新国立競技場の見直しだけで終わらせない/日本の針路(198)
新国立競技場が余りに評判が悪いということで、見直すことになったらしい。
安保法案にまで影響しては大変だという思惑であろうか?
「重鎮」の森元首相まで、見直した方がいいと言い出す成り行きだ。
安倍総理大臣は、総理大臣官邸で、記者団に対し、東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新しい国立競技場について、「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで計画を見直すと決断した」と述べ、計画を見直す方針を表明するとともに、下村文部科学大臣らに新しい計画を速やかに作成するよう指示したことを明らかにしました。
新国立競技場 首相「計画を白紙に戻す」
詐欺師の面目躍如である。
安保法案の衆院強行採決で支持率が不支持率を下回ったことから、慌てて目先を逸らす決断をしたのだろう。
そのために肝いりのNHKで悪評を煽る。
何しろ、オリンピックのためならば、福島原発事故で海洋にダダ漏れなのにもかかわらず、平然と「完全にコントロールされている」と言い切った男である。
陸上の為末氏、有森氏、ラグビーの平尾氏などの著名アスリ-トたちが反対の声を上げたのも大きいのではないか。
出来レース以外の何物でもない。
先月まで日本ラグビー協会の会長も務め、現在は名誉会長の森元総理大臣は、民放の番組収録で、「2019年のラグビーワールドカップのために建設を急がなければいけないとおもしろおかしく言われるが、嫌ならやらなくていい。競技場がなければ開催できないので、間に合わなければ、ほかの競技場でやるしかない。ラグビーがターゲットにされるのは不愉快だ」と述べました。
そのうえで森氏は新しい国立競技場の建設について「計画は見直したほうがいい。もともと私はあのデザインは嫌だった」と述べ、計画の見直しに理解を示しました。
森元首相 新国立競技場計画見直しに理解
森氏の好悪は問題にはならない。
見直しは当然として、この連中の軽躁さには、ウンザリする。
森氏が産経新聞のインタビューで、次のように語っている。
五輪招致では「立候補ファイル」というのをJOC(日本オリンピック委員会)と東京都がIOCに提出するんだけど、その中に新国立競技場の全貌が書かれていて、IOC委員の投票の決め手になっているわけです。
2013年9月のブエノスアイレスのIOC総会で日本に投票した委員は「日本はこんなすごいものを造るのか」となった。それに安倍晋三首相は「他のどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから確かな財源措置に至るまで、その確実な実行が確証されている」と演説して大拍手だったわけよ。
森喜朗元首相 「新国立競技場の経緯すべて語ろう」
まったく他人事のように喋っているが、自分の責任は何もないと言うのだろうか。
ついこの間まで、新国立競技場のデザインは国際公約だと言っていたことの一端は、安倍首相の「他のどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから確かな財源措置に至るまで、その確実な実行が確証されている」という演説だ。
それが批判の盛り上がりに恐怖を覚えたのであろう。
手のひらを返したように見直すという。
ならば安保法案はどうか?
各地で、批判の声が高まっている。
7月13日の衆議院平和安全法制特別委員会の中央公聴会で、同志社大学の現学長・村田晃嗣教授が与党推薦の公述人として出席し、安保法案に対し、国際政治学者として肯定的立場からの発言を行った。
これに対し、同大教職員組合が批判している。
わたしたち平和を希求する同志社大学教職員有志は、現行憲法に違反する安保法案の成立に反対します。また、その法案に対し、本学の学長職にある教授が公的な場で支持を表明したことについて、心から恥ずかしく思います。同志社大学が教育理念の一つの柱に掲げてきた国際主義と、今回の村田教授の個人的見解とが一致するものではないことを、ここに表明するものです。
安保法案の成立に反対する同志社大学教職員有志の声明
下記の京大有志の声明書に続き、京都の大学で反撃の烽火が上がったのだと思う。
⇒2015年7月15日 (水):声明書・自由と平和のための京大有志の会/私撰アンソロジー(39)
政治に知的な営みを取り戻せ。
立憲主義を尊重する政治を求める学生たち(SEALDs)の運動と多様な分野の学者がドッキングせよ。
それが市民に波及して、知性のダイナミックなうねりが起きれば、安倍政権は潰れるだろう。
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