うるう秒のしくみと影響/技術論と文明論(29)
今朝、「うるう秒」が挿入されたことが話題になっている。
日常生活にはほとんど影響がないが、ICT(情報通信技術)が生活の隅々にまで浸透している時世だから、1秒といえども大きな問題を引き起こす可能性がある。
「うるう秒」は、地球が自転するスピードが僅かに変わることで生じる時刻のずれを調整するため、1日の長さを1秒長くするもので、1日、3年ぶりに世界で同時に実施されました。
日本の標準時を管理している東京・小金井市の情報通信研究機構では、調整の瞬間を見ようと地元の小中学生などおよそ1000人が集まりました。
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うるう秒は、一般のパソコンやスマートフォンではインターネットなどを通じて自動的に調整されますが、古い基本ソフトを使っているコンピューターシステムなどでは事前の対応が必要なケースがあります。特に今回は平日にうるう秒が実施されたため、予期しない不具合を警戒して社員を待機させるなどの動きも出ています。
情報通信研究機構の今村國康研究マネージャーは「日本の標準時を管理しているすべての機器でうるう秒の調整作業が終わり、正常に動いていることを確認できました。今後も正しい時刻を送るという役割を着実に果たしていきたい」と話していました。
「うるう秒」3年ぶりに実施
なぜ「うるう秒」が必要になるのか?
1秒の「定義」の問題である。
かつては地球の自転を基準にして1秒を決めていた。
太陽が真南に来る南中の1日の間隔を基に、その86400分の1を1秒とした。
86400=24×60×60 である。
しかし、自転の時間が、潮汐や大気などの影響でばらつきがあることが分かってきた。
そこでセシウム原子の振動数を基にする定義に変えようということになった。
1958年に、1秒=91億9263万1770振動としようということになった。
日本経済新聞6月27日
「うるう秒」により、コンピューター、特にサーバーが正常に動作しないことがあると言われる。
1999年12月31日から2000年1月1日になるとき、ソフトウェア業界は大騒ぎだった。
その頃は、年の表示に2桁を使い、日の特定を991231のように扱うのが一般的だった。
とすると、翌日の000101との連続性が保てない。
時間の間隔をどうするかということで、大規模な手直しが行われた。
同様の問題が起きる可能性がある。
そのため廃止論も根強い。
閏秒の存廃については、国際電気通信連合で議論があり、2013年に閏秒を廃止することを目指す提案もなされていた。しかし2012年1月の総会では2015年の総会まで結論を見送った。
廃止するべき理由としては、次のようなものが挙げられている。
- 閏秒があるとUTCは一様の尺度ではなくなる(例えば23:00 UTCから翌0:00 UTCの時間間隔が場合によって異なる)ので不便。
- 閏秒の調整を手動で行わなければならず、間違いや時計間の不整合が起こりやすい。航空管制システムなどのトラブルにつながる可能性もあり、人命への余計なリスクとなる。
- 一様の尺度が望ましい局面では、GPSの時系のように「ある時点のUTCと同期しつつ閏秒なし」という新しいシステムが用いられることがあるが、「ある時点のUTCと同期しつつ閏秒なし」は実際上、閏秒の数だけバリエーションがあり、時刻システムの乱立につながるうえ、相対的にUTCの価値・有用性・権威を低下させ、度量衡統一の観念にも反する。
一方、廃止に反対する理由としては、次のようなものがある。
- 天体観測・アンテナ制御などのソフトウェア、ハードウェアなどにはUT1-UTCの絶対値が1秒を超えないという前提で設計されているものも少なくなく、その前提が破れると大きな改修が必要になり、予期せぬトラブルの原因ともなる。
- 市民生活は依然地球の自転と同期しており、UT1-UTCの差が累積するのは好ましくない。
閏秒
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