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2015年6月 5日 (金)

憲法学者が安保法案にレッドカード/日本の針路(172)

よほどひねくれた解釈をしない限り、安保法案は憲法に抵触する。
⇒2015年5月29日 (金):立憲主義の否定は一種のクーデター/日本の針路(168)
それを閣議決定して、強引に国会に上程したのだが、憲法学者から強硬意見が示された。

 この日の憲法審査会は本来、立憲主義や憲法制定過程を巡る議論について、各党推薦の専門家から意見を聴く参考人質疑だった。しかし、野党議員の質問をきっかけに議論は衆院特別委で審議中の安保法案をめぐる議論に集中していった。
 小林節・慶大名誉教授は、今の安保関連法案の本質について「国際法上の戦争に参加することになる以上は戦争法だ」と断じ、平和安全法制と名付けた安倍晋三首相や政府の姿勢を「平和だ、安全だ、レッテル貼りだ、失礼だと言う方が失礼だ」と痛烈に批判した。
 憲法や安全保障についての考え方が異なる3人の参考人だが、そろって問題視したのは、昨夏の閣議決定で認めた集団的自衛権の行使だった。集団的自衛権は「違憲」との見方を示し、憲法改正手続きを無視した形で推し進める安倍政権の手法を批判した。
 長谷部恭男・早大教授は、従来の政府解釈が個別的自衛権のみを認めてきた点を踏まえて「(閣議決定は)どこまで武力行使が許されるのかも不明確で、立憲主義にもとる」と批判した。
 笹田栄司・早大教授は、内閣の判断で憲法解釈を変えることについて、戦前のドイツでナチスの台頭を許した「ワイマール(体制)のことを思う」と言及。専門の違憲審査の問題を踏まえて、憲法解釈については「少しクールに考える場所が必要」などと指摘した。
 教授らは、新たな安保関連法案が、「戦闘現場」以外なら米軍などへの後方支援を拡充する点についても問題点を指摘した。
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憲法学者から思わぬレッドカード 安保法案審議に影響か

当たり前だ。
数を頼りに「勝てば官軍」とばかりに、理屈も人間的な情もないようなやり方が通用してはならない。
原田伊織『明治維新という過ち―日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト』毎日ワンズ(2015年1月)では、諸悪の根源は長州だということのようだが、それは保留しておく。

長谷部教授は、自民、公明両党の与党と次世代の党が推薦した人である。
しかし、集団的自衛権の行使を認めた昨年7月の憲法解釈変更に基づく安保法案について「従来の政府見解の論理の枠内では説明できず、法的安定性を揺るがす」と批判した。
与党が推薦する参考人が、政府提出法案に異論を唱えるのはもちろん、違憲と明言するのだから、いかに異常かが分かる。
笹田教授は維新の党推薦であるが、これまでの安保法制が合憲性を保つ限界だったとして「今回は踏み越えてしまい、やはり違憲だという考えだ」と述べた。
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「安保法案9条違反」憲法審参考人が見解 「違憲立法」論戦焦点

しかし菅官房長官は次のようにコメントした。

 菅義偉官房長官は4日の会見で、同日開かれた衆院憲法審査会の参考人質疑で、3人の参考人全員が審議中の安全保障関連法案について「憲法違反」としたことに関し、「法的安定性や論理的整合性は確保されている。全く違憲との指摘はあたらない」と述べた。
 菅氏は、昨年7月に閣議決定した安保関連法案の基本方針に触れ「憲法前文、憲法第13条の趣旨をふまえれば、自国の平和を維持し、その存立を全うするために必要な自衛措置を禁じられていない」と指摘。「そのための必要最小限の武力の行使は許容されるという、以前の政府見解の基本的な論理の枠内で合理的に導き出すことができる」と話した。
 自民党などが参考人として推薦した早稲田大の長谷部恭男教授が憲法違反だと指摘した点に関しては「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と述べ、今後の法案審議への影響は限定的との見方を示した。
違憲指摘「全く当たらない」 菅氏、衆院憲法審査会参考人質疑に反論

おそるべき傲慢さではなかろうか。
憲法13条の条文を示そう。
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憲法13条

「個人の尊重」の条文を引き合いに出して、戦争法案を推進するという無神経。
こんな政権をやりたい放題にさせてはならない。

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