はコントロールされていない/原発事故の真相(128)
演説では、福島第一原発事故について「私から保証します。状況は統御(アンダー・コントロール)されています」と明言した。しかし、汚染水が海に流出し続けるなど、原発事故は収束には程遠い状況だった。政府は今年六月の廃炉に向けた中長期ロードマップ(工程表)改定でも、使用済み核燃料の取り出し開始時期を大幅に遅らせており、現在も原発事故対応をコントロールできているとは言えない。
招致演説では、競技場について「ほかのどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから、確かな財政措置に至るまで、確実な実行が(東京で開催すれば)確証される」と断言した。
新国立競技場は、民主党政権時の一二年十一月に日本スポーツ振興センター(JSC)が選定したデザイン。女性建築家ザハ・ハディド氏による、二本の巨大アーチ構造が特徴だ。このデザインについては一三年八月、世界的建築家の槇(まき)文彦氏が大幅な見直しを求める論文を公表した。首相はその約一カ月後に、新国立競技場を招致の目玉としてアピールした。
ザハ氏のデザインは、東京五輪開催が決まる「大きな原動力」(菅義偉(すがよしひで)官房長官)になったと政府内では受け止められている。自民党議員は「五輪招致の決定で重みを持ったのは事実」と指摘する。
首相は「民主党政権時代にザハ案でいくことが決まった」と強調するが、安倍政権も招致に最大限利用したことは否定できない。財政措置をめぐっても、既に確保できたのは五百億円のみ。当初見込んでいた工費千三百億円にも及ばない。
首相、2年前の五輪演説も白紙? 「独創的スタジアム」「福島統御」
安倍首相の虚言は、詐欺師の域に達している。
⇒2015年5月24日 (日):詐欺師のレトリックを多用する安倍首相/日本の針路(164)
よもやこれで支持率が回復することもないと思うが、白紙になっても今までの経緯は不問ということのようだ。
白紙還元により、ザハ氏への違約金を別にして、既に発生した60億円とも言われる費用は戻らない。
誰も責任を取らなくていいのか?
安倍首相も森組織委委員長も遠藤担当相も全体の責任という。
確かに全体としての結果ではあるが、誰の責任かを明確にしないと同じことを繰り返すことになろう。
ちなみに関わっている人物は下図のようである。
東京新聞7月23日
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