柳の下に二匹目のB層はいるか?/日本の針路(189)
郵政民営化で国論が割れていたとき、「B層」という概念が使われた。
小泉政権から郵政民営化の宣伝企画の立案を受注した広告会社「スリード」が、国民を以下のようにセグメンテーションしたのである。
「B層」が国を滅ぼす(1)
つまり、B層とは、「具体的なことはよくわからないが小泉純一郎のキャラクターを支持する層」のことで、小泉政権の主な支持基盤として想定された。
郵政民営化が実現したことを考えれば、このターゲティングは成功したと言えるであろう。
しかし、小泉政権がB層を措定したのは、コントロールができる層ということで、見方を変えればずいぶん馬鹿にしているとも考えられる。
安倍首相は小泉氏に学んだに違いない。
集団的自衛権行使の必要性を、パネルを使って説明したのもそういう意識からであろう。
A 紛争地から邦人を救出する米艦の防護
B PKOの駆けつけ敬語
⇒2014年5月18日 (日):安倍首相の憲法解釈論/花づな列島復興のためのメモ(327)
Aのパネルには、パネル中央の米艦船の上にかぶせるような形で、心配そうな顔で、赤ちゃんを抱いている日本人の母親と子供の姿(後方に米国人夫妻の姿)が大きく描かれている。
Bのパネルには、自衛隊PKO派遣要員の絵のヨコに、「日本のNGO」という文字と共に、日本人らしき医師やボランティア活動をする若者の姿が描かれている。
首相は「パネルが命だ」として、自ら母親や子供を大きく描くように、日本人NGOの文字や姿を入れるようになどの指示を行なっていたという。
首相は、難しい憲法論よりも、視覚的にわかりやすいイラストを使って、国民の情に訴えた方がいいと。また、日本人が絡む事例、母親や子供の姿を示せば、国民の共感を得ることができると考えたようで。
「会見の中では、パネルが命だ」「これを見せれば、誰も反論できないだろう」と語り、満を持して、会見に臨んだという。
B層目当て、安倍発案のパネル会見~理論より情動、執念を込めた9条破壊戦略
首相は、この2ケースが決め手と確信していたに違いない。
しかし、2ケース共に赤信号が点いている。
横畠内閣法制局長官が、公海上の米艦が他国の攻撃を受けた場合「日本への武力攻撃と認められれば個別的自衛権で対処できる」と答弁した。
民主党の後藤祐一氏は、「昨年7月の記者会見のパネルは間違いだったのではないか」と、3日の衆院平和安全法制特別委員会で「赤ちゃんを抱いた母親」のイラスト入りパネルを取り上げた。
首相は「パネルに全部書き込んだら(絵が)見えなくなってしまう」「ミスリードでも何でもない」などと反論。そのうえで、攻撃国が▽ミサイル▽工作員を運ぶ潜水艇▽特殊作戦部隊−−などを保有し、「わが国に武力攻撃が行われかねない」と認定でき、新3要件に合致すれば、日本人を輸送中の米艦防護は可能になるとの考えを示した。
安保関連法案:首相が使ったイラストパネルに問題あり?
要は、「攻撃の可能性を否定できなければ、認定する」ということであって、典型的な認識論における錯誤の問題である。
また、ホルムズ海峡の機雷掃海への参加について、谷垣幹事長が主導する維新との「修正協議」で消える可能性が出てきたとの見方がある。
このまま7月中旬に衆院で採決を強行すれば支持率がまた一気に下落して政権が危うくなるので、それを避けるには、せめて維新を採決に参加させなければならないと谷垣氏が維新の修正要求を受け入れようとしているというのだ。
これからどう展開していくか、予断は許さないが、B層とても簡単にはコントロールされないと考えるがどうだろうか。
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