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2015年7月11日 (土)

差別を生み出す構造へのアンチテーゼ・沖浦和光/追悼(70)

また気になっていた人が亡くなった。
沖浦和光氏である。

 沖浦和光さん88歳(おきうら・かずてる=桃山学院大名誉教授)8日、腎不全のため死去。葬儀は近親者で営む。しのぶ会を後日開く。喪主は妻恵子(やすこ)さん。
 大阪府生まれ。中学教諭などを経て桃山学院大教授。1982〜86年、学長も務めた。英文学専攻だったが、70年代前半、被差別民や漂泊民に研究テーマを変えた。研究対象は、国内の被差別民、漂泊民だけでなく、インド、インドネシアにも及んだ。著書に「幻の漂泊民・サンカ」「天皇の国・賤民の国」、共著に作家、故野間宏との「アジアの聖と賤」、俳優の故三国連太郎との「『芸能と差別』の深層」など多数。2012年、人権活動への取り組みが評価され松本治一郎賞を受賞した。
訃報:沖浦和光さん88歳=桃山学院大名誉教授

Wikipediaでは略歴を以下のように記している。

大阪府北部の西国街道に面した村の生まれ。小学校2年生のころに大阪市内の紀州街道沿いにある下町の長屋に引っ越す。1953年東京大学英文科卒業、大学院に進学。1961年桃山学院大学専任講師となり、のち助教授、1969年教授。1982年~1986年学長。1997年退任。
東大時代は共産党員で、極左派だった。英文学の論文をいくつか書いていたが、再度マルクス的民衆論に立ち返り、被差別民と被差別部落の研究に移行する。野間宏といくつかの共著を刊行、近年、古代以来の漂泊の民とされたサンカが、徳川時代後期の飢饉の時に生まれたものだとする説を提示した。
被差別民・漂泊民を研究対象としてその歴史を記述するため、結果としてアナール学派の方法論と類似するものとなっている。2012年、人権活動への取り組みにより松本治一郎賞受賞。

私は昔、「季刊クライシス」という雑誌に載っていた「人類史において<近代>とはなんであったか」という論文を読んだ記憶がある。
中身は忘れてしまったが、近代の行きづまりが具体的な形で表れていたので、マクロな視点に惹かれたのだと思う。
近代の行きづまり感はますます実感されるが、超克の方向性は見えてこない。

学生時代の全学連では、京大の米田豊昭、榎並公雄氏らと活動を共にしたと思われる。
京大天皇事件や荒神橋事件など、多くの事件が社会を賑わしていた頃だ。
⇒2014年3月26日 (水):幻の党派・都市科学研究所/ブランド・企業論(23)
荒神橋事件で放校処分を受けた横井小楠の研究で知られる松浦玲氏が、桃山学院大学の教授になっているのも関係があるのだろう。

後に地道な実証研究に転じ、自分の出自を見据え、瀬戸内の海の民のあり方をリサーチして「瀬戸内の民俗誌」を著した。
農民研究に傾きがちな民俗学の世界で、それとは別の漂泊民の世界への関心だった。
未読であるが、五木寛之さんとの共著・『辺界の輝き 日本文化の深層をゆく』岩波書店(2002年)などに興味が向かう。

中部学院大学の講演会で、以下のような自己紹介をしている。

Photoご紹介を頂きました、沖浦と申します。沖浦という苗字は、知っている方はあまりいないのではと思いますが、実は瀬戸内海に発生した集団の名前でありまして、沖と浦がついているから―サンズイですから―海の関係ということはすぐ分かると思います。(私の家系は)戦前は大体船乗り、瀬戸内海で村上水軍というのは有名でございますけど、その水軍の一党でありまして、おじいさんの代まで船に乗っておりました。私のおじいさんも、大戦中は大きな輸送船に乗り込んで、アメリカの潜水艦に三回も撃沈されて、三回とも陸に泳ぎ着いて助かったという経歴を持っていますが、私も大きくなったら船乗りになりたかった。

合掌。

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