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2015年6月 9日 (火)

憲法審査会への対応で、反知性主義が露呈した/日本の針路(176)

自らが推薦した憲法学者から「集団的自衛権は違憲」と指摘された自民党は、まさにオウンゴールだった。
⇒2015年6月 5日 (金):憲法学者が安保法案にレッドカード/日本の針路(172)

自公両党は挽回に必死であるが、その姿から両党の本質が浮かび上がってくる。
公明党は結党以来「平和の党」を自称してきたはずであるが、戦争法案に荷担することで存在理由を失った。
自民党は、自ら招いた参考人が、自分たちと違う意見を表明したので、憲法審査会の権威を低く見せようと躍起である。

中谷防衛大臣は、「憲法を法案に合わせようと苦労した」と本末転倒の答弁をしていたが、素直な人なんだろうと思う。
中谷大臣は、憲法98条をどう理解しているのか?

第10章 最高法規
第98条 【最高法規、条約及び国際法規の遵守】
 第1項 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、 詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。            
 第2項 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

菅官房長官は、「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と述べたが、その憲法学者になぜ参考人依頼をしなかったかの説明はない。
⇒2015年6月 7日 (日):集団的自衛権を合憲とする憲法学者は?/日本の針路(174)

高村正彦副総裁は、五日午前の役員連絡会で「憲法学者はどうしても(戦力不保持を定めた)憲法九条二項の字面に拘泥する」と反発した。
 谷垣禎一幹事長も記者会見で「憲法学者には自衛隊の存在は違憲と言う人が多い。われわれとは基本的な立論が異なる」と反論した。
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は午前の記者会見で「(憲法解釈を変更した)昨年七月の閣議決定は、有識者に検討いただき与党で協議を経て行った」と指摘。その上で「現在の解釈は、従来の政府見解の枠内で合理的に導き出すことができる。違憲との指摘はあたらない」と重ねて強調した。
「学者は9条字面に拘泥」 高村氏、参考人に反発

高村氏は法案に関する与党協議の座長を務めたが、憲法こそ厳格に字面に拘るべきだろう。
谷垣氏は「「憲法学者には自衛隊の存在は違憲と言う人が多い」と言うが、自衛隊発足当時はそうであったであろうが、現時点で「多い」というのはどうか?

まあ、強者(権力側)が後からいろいろ言うのは見苦しい感じである。
そもそも「憲法審査会」とは如何なるものか?

2007年の国民投票法の成立を受けて、新たに衆参両院に設置された機関。 両院にはこれまで、憲法一般について「広範かつ総合的な調査」を行う「憲法調査会」、次いで国民投票法を議論する「憲法調査特別委員会」が設けられてきた。 憲法審査会はこの2つを引き継ぐ機関であり、初めて「憲法改正原案、憲法改正の発議」を審議できると規定された、憲法改正を具体的に進めていく場と位置づけられる。 ただ、公布後3年間は改憲原案の国会への提出、審議は凍結されるため、その間は「投票権18歳以上」に関連する法整備や「公務員の政治的行為の制限」の基準づくりなどを議論することになっている。 さらに、国民投票法採決の際の「与党強行」に民主党などが反発したことに加え、07年9月の安倍首相退陣で政界の改憲機運が急速にしぼんでしまったことから、審査会は実質的なスタートを切ることができないままになっている。(根本清樹 朝日新聞記者 / 2008年)
知恵蔵2015の解説

「憲法改正を具体的に進めていく場と位置づけられる」機関によって、安保法案が違憲とされたわけで、いかに真面目に検討してこなかったが明らかになったわけである。
稲田政調会長は、最高裁の専決事項というが、最高裁が判断するのは、法律ができて具体的にその法律に触れることが争われる場合であって、それを言うのは論理的ではない。
⇒2015年6月 6日 (土):明白な憲法違反を押し通す政権/日本の針路(173)

火消しに躍起の自民党であるが、世論の潮目も変わったのではないか。

 谷垣幹事長が登壇するとシュプレヒコールはさらに大きくなった。筆者は話を聞き取るために街宣車に一番近い場所まで移動した。
 「日本国憲法の守護者は最高裁なんです。最高裁は自衛隊は違憲ではないと言ってるんです」。
 党をあずかる谷垣幹事長は火消しに懸命だ。幹事長は砂川判決を引用し「集団的自衛権は違憲ではない」ことをアピールしようとした。
 砂川判決(1959年)は「集団的自衛権は違憲である」とする趣旨の東京地裁の判決を、田中耕太郎最高裁長官が米大使館から圧力をかけられてひっくり返し「合憲」としたのである。
 谷垣幹事長の「砂川判決」引用は、袋小路に入った自民党の姿を象徴していた。
Photo
在特扱い 戦争法制で自民に「帰れコール」

憲法学者が自分たちの言うことを聞かないといって不満をぶち上げる自民党幹部の姿は、まさに「ヤンキー(、「周囲を威嚇するような強そうな格好をして、仲間から一目おかれたい」という志向を持つ少年少女を指す俗語)=反知性主義」を体現している。

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