「憲法解釈固執は責任の放棄」なのか?/日本の針路(182)
これほど憲法が軽んじられた政権もあるまい。
中谷防衛大臣が、「現在の憲法をいかにこの(安保)法案に適用させていけばいいのか」という答弁を行い、後に撤回をした。
⇒2015年6月 6日 (土):明白な憲法違反を押し通す政権/日本の針路(173)
⇒2015年6月11日 (木):前言撤回オンパレード政権/日本の針路(178)
安倍首相は、国会答弁で自民党の小野寺前防衛大臣との質疑で次のように発言した。
自民党・小野寺元防衛大臣:「国民の命を守るため、限定的な集団的自衛権を行使することにした総理のお考えを伺いたい」
安倍総理大臣:「国際情勢にも目をつぶって、その(国民を守る)責任を放棄して従来の(憲法)解釈に固執をするのは、まさに政治家としての責任の放棄だ」
安倍総理「憲法解釈固執は責任の放棄」に国会紛糾
身内の討議とも言えないようなやりとりではあるが、言うまでもなく、憲法は国の最高法規である。
解釈にこだわることこそ、政治家の第一の責務ではないのか。
安保法案違憲論が噴出しているが、もちろん、憲法解釈を硬直的に考えろ、ということではない。
一内閣の恣意的な解釈で、積年の解釈を変更することは、上記条文に照らしてみても著しく法的秩序の安定性を損なうことになるということを言っているわけである。
安保法案を提出するならば、合憲であるように法案を変えて再提出するか、憲法改正を発議するかでないと、なし崩しに憲法を無化することになる。
それこそが、麻生副首相の言ったように、ワイマール憲法を有名無実化した「ナチスの手口に学ぶ」ことになる。
憲法解釈の変更を安易に考えることは、立憲主義の否定である。
そこまでの覚悟をもって、安保法案を審議しているのか?
安保法案違憲論は、憲法学者の机上の空論ではないのだ。
法曹の一角である弁護士会もこぞって違憲の認識である。
日弁連(会員・約三万六千人)は十八日の理事会で、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を中心とした安全保障関連法案は「違憲」だとして、法制定に反対する意見書を取りまとめた。全国五十二の弁護士会の会長を含む役員八十五人の全会一致だった。意見書は十九日に安倍晋三首相や衆参両院議長らに郵送し、各弁護士会が地元選出国会議員らに要請活動を行う。
意見書は、日本に対する武力攻撃がなくても、政府が「存立危機事態」と判断すれば、集団的自衛権に基づいて他国とともに武力を行使しようとする点を問題視。政府が「重要影響事態」や「国際平和共同対処事態」と判断したときに、武力の行使を行う外国軍隊への支援活動を戦闘行為の現場以外の場所で行えるようにすることは、海外での武力の行使に至る危険性が高いことも指摘。国際平和協力業務の安全確保業務や駆け付け警護、在外邦人の救出活動で「自己保存のための武器使用」という限定を外し「任務遂行のための武器使用」を可能にすることは、海外での武力行使に至る危険性が高いことも批判した。
安保法案は「違憲」 日弁連、全会一致で意見書
笑えるのは(笑っている場合ではないが)、船田元・衆院憲法審査会筆頭幹事の「反省の弁」である。
自民党の船田元・衆院憲法審査会筆頭幹事は18日、長谷部恭男・早大教授を4日の審査会に参考人招致したことについて「安心して選んでしまった。正直、我々のミスだ。最初に人選した方が都合が悪く、二番手になって急きょ決めざるを得なかった」と述べ、長谷部氏の招致は失敗だったとの認識を示した。BS日テレの番組で発言した。
長谷部氏は自民党の推薦で審査会に出席。新たな安全保障関連法案を「憲法違反」と指摘し、大きな波紋を呼んだ。船田氏は長谷部氏の発言は想定外の「アクシデント」だったとし、今後当面は審査会を開かない考えを示した。
長谷部氏の参考人招致は「我々のミス」 自民・船田氏
中谷氏も船田氏も、、自分のミスがどこにあったのかを理解していない。
人選のミスではなく、憲法解釈のミスなのだ。
と言うよりも、中谷氏や船田氏を起用したキャスティングのミスだろうなあ。
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