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2015年6月 4日 (木)

エルデシュとモンティ・ホール問題と『博士の愛した数式』/知的生産の方法(122)

モンティ・ホール問題には多くの逸話がある。
その1つに、「放浪の天才数学者」と言われたエルデシュに関するものがある。

エルデシュについては、Wikipediaに次のように解説されている。

Erdos_budapest_fall_1992_cropped_2ポール・エルデシュ
1913年3月26日 - 1996年9月20日)はハンガリーのブダペスト出身の数学者。生涯に約1500篇もの論文(多くは共著)を発表しており、これ以上に多数の論文を発表した数学者は18世紀最高の数学者と呼ばれているレオンハルト・オイラーのみである。プリンストン大学、ノートルダム大学などで教職に就いた。
数論、組合せ論、グラフ理論をはじめ、集合論、確率論、級数論など幅広い分野で膨大な結果を残した。グラフ理論・数論などにおける確率論的方法、組合せ論の種々のテクニックは著しく、特にセルバーグと共に素数定理の初等的な証明を発見したことは有名である。彼の数学は、次々に問題を考えてはそれを解くという独特のスタイルであったが、彼が発する散発的な問題が実際には理論的に重要なものであったり、あるいは新しい理論の発展に非常に重要な貢献をした例も少なくない。

天才数学者であるが相当に奇人でもあった。
次の伝記が和訳されている。

『放浪の天才数学者エルデシュ』草思社文庫(2011年10月)

Photo_2出版社からのコメント
『博士の愛した数式』のエキセントリックな博士のモデルにもなったエルデシュの評伝。 数学に没頭するあまりに日常生活に必要なことがほとんど出来なかったほどの奇人で生涯に渡ってお湯を沸かしたことがおそらく一度もないだろうと言われています。
内容(「BOOK」データベースより)
鞄一つで世界中を放浪しながら1日19時間、数学の問題に没頭した天才数学者エルデシュ。83歳で死ぬまでに発表した論文は1500、有史以来どんな数学者よりもたくさんの問題を解き、しかもどれもが重要なものであったという。アインシュタインを感服させ、奇才ゲーデルを励ました数学界の伝説的人物エルデシュは、子供とコーヒーと、何よりも数学を愛した。やさしさと機知に富んだ天才のたぐいまれな生涯をたどる。

なんと『博士の愛した数式』の博士のモデルというではないか。
⇒2014年2月 4日 (火):小川洋子『博士の愛した数式』/私撰アンソロジー(31)
このような天才がモンティ・ホール問題に手こずったらしい。
次ような挿話が残されている。

答えに納得行かなかったエルデシュは数学仲間に相談。話し合うが納得行かない。
そこで大嫌いなコンピューターで数百回に及ぶシュミレーションを実行。
2:1でドアを変えた方がいいという結果を見たがまだ理由が分からなかった。
「この問題のポイントは、司会者が必ずはずれのドアを開けることだ」という説明でようやく納得。
http://plaza.rakuten.co.jp/kubire/diary/200508230000/

これを読んで、少しホッとした。
このような大数学者でも勘違いをするのだから、われわれ凡人が間違えるのも当然といえば当然である。

モンティ・ホール問題に関しては、「極論を考えてみる」という方法が有効なようである。
例えばドアの数を10000で考えてみよう。
最初の各ドアの当たる確率は1/10000である。
プレイヤーが1枚のドアを選び、司会者は別の9999枚からハズレのドアを9998枚開く。

開いていないドアが2枚残る。
最初に選んだままにするか、変えるか、と問われればどうだろう。
まず、ドアを変えるという選択をするに違いない。
問題の性格は同じことであるが、3枚のドアの場合は錯覚に陥るわけである。

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コメント

モンティ・ホール問題もそうですが、一般的に直感による回答と数学的回答の差異が発生する問題は、哲学的な寓話として取り上げられる事が多いように思います。

例えば、A地点とB地点の往復を考える場合、往路を平均時速40Kmで行ったとして、復路をどのくらいの速度にすれば全体の平均が時速50Kmになるか、という問題。直感的には60Km/hと答えたくなりますが、AB間の距離をdととってキチンと計算すると、答えは66.6666Km/hになります。

前半ダラダラしていても、後半で巻き返せば良いや、という考えは、実は数学的に考えれば、直感で考えたよりも取り戻すのが大変という証明にもなり得る訳で、まさに哲学的な示唆に富んでいたのでありました~。

投稿: Yas | 2015年6月 5日 (金) 14時47分

Yas様

私の弱点をご存知のコメントです。
折り返し点を過ぎないとモチベーションが湧いてこないという性癖で、いつも最初から計画通り進めていく友人を羨んでいました。
計算上の問題もありますが、夏休みの宿題を間際にならないとやらないのは、時間の割引率の例として読んだ記憶があります。いずれにしろ、なかなか言い訳が通用しないようで・・・・・・

投稿: 夢幻亭 | 2015年6月 5日 (金) 15時41分

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