強行採決に抗議して東工大辞職・鶴見俊輔/追悼(72)
鶴見俊輔さんが亡くなった。
1922(大正11)年、東京生まれ。
15歳で渡米、ハーバード大哲学科を卒業。
大衆研究・思想史研究に独自の領域を開拓。京大・東工大助教授、同志社大教授を歴任。
2004年、故・加藤周一さんらと「九条の会」呼びかけ人となる。
鶴見俊輔さん死去
冒頭の簡単な履歴だけで、リベラルな雰囲気が濃厚に漂ってくる感じがする。
私は「思想の科学」誌の継続的な読者ではなかったが、折に触れ購読した雑誌だった。
戦後の46年、雑誌「思想の科学」を都留(つる)重人、丸山真男らと創刊。米国のプラグマティズム(実用主義)を紹介するとともに、共同研究の成果をまとめた「共同研究 転向」は戦前・戦後の思想の明暗を新しい視角からとらえた。49年、京都大人文科学研究所助教授。54年、東京工業大助教授。
60年5月、岸内閣の新日米安全保障条約強行採決に抗議して東京工大を辞職。翌年、同志社大教授となるが、大学紛争下の70年、辞職した。作家の小田実らと結成した米国のベトナム戦争に反対する「ベ平連」(ベトナムに平和を!市民連合)運動を展開した。
「思想・良心の自由」の信念から、ベトナム戦争からの脱走米兵援助や国外退去処分になった韓国人らを本国送還するまでの期間拘禁した大村収容所の廃止運動、さらに、投獄されていた韓国の反体制詩人・金芝河(キムジハ)氏への支援などに努めた。
鶴見俊輔さん死去 「思想の科学」「ベ平連」93歳
私は姉の社会学者・鶴見和子さんに、脳梗塞の先達として、発症後の生き方について学ぶことが多い。
その他、父は政治家鶴見祐輔、弟の鶴見直輔、妹の夫の法学者・内山尚三、妻の英文学者・翻訳家の横山貞子、息子の鶴見太郎・早稲田大学文学部教授、従弟の人類学者・鶴見良行、母方の叔父には獄中転向で知られる佐野学などまさに多士済々の家系だった。
鶴見さんのような人が一定の影響力を持っている間は、日本は極端な右傾はしないだろうと思っていた。
岸信介の面影を追うかのように、孫の安倍晋三が、昂然と安保法案の強行採決をした時に鶴見さんを失うことになるとは。
どうか安らかな眠りに就いて天国からこの国の行方を見ていてください。
合掌。
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