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2015年6月11日 (木)

前言撤回オンパレード政権/日本の針路(178)

まったく安倍政権の閣僚の発言はコロコロ変わる。
しかも大事なキモのところである。
こんな政権に舵取りを任せていいのだろうか、いやいいはずがない。
中谷防衛大臣は、安全保障法制をめぐる国会答弁で「憲法を法案に適応させる」と述べた。
⇒2015年6月 6日 (土):明白な憲法違反を押し通す政権/日本の針路(173)

いくらなんでも、と思っていたら、10日、一転して「趣旨を正確に伝えられなかった」と発言を撤回した。

 中谷大臣は、新たな安保法制が憲法に違反するという指摘が相次いだことに対して、先週の国会審議で「現在の憲法を、いかにこの法案に適応させていけばいいのかという議論を踏まえて閣議決定を行った」と答弁しました。
 安倍内閣が進める法整備のために憲法を都合よく解釈したとも取れる発言で、10日の委員会でも認識を質されました。
 「普通は法案を憲法に適応させるのであって、憲法を法案に適応させる、この発言を撤回した方がいいと思います。本音がぽろっと出たのかなと私は思います。この発言は撤回するということでよろしいですね」(民主党 辻元清美 議員)
 「確かにあの言葉でございますので、違った意味にとらえられる部分もございますので、発言の趣旨を正確に伝えられなかったということで、ただ今、申し上げました趣旨に訂正をさしていただきたいと思います」(中谷 元 防衛相)
防衛相、「憲法を法案に適応」発言を撤回

「安保法制を合憲と考える学者がたくさんいる」と豪語していた菅義偉官房長官。
⇒2015年6月 5日 (金):憲法学者が安保法案にレッドカード/日本の針路(172)
⇒2015年6月 7日 (日):集団的自衛権を合憲とする憲法学者は?/日本の針路(174)

しかし10日の衆院特別委員会では、やはり一転して「数(の問題)ではない」と述べた。
合憲派の学者について菅氏は「10人ほど」とし、事実上前言を撤回した。
菅氏が実名を挙げた学者は、長尾一紘・中央大名誉教授、百地章・日本大教授、西修・駒沢大名誉教授の3人だった。

 10日の特別委では、維新の高井崇志議員も「212人の憲法学者が違憲だと表明し、どんどん増えている。国民の関心事だから(合憲派は)何人いるか」と質問。菅氏の「私が知っている方は10人程度いる」との答弁に、高井氏は「極めて少ない」と突き放した。
 菅氏は終了後の記者会見で、「憲法学者のどの方が多数派で、どの方が少数派かは重要ではない」と述べ、多数の憲法学者の批判は審議に影響しないとの見方を改めて示した。
安保関連法案:「合憲という学者」官房長官たくさん示せず

菅氏が名前を挙げた3人のうち、西氏と百地氏は、2013年に産経新聞が発表した憲法改正草案「国民の憲法」の起草委員である。

産経新聞の「国民の憲法」は、産経自身によるエッセンスが次のようにまとめられている。
Photo
本紙「国民の憲法」要綱を発表 「独立自存の道義国家」

憲法とは何かを私如きが云々しても仕方がないが、フジサンケイ・グループの自信作と言うことなのだろう。
京都の弁護士・渡辺輝人氏のブログから引用する。

フランス人権宣言
第16条(権利の保障と権力分立)
権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない。

国家に対する国民の権利保障が確保され、国民の権利を侵害する国家権力の分立(これによって人権侵害の元凶である国家権力自体を弱体化する)が定められていなければ、憲法という名前を名乗っていても、日本国憲法も含まれるフランス人権宣言以来の「憲法」には含まれない、ということなのだ。

こんな憲法草案の起草者を味方にしていることをよく覚えておこう。
安倍政権の「憲法観」は、フランス人権宣言以前ということだ。
だから、都合良くコロコロ変えればいいと思っているのだろう。
Ws000000
東京新聞6月11日

菅氏の挙げたもう1人の長尾一紘氏については、Wikipediaに次のように載っていた。

長尾 一紘(ながお かずひろ、1942年 - )は、日本の憲法学者。中央大学名誉教授。外国人参政権に関する「部分的許容説」を紹介し、のちにこの説が憲法上認められず、破綻したとして撤回したことで知られる。
・・・・・・
論文発表から20年以上経過し、2009年に民主党政権が誕生して以降、外国人参政権付与が現実味を帯びたことで、長尾はこの動きに危機感を抱き、2009年12月に「部分的許容説は維持できない。違憲である」とした論文をChuou Online上で発表した。 この中で、(1)日本の位置する国際環境の変化、(2)日本人の国家意識の欠如、を学説を変更した理由としてあげており、特に許容説は国政と地方との切り離しが可能であることが前提であるが、近年この分離ができないと現状を分析している。
「現実の要素が法解釈に影響を与える『立法事実の原則』からも、部分的許容説はもはや誤りである」「国家解体に向かう最大限に危険な法律を制定しようというのは、単なる憲法違反では済まない」と再主張、部分的許容説を否定、撤回した。
自身が学説を紹介したことで外国人参政権付与が勢いづいたことに関しては「私の読みが浅かった。慚愧(ざんき)に堪えない」と謝罪した。

閣僚が発言を安易に撤回するのもどうかとは思うが、首相自身が低俗なヤジで謝罪という愚を繰り返しているので、閣僚も倣えということだろう。
首相は外国での演説では、「価値観を共有する」と言っているが、女性の議員に対して「早く質問しろ!」などという実態をしったら、「価値観を共有したくない」という国がほとんどではなかろうか。
⇒2015年5月31日 (日):安倍首相の論理と倫理の欠陥/日本の針路(170)
⇒2015年5月30日 (土):自己を抑制できない自衛隊最高指揮官/日本の針路(169)

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