« 憲法審査会への対応で、反知性主義が露呈した/日本の針路(176) | トップページ | 前言撤回オンパレード政権/日本の針路(178) »

2015年6月10日 (水)

安保法案で墓穴の深掘りに励む政府・与党/日本の針路(177)

政府は9日、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案について、「これまでの憲法解釈との論理的整合性および法的安定性は保たれている」とする見解を文書で提示した。
憲法審査会での憲法学者の違憲論に対する抗弁である。
見解は1959年の砂川事件最高裁を援用するものであるが、砂川事件判決は集団的自衛権に触れたものではなく、墓穴を深くしているだけだろう。

砂川事件判決について振り返ってみよう。以下Wikipediaによる。

第一審(判決)
東京地方裁判所(裁判長判事・伊達秋雄)は、1959年3月30日、「日本政府がアメリカ軍の駐留を許容したのは、指揮権の有無、出動義務の有無に関わらず、日本国憲法第9条2項前段によって禁止される戦力の保持にあたり、違憲である。したがって、刑事特別法の罰則は日本国憲法第31条(デュー・プロセス・オブ・ロー規定)に違反する不合理なものである」と判定し、全員無罪の判決を下した(東京地判昭和34.3.30 下級裁判所刑事裁判例集1・3・776)ことで注目された(伊達判決)。これに対し、検察側は直ちに最高裁判所へ跳躍上告している。
最高裁判所判決
最高裁判所(大法廷、裁判長・田中耕太郎長官)は、同年12月16日、「憲法第9条は日本が主権国として持つ固有の自衛権を否定しておらず、同条が禁止する戦力とは日本国が指揮・管理できる戦力のことであるから、外国の軍隊は戦力にあたらない。したがって、アメリカ軍の駐留は憲法及び前文の趣旨に反しない。他方で、日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」(統治行為論採用)として原判決を破棄し地裁に差し戻した(最高裁大法廷判決昭和34.12.16 最高裁判所刑事判例集13・13・3225)。

見解のキモは、以下のように書かれている。

国際法上集団的自衛権の行使として認められる他国を防衛するための武力の行使それ自体を認めるものではなく、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部、限定された場合において他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどめるものである。したがって、これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性及び法的安定性は保たれている。
「安保法案に関する政府見解」と「自民党議員向け文書」全文

これまで政府が説明してきたものである。
これに対して、憲法審査会で違憲という意見が表明されたのであるから、言ってみれば答えになっていない。

 見解は安保法制を「(昨年7月の)閣議決定の考え方に立ったもの」と強調している。ただ、長谷部氏は「(集団的自衛権は)自衛よりむしろ他衛で、そこまで憲法が認めているという議論を支えるのは難しい」と閣議決定そのものの論理矛盾を指摘しており、議論はかみ合っていない。
Vs
集団的自衛権:政府「行使は限定的」…違憲指摘に反論

冷静になって考えれば、「限定的」だから許されるという論理はいかにも苦しい。
限定的な武力行使が限定の範囲に留まることは非常に難しいだろう。
やはり集団的自衛権の行使は、憲法に抵触するだろう。
所属議員向けの文書には、次のように記されている。

 かつてほとんどの憲法学者は自衛隊が違憲だといっていました。今でもそういっている憲法学者もいます。憲法9条の2項に「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」と書いてあるから、憲法違反だというのです。しかし、私たちの先輩は日本が侵略されたとき『座して死を待て』と憲法が決めているはずはないと言って自衛隊の創設を決断しました。その自衛隊のおかげで日本の平和と安全は守られてきたのです。
 みなさん、そもそも憲法判断の最高の権威は最高裁です。最高裁だけが最終的に憲法解釈ができると、憲法81条に書いてあるのです。その最高裁が唯一憲法9条の解釈をしたのが砂川判決です。そのなかで、日本が主権国家である以上、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために自衛権の行使ができるとしたのです。最高裁のいう自衛権に個別的自衛権か集団的自衛権かの区別はありません。複雑化する世界情勢のなかで、他国が攻撃された場合でも日本の存立を根底から覆すような場合があります。そのような場合、集団的自衛権を行使することはなんら憲法に反するものではないのです。
「安保法案に関する政府見解」と「自民党議員向け文書」全文

恐るべき詭弁・論点のすり替えである。
問題は自衛隊が違憲かどうかではない。
また、自衛権の行使が問われているのでもない。
集団的自衛権という「他衛のための武力行使」が問われているのである。
砂川判決にすがるのは、憲法違反を自覚しているからと思われても仕方がないであろう。

|

« 憲法審査会への対応で、反知性主義が露呈した/日本の針路(176) | トップページ | 前言撤回オンパレード政権/日本の針路(178) »

ニュース」カテゴリの記事

思考技術」カテゴリの記事

日本の針路」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/395349/60323594

この記事へのトラックバック一覧です: 安保法案で墓穴の深掘りに励む政府・与党/日本の針路(177):

« 憲法審査会への対応で、反知性主義が露呈した/日本の針路(176) | トップページ | 前言撤回オンパレード政権/日本の針路(178) »